「男性の育休取得はなぜ増えない? vol.2」多忙なマスコミ業界でも育休取得ができた理由

「男性の育休取得はなぜ増えない? vol.2」多忙なマスコミ業界でも育休取得ができた理由

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ファザーリング・ジャパン理事の、つかごしまなぶです。ファザーリング・ジャパンは、「育児」も「仕事」も「人生」も笑って楽しむ父親を増やすことをモットーに2006年に設立しました。SAISION CHIENOWAでは4回にわたる連載で、男性の育休について考えていきます。
核家族が増えたいま、「ママケア」は夫の大事な役目です
2012年に育休法の改正があり、産後8週間以内に父親が育休を取得すると、子どもが1歳2か月になるまでにもう一度、育休を取ることができる。この「パパ育休」がマスコミで強調されたのは、「産後ママのケアサポート」の必要性からです。日本ではママケアを、里帰り出産などでカバーしていましたが、今は核家族化、高齢化により実家にも頼れない家族が増えました。産後のパパ育休の必要性はますます高まっていると言えます。そこで今回は、出版業界で働く大木パパ(仮名・34歳)の育休体験談を見てみましょう。多忙を極める出版業界で育休を取ることは可能なのか? リアルな声をお届けします。
「育休取得の動機は、産後の妻をサポートしたかったから」
大木:私は、専業主婦の妻、長女、次女の4人家族です。昨夏の次女誕生を機に、1か月間の育休を取得しました。動機は「産褥期の妻を全力で支えたい」という思いからです。父親学校への参加や育児書を通じて、出産がママの心身に与えるインパクトを知り、せめて産後1か月は安静に過ごしてもらいたいと、妊娠がわかった時点で育休取得を決めました。

また、実家のサポートが期待できなかったということも、育休を決めた大きな理由です。長女が生まれたときは、遠方にもかかわらず義母がたびたび我が家に来て助けてくれたのですが、今回は介護や体調面の問題もあり、無理を言えない状況でした。私の実家も遠方で通ってもらうのは現実的ではなく、「産後の妻を支えるのは自分しかいない!」という状況でした。「奥さんは専業主婦なのに、育休を取る必要ある?」と知人に言われたことがあります。しかし、産褥期の育児が大変なのは働くママも専業主婦のママも同じ。出産直後の妻を家事・育児に駆り出し、自分は変わらずに働くというのは考えられませんでした。
「職場の理解があったおかげで、スムーズに育休を取れました」
大木:妻が安定期に入るとすぐに、上司に「妊娠報告」と「育休取得」を希望する旨を伝えました。私の勤める会社は従業員の育児支援に力を入れており、また上司(男性)自身が育休取得経験者だったということもあって、快く承諾、応援してくれました。予定日まで半年近くあったので、担当している業務を整理し、進行の前倒し・後ろ倒しや同僚への引き継ぎ対応を行いました。社内だけでなく社外の取引先にも事情を説明しましたが、驚かれることはあっても否定的な反応はなく、皆さんから理解を得られました。とても恵まれた環境だったと思います。
「普段から家事をしていたので、しっかりサポートできた」
大木:8月初旬に次女が誕生し、ついに育休期間に突入。妻は授乳のみを行い、それ以外の育児・家事すべてを私が担当しました。長女の誕生以来、「家事・育児は女性の役割」という固定観念は捨て、意識的に家事・育児に取り組んでいたので、日々の掃除、片づけ、洗濯について戸惑う場面はほとんどありませんでした。しかし、料理に関しては、「できるだけ産後の体に優しいもの・母乳にいいとされるものを」ということを意識していたので、「根菜をなるべく使う」「調味料は既定量の半分にする」など、レシピ本を片手に日々頭を悩ませていました。

また、ちょうど幼稚園が夏休みだったため、長女の相手をするのも育休中の大きな役割でした。どうしてもママは次女にかかりきりになってしまうため、長女が疎外感を感じないよう意識して向き合っていました。とは言え、何度か「ママがいい!」とぐずるシーンもあり、長女がママに甘えられる時間もきちんと設けました。妻の声かけでママ友のホームパーティーに参加させてもらったこともあります。平日の昼間ということで、ママグループの中にパパ1人。最初は少し緊張しましたが、皆さんに温かく迎えてもらい、私も娘も楽しく過ごすことができました。なお、育休中は育児・家事に専念し、仕事はしていません。引き継いだ同僚からの問い合わせ電話やメールはたまにありましたが、育休期間にトラブルなどはありませんでした。
「ワークライフバランスの意識が強くなりました」
大木:1か月間というのはあっという間でした。仕事とは違った苦労とやり甲斐があるのは間違いありませんし、取得して本当によかったと思っています。妻は私の育休について、「しっかり休めたので、産後うつなどにならず、スムーズに家庭復帰できた!」と感謝してくれています。自分が寝込んだときでも夫にお願いできるということがわかったことで、二人目育児も多少気が楽になった様子です。長女についても、常に彼女に寄り添うことを心がけていたおかげか、心配していた「赤ちゃん返り」などの大きな変化はなかったように思います。

育休取得後、正直に言えば、復帰直後は溜まった仕事をこなすため残業が増えてしまったし、子どもが増えた分、家庭と仕事とのバランスを取るのがより大変になったのは間違いありません。ただ、「メリハリをつけて働く」「仕事の段取りをつける」という意識は育休によって強まりました。多忙な業界であるということもあるかもしれませんが、まだまだ育休を1か月単位で取得する社員は少ないため、もっともっと育休を取りやすい職場環境となるよう、ロールモデルとして活動していきたいと思っています。
育休期間は家庭内の頼れるパパになれるチャンス
いかがでしたか? 大木パパのように、家事・育児をサポートするにはそれなりの家庭内スキルが必要です。育休を取った当時の私は専業主婦の妻に家事を任せっきりだったので、皿の位置も調味料の場所も分からず、家事引き継ぎに1週間程かかりました。妻はさぞかしイライラしたことでしょう。でも育休こそ家庭で「使いものにならない」パパを「頼れる」パパにする絶好の実践訓練期間。育休はパパにとってスキル向上のチャンスです。さらに、夫に任せられることが増えれば、妻に心の余裕ができ、二人目、三人目の出産も視野に入れられるようになりますよね。

職場については、大木パパは運が良かった、と、くじ引きのようでは困ります。どんな会社や上司だとしても、希望する父親が育休を取れる環境作りは必要ですが、環境が整うのを待っていられないので、まずは言い出すアクションが大切です。上司や取引先の否定的な反応を過度に心配して言い出せないパパたちも、言い方やタイミングを工夫して試してみましょう。そうしたチャレンジパパが増えると環境も変わっていきます。育休後のパパは、仕事の慣らし期間なしで復帰直後からアクセル全開のスキルを求められることが多く、働き方変革への感度が高くなる時期。育休復帰経験のある職場内のママ社員と一緒に、社内の働き方変革活動をする仲間を増やしていきたいですね。
プロフィール

つかごし まなぶ(塚越 学)
1975年生まれ。東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス推進部 シニアコンサルタント/公認会計士。大手監査法人に勤める傍ら、2008年に長男誕生を契機にファザーリング・ジャパン会員として、父親の育児・夫婦のパートナーシップなどのセミナー講師やイベント企画などを自治体、労組、企業などに対して行う。男性の育休促進事業「さんきゅーパパプロジェクト」リーダー。大手監査法人マネージャーを経て2011年より現職。2012年より同法人の理事に就任。育児休業を長男時に1か月、次男時に1か月、三男時に8か月間取得している。
http://fathering.jp/

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