家族の「幸せ」は自分でつくれる。幸福学の研究者夫妻に学ぶ「信じる」子育て

家族の「幸せ」は自分でつくれる。幸福学の研究者夫妻に学ぶ「信じる」子育て

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「今ここ」に集中することで、生産性やクリエイティビティーを高める「マインドフルネス」。「一般社団法人 マインドフルリーダーシップインスティテュート」代表理事の荻野淳也さんとともにワーキングペアレンツに有効なマインドフルネスの方法を考える連載の第2回目は、統計学に基づき「幸福学」について研究している前野隆司さんと、奥さまのマドカさんをお招きしました。夫婦や家族が幸せになるためのヒントについて、「幸福学」と「マインドフルネス」の2つの視点から語っていただきました。

取材・文:片貝久美子 撮影:豊島望
プロフィール

荻野淳也(おぎの じゅんや)
一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート代表理事。株式会社ライフスタイルプロデュース代表。リーダーシップ開発、組織開発の分野で、上場企業からベンチャー企業までを対象に、コンサルティング、エグゼクティブコーチングに従事。外資系コンサルティング会社、複数のベンチャー企業でのIPO担当や取締役を経て、現職。「企業課題の多くは、リーダーの在り方に起因しており、リーダーが本質的な変容を遂げれば、組織全体が自ずと改善、問題解決に向かう」が持論。マインドフルリーダーシップの概念をいち早く日本に紹介し、Google社で生まれた能力開発メソッドSearch Inside Yourselfのパブリックプログラムを日本初開催する。マインドフルネス、脳科学、ストーリーテリングなどの概念、手法を取り入れ、組織・リーダーの成長、変容を支援し、企業全体の変革を図っている。5月17 日には監訳を務めた日本語版の『サーチ・インサイド・ユアセルフ』(英治出版)を出版。2016年10月にもSearch Inside Yourselfのパブリックプログラムを開催予定。5歳女児の父。

一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート
http://mindful-leadership.jp/
株式会社ライフスタイルプロデュース
http://lifestyle-pro.jp/


前野隆司(まえの たかし)
1962年生まれ。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授。2011年より同研究科委員長兼任。研究領域は、ヒューマンロボットインタラクション、ハプティックインタフェース、認知心理学・脳科学、心の哲学・倫理学から、地域活性化、イノベーション教育学、創造学、幸福学まで。著書に、『脳はなぜ「心」を作ったのか』(筑摩書房)、『錯覚する脳』(筑摩書房)、『思考脳力の作り方』(角川書店)など。近著に『幸せのメカニズムー実践・幸福学入門』『「死ぬのが怖い」とはどういうことか』(いずれも講談社)、『無意識の整え方』(ワニブックス)がある。共著も多数。

慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科
http://www.sdm.keio.ac.jp/faculty/maeno_t.html
Takashi Maeno's blog
http://takashimaeno.blog.fc2.com/


前野マドカ(まえの まどか)
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員。EVOL株式会社代表取締役CEO。日本ポジティブ心理学協会会員。丸紅エネルギー、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)を経て現職。幸せを広めるワークショップ、コンサルティング、コーチング、研修活動及びフレームワーク研究・事業展開を行なっている。夫は慶應義塾大学教授の前野隆司。義母、夫、大学生の息子、高校生の娘と5人暮らし。「幸せな姑と嫁の関係」「幸せな夫婦」「幸せな家族」「幸せな仕事と家庭の両立」を実践しながら研究中。
現代は心理学・脳科学が発展しているので、「こうすれば幸せになれるよ」ということがわかってきたんです。(前野)
―前野さんは、学術的視点から「幸福とは何か?」ということを研究されています。まず、「マインドフルネス」と「幸福」にはどのような相互関係があるのでしょう?

荻野:僕の考えだと、幸せというのは結局「気づく」ものであり、「選択する」ものだと思うんですよね。マインドフルネスの定義である「『今ここ』に気づいている状態」でいると、目の前の幸せに気づくことができるという。

前野:とすると、マインドフルネスは幸せになるためのベースなのかな? 面白いですね。僕は普段、「幸せ」をロジカルに理解するための研究をしているんです。幸せになるために必要な要素の一つが「楽観的であること」なのですが、「今すぐ楽観的になりましょう」と言っても難しいですよね。それにはまず心のベースを整える必要があって、そのときにマインドフルネスが有効に働くのかなと思います。

左から荻野淳也さん、前野隆司さん、前野マドカさん
―前野教授のおっしゃる、「幸せをロジカルに理解する」というのはどういうことですか?

前野:「幸せ」というのは、昔は宗教哲学をベースに考えられていたのですが、現代は心理学・脳科学が発展しているので、「こうすれば幸せになれるよ」というメカニズムがわかってきたんですよ。つまり、幸せをロジックで分解したり分類したりできるようになってきたんです。例えば、まず幸せには「地位財」と「非地位財」の2種類があって、前者はお金や地位など目に見えて人と比べられるもの、後者はそうでないもの。そして、前者の幸せは長続きしないということが、研究の結果わかっています。

―それはなぜでしょう?

前野:幸せって本来は長期的なものなんだけど、人はどうしても目の前のものを欲しがりますよね。例えば、お金が欲しいから宝くじを買うとか(笑)。これは生存本能に関係していると言われています。でも本当は、繋がりをつくったり、皆の目標をコツコツと実現したりして、コミュニティーの安定性やサステナビリティーの維持に寄与する活動をするほうが、長続きする幸せにつながるんです。

―なるほど。

前野:さらに、たくさんの心理学者が幸せに影響する要素を調べたところ、次の4つの因子があることがわかったんです。

―4つの因子は、前野さんの著書『幸せのメカニズム』に詳しく書かれていましたね。

前野:はい。1つ目は、「自己実現と成長の因子」。僕はこれを「『やってみよう!』因子」と名づけているのですが、個人的な成長の結果、社会の要請に応えられていたり、なりたい自分になれているという満足感を得たりすることですね。2つ目は、「つながりと感謝の因子」、通称「『ありがとう!』因子」。日々の生活の中で、他者に親切にしたり、感謝したりしている状態のことです。

『幸せのメカニズム』 4つの因子が四つ葉のクローバーで表されている
―やりたいことが実現できていて、周りの人に感謝や愛情の気持ちを持っている状態ですね。

前野:そうですね。3つ目は、「前向きと楽観の因子」である「『なんとかなる!』因子」。気持ちの切り替えが早く、楽観的であること。最後は「独立とマイペースの因子」である「『あなたらしく!』因子」。他者とあまり比較せず、自分の信念を持っていること。

―今おっしゃった4つの因子が絡みあって「幸せ」に繋がるんですね。

前野:それから、利己と利他なら、利他的であるほうが幸せになれます。どういうことかと言うと、利己の場合、自分を守るために他人に打ち勝とうとします。それが利他になると、まずは自分たちの「種(しゅ)」を守ろうとする。コミュニティーや家族を守り、ひいては人類や地球を守れるようになると、幸せは増すし、それが長く続くように人はできているんです。そういった幸せの在り方を左脳で伝えようとするのが僕の幸福学で、右脳から伝えようとするのが荻野さんのマインドフルネスなのかなと思います。

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