障害者差別解消法とは?制定の目的や対象、支援体制などについて

障害者差別解消法とは?制定の目的や対象、支援体制などについて

Bu facebook
Bu twitter

障害者差別解消法とは?

障害者差別解消法とは?制定の目的や対象、支援体制などについての画像

出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=11044031980

2016年4月1日より、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下、障害者差別解消法)」が施行されました。この法律は、障害による差別を解消し、誰もが分け隔てなく共生する社会を実現することを目的として制定されました。

注目すべきポイントは、ここで言う「障害者」が、障害者手帳を持つ人のみに限られないという点です。障害者差別解消法では「障害者」を次のように定義しています。

障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/pdf/law_h25-65.pdf

ポイントとなるのは“障害及び社会的障壁”という文言です。個人の心身の機能障害だけでなく、社会の制度や環境が障壁となって、その人の生活に障害をもたらしているとする、障害の「社会モデル」という考え方を反映しています。

ここでいう「社会的障壁」とは、「手話のついていないテレビ」や「点字ブロックのない道」などの物理的な障壁のみではありません。見えづらい障害に対する理解不足や、それに伴う対応不足なども人が社会で感じる「障壁」になりうるのです。

そんな誰しもが持ち得る「障壁」に対して社会全体が「気づく心」を持ち、柔軟に対応していくことを求める法律、それが障害者差別解消法なのです。

障害者差別解消法が制定されるまで

障害者差別解消法とは?制定の目的や対象、支援体制などについての画像

出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=11044033445

障害者差別解消法が成立した背景には、2006年12月に国連総会本会議で採択された「障害者の権利に関する条約」(通称、「障害者権利条約」)の存在があります。この障害者権利条約は、障害者に対する差別禁止や障害者の尊厳と権利を保障することを定めた条約で、日本政府は翌年2007年9月に署名しました。

日本はその障害者権利条約を国内でも批准することを目指し、2009年12月から国内法の整備を進めていきました。そして2013年に「障害者差別解消法」を制定したことで、翌年2014年に「障害者の権利に関する条約」の批准がなされたのです。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html

障害者の権利に関する条約|外務省

http://www.dpi-japan.org/problem/jyouyaku.html

障害者の権利条約|特定非営利活動法人(認定NPO法人)DPI(障害者インターナショナル)日本会議

http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/appContents/wamnet_skaisyou.html

「障害者差別解消法」制定までの経緯と概要について|独立行政法人 福祉医療機構

障害者差別解消法における「差別」の2つの意味

障害者差別解消法とは?制定の目的や対象、支援体制などについての画像

出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10132006946

障害者差別解消法に書かれている「差別」には、2つの意味が含まれています。1つ目は「不当な差別的取扱い」という意味での「差別」、2つ目は、合理的配慮が行われていないという意味、すなわち「合理的配慮の不提供」という「差別」です。それぞれについて詳しくご説明します。

「不当な差別的取扱い」とは、役所(国・都道府県・市区町村)や企業が、障害者に対して正当な理由がないにもかかわらず差別をすることです。障害を理由としてサービスの提供を拒否したり、障害のない人とは違う扱いをしたりすることが、この「不当な差別的取り扱い」の中に含まれます。具体的には以下のような例が挙げられます。

・お店に入ろうとしたら、車いすを利用していることが理由で入店を断られた。
・アパートの契約をするとき、障害があることを理由にアパートを貸してくれなかった。
・スポーツクラブや習い事の教室などで、障害があることを理由に入会を断られた。

http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/pdf/sabekai_wakariyasui_p.pdf

リーフレット「障害者差別解消法が制定されました(わかりやすい版)」|内閣府

2つ目は、合理的配慮を行わない、という差別です。「合理的配慮」とは、一人ひとりの特徴や場面に応じて発生する障害・困難さを取り除くために行う、個別の調整や変更のことを指します。障害のある人が障害を理由として差別されることがなく、障害のない人と同じように社会生活を送れることを目的としています。

たとえば、合理的配慮には次のような例があります。
・文字の読み書きが困難な方が、タブレットや音声読み上げソフトで学習できるようにする
・肢体不自由の方が自力で移動できない場所にスロープなどを追加で設置する
・複数の指示理解が難しい方に、指示を1つずつ分けて伝えたり、イラストを交えて説明したりする
・疲労や緊張が大きい方のために、休憩スペースを設けたり、業務時間等を調整する

障害者差別解消法とは?制定の目的や対象、支援体制などについての画像

Upload By 発達障害のキホン

障害者差別解消法においては、障害のある人への合理的配慮の提供を行政や事業者に対して求めています。

ただし、ある人に配慮を行うことで、他の人たちの生活や活動が困難になるほどの影響が生じたり、あまりにも大きな負担を伴う場合は、「合理的」ではないとして、行政機関・事業者はその配慮を断ることができます。その配慮が「過度な負担」かどうかは、以下の観点を考慮しながら、行政機関や事業者が、個別の場合に応じて判断すべきとされています。

・事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)
・実現可能性の程度
・費用・負担(必要性・負担を参考に判断)
・事業規模
・財務状況

ただし、負担が大きく合理的配慮が難しいと判断した場合でも、事業者は障害者に理由を説明し、理解を得られるよう努めるよう決められています。

「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮」におけるポイント

障害者差別解消法とは?制定の目的や対象、支援体制などについての画像

出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10161013695

上記の「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮」に関する取り決めは、国や地域の役所などの行政機関と、お店や会社などの民間事業所とで少し異なります。

障害者に対して差別的な対応をするという「不当な差別的取扱い」については、行政機関も民間事業所も、「行ってはいけない」という法的義務が課されている点で一致しています。

一方、一人ひとりのニーズに対して適切な配慮を行う「合理的配慮の提供」については、行政機関は「しなければならない」(法的義務)のに対し、民間事業所は「実施するように努める」(努力義務)という違いがあります

また、民間事業者についての補足として、たとえばお店のお客さんなどの、サービス利用者に対しての合理的配慮は努力義務であるが、みずからが雇用した労働者に対しての合理的配慮は法的義務となることが、厚生労働省の指針にて定められています。

障害者差別解消法とは?制定の目的や対象、支援体制などについての画像

Upload By 発達障害のキホン

http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/law_h25-65_ref2.html

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律Q&A集<地方公共団体向け> |内閣府

どのように「差別」を「解消」するの?

障害者差別解消法とは?制定の目的や対象、支援体制などについての画像

出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=11032004062

障害を解消させるためにどんなに理想的な法律を定めても、その法律が実際に活用されなければ意味がありません。障害者差別解消法では、各分野においてしっかりと法が浸透していくよう、「対応要領」と「対応指針」というものを策定することが定められています。

障害者差別解消法とは?制定の目的や対象、支援体制などについての画像

Upload By 発達障害のキホン

国や都道府県、役所の人々がこの障害者差別解消法に基づいて適切な対応ができるよう、自らの職員に向けて作ったものを「対応要領」といいます。これは、障害のある方からの意見を取り入れながら、不当な差別的取扱いや合理的配慮についての基本的な考え方や具体例を定めたものです。

http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/taioyoryo.html

関係府省庁における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領|内閣府

対応要領が役所の人に対しての取り決めであるのに対して、対応指針は会社やお店などの事業者に向けられたものです。事業者を所管する国の役所によって定められています。こちらも障害のある人の意見を取り入れながら、不当な差別的取扱いや合理的配慮について詳しく書かれています。

各事業者はこの対応指針を参考に、自らで差別解消への取り組みを進めていくよう求められます。法律に反することを何度も行う、もしくは自主的に改善する様子が見受けられない場合には国に報告を求めたり注意したりすることがあります。

対応指針をもう少しわかりやすく説明するため、今回は教育、交通機関に注目し、具体的な内容について紹介します。
   
教育
文部科学省は主に私立学校を対象に、対応指針を取りまとめました。公立学校は合理的配慮の提供が法的義務として定められていますが、私立学校においても不当な差別的取扱いを禁止し、合理的配慮に努めることが具体的な例とともに示されています。

■不当な差別的取扱い
・受験や入学、その他の学校生活において参加を拒んだり、拒まない代わりの条件を、正当な理由なく付けてはならない。
・試験などにおいて合理的配慮の提供を受けた場合に、それを理由として本人を評価の対象から外したり、差を付けたりしてはならない。

■合理的配慮
・施設や施設内において、車いす利用者のためにキャスター上げなどの補助をしたり、段差に携帯スロープを渡したりして配慮を行う。
・疲れやすい障害者から休憩の申し出があったときは、別室の確保などで対応を行う。それが困難である場合は、本人に説明をした上で臨時の休憩スペースを設けるように努める。

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1364725.htm

文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針について(通知) |文部科学省

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2015/11/24/1364727_01.pdf

文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の 解消の推進に関する対応指針 |内閣府

不動産・交通機関
国土交通省は、国土交通に関する分野を不動産・設計・鉄道・バス・タクシー・海外航路・国内航路・航空・旅行業の9つの分野に分けて取りまとめました。ここでは主に不動産や一般的な移動手段に関する具体例をご紹介します。

■不当な差別的取扱い
・ 物件広告に「障害者お断り」として入居者募集を行ってはならない (不動産)
・ 障害があるということで、乗車を拒否してはならない(鉄道、バスなど)
・ 身体障害者補助犬法に基づく盲導犬、聴導犬、介助犬を同伴しているということを理由に車を拒否してはならない(鉄道、バスなど)

■合理的配慮
・ 障害者の求めに応じて、バリアフリー物件等、障害者が不便と感じている部分に対応している物件があるかどうかを確認するよう努める(不動産)
・ コミュニケーションボードや筆談により対応を行って対応する(鉄道、バスなど)

http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/pdf/taioshishin_mlit.pdf

国土交通省所管事業における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針|国土交通省

差別を解消するための仕組み

障害者差別解消法とは?制定の目的や対象、支援体制などについての画像

出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=11044033571

差別を確実になくしていくためには、差別が起こらないように対策する仕組みや、何か問題が起きたときに相談を受けたり解決したりする仕組みが必要です。

障害者差別解消法では、障害者差別に対応する機関を新たに設置することは定められていません。その代わりに今すでに存在する行政の相談機関などを充実させ、活用することが求められています。

さらに地方公共団体は、条例を策定して障害のある方が実際に相談したり、紛争を防止・解決したりするような体制を整えることも期待されています。

また、障害による差別で悩む方が、複数の機関の間でたらいまわしにされることがないよう、国や地方公共団体は「障害者差別解消支援地域協議会」を設置することができます。この協議会は障害に関する差別が起きたときに解決のための支援を行う組織であり、現在もさまざまな地域で組織作りが進んでいます。

差別的な扱いや合理的配慮の不提供が見られても、それをした人や事業者がただちに罰則を受けるということはありません。

ただし、差別が繰り返し行われる場合や、自主的な改善ができないと思われる場合には、その事業者が行う事業を担当している大臣が、事業者に対して報告を求めたり、助言や指導、勧告をしたりできます。

なお、求めた報告に対して報告を怠ったり、虚偽の報告をしたりした場合は、20万円以下の罰則が科せられる場合もあります。

http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/law_h25-65.html

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十五号)|内閣府

http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/law_h25-65_qa_kokumin.html

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律についてのよくあるご質問と回答<国民向け>|内閣府

差別のない社会へ・・・

障害者差別解消法とは?制定の目的や対象、支援体制などについての画像

出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10272002074

障害者差別解消法とは、障害がある人の不当な取扱いを禁止し、個々のニーズに合った合理的配慮の提供を求めることによって障害による差別を解消しようとする法律です。

教育の分野においては、近年考え方が広まってきたインクルーシブ教育を後押しするような効果も持っており、子ども一人ひとりが「障壁」を感じることなく生きていくために重要な動きとなったと言えるでしょう。

この障害者差別解消法が、あらゆる人にとってお互いの違いを認め合い、共に生きていく社会の第一歩となることを願います。

http://www.dpi-japan.org/problem/jyouyaku.html

障害者の権利条約|特定非営利活動法人(認定NPO法人)DPI日本会議

http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/pdf/sabekai/leaflet-p.pdf

リーフレット「障害者差別解消法がスタートします」|内閣府

http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sabetsu_kaisho/

厚生労働省における障害を理由とする差別の解消の推進|厚生労働省

http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/kihonhoushin/honbun.html

障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針|内閣府

http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/appContents/wamnet_skaisyou.html

「障害者差別解消法」制定までの経緯と概要について|独立行政法人福祉医療機構

http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html

障害を理由とする差別の解消の推進|内閣府

http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kihonkeikaku25.html

障害者基本計画|内閣府

http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/pdf/law_h25-65.pdf

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 (平成 25 年法律第 65 号)

http://www.normanet.ne.jp/~jdf/pdf/sabetsukaisyohou2.pdf

障害者差別解消法ってなに?|日本障害フォーラム

https://www.amazon.co.jp/dp/4759261222

DPI日本会議/編『合理的配慮、差別的取扱いとは何か ―障害者差別解消法・雇用促進法の使い方― 』2016年解放出版/刊

元のサイトを見る

関連する記事

この記事のキーワード

RANKING
YESTERDAY

WHAT'S CHIENOWA?

CHIENOWA'S ORIGINAL
STAFF PICK UP