白河桃子が語る、「家事を担う主夫」と「大黒柱の妻」という夫婦のカタチ

白河桃子が語る、「家事を担う主夫」と「大黒柱の妻」という夫婦のカタチ

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『婚活時代』や『専業主婦になりたい女たち』など、女性の世相に切り込んだ著書を多く執筆している少子化ジャーナリスト、白河桃子さん。今年の1月に『「専業主夫」になりたい男たち』を出版したことで、夫が家庭を担う「主夫」に注目が集まっています。年収の面で妻を専業主婦として養える男性が減り、一方で自分らしく仕事をしたいと考える女性が増えた結果、浮かび上がってきた「主夫」の存在。「専業主夫」は日本に11万人いるそうです。なぜ彼らは「主夫」を選び、妻は「一家の大黒柱」として働くことを決めたのでしょうか。そして、男性が子育てや家事をすることは家庭にどんな影響を与えるのか。新しい家族のあり方として存在感を示しつつある「主夫」について白河さんにたっぷり伺いました。後半では、『「専業主夫」になりたい男たち』を読んで共感し、レビュー執筆をしたクレディセゾンの独身男性社員、麻月も参加し、「主夫」について語ってもらいました。

取材・文:吉田可奈 撮影:豊島望
プロフィール

白河桃子(しらかわ とうこ)
少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大学客員教授、一億総活躍国民会議の民間議員。東京都出身。内閣府「少子化社会対策大網」有識者委員、まち・ひと・しごと創世本部「地域少子化対策検証プロジェクト」委員。2008年に刊行した山田昌弘氏との共著『「婚活」時代』(ディスカヴァー携書)が20万部のベストセラーに。著書に『「妊活」バイブル晩婚・少子化時代を生きる女のライフプランニング』(講談社プラスアルファ新書)、『女子と就活 20代からの「就・妊・婚」講座』(中公新書ラクレ)、『格付けしあう女たち』『専業主婦になりたい女たち』(ポプラ新書)など。
http://ameblo.jp/touko-shirakawa/


麻月保樹(あさつき やすき)
クレディセゾン営業企画部 プロモーション戦略グループに所属。ワークライフバランスを強く意識する35歳。
主夫の家庭が夫婦円満なのは相手を労い、感謝の気持ちをもっているから。
―白河さんは男性の育児・家事参画を促進する団体「秘密結社 主夫の友」の顧問でもありますが、「専業主夫」に注目したのは何がきっかけだったのでしょうか?

白河:「秘密結社 主夫の友」のイベントなどで現役主夫の方たちと会ってお話しをしたときに、ご夫婦ともに幸せそうにしていらしたのがすごく印象的でした。さらに、そのご夫婦のお子さんが伸び伸びとしていたのを見て、「きっと、この家庭は環境がとてもいいんだろうな」と思ったんです。それがきっかけで、男性にも多様な働き方や子育ての関わり方があってもいいのでは?と考えるようになり、リアル主夫とその妻を取材することで夫婦の新しいカタチを知りたくなりました。

―女性の社会活躍の影響もあり、子育てに積極的な男性が増えているのは確かですが、最近ではいろいろな方面から「父親育休」に対しての議論がされていますよね。

白河:そうですね。政府や企業がしっかり育休を推奨していない環境の悪さもありますが、いまだに日本は「男は仕事、女は家庭」という古い考えが強く根づいているため、男性が育休を取得すると批判されてしまう。共働きが一般的になっても、夫の9割弱が家事をしていないという状況です。男女役割分担に限界がきているというのに……。父親育休については女性側も「夫が育休を取ることで出世できなくなったらどうしよう」という気持ちがあるうちは、なかなか踏み切れないものです。さらに、男性に対して「家事も育児も全部できる、任せられる」という信頼を持たないと、夫に家庭をゆだねられないですよね。

―男性に育児や家事を任せきれない女性側の気持ちはわかる気がします。でも、女性の仕事を応援してくれて、家事や育児をこなす男性や夫なんて本当にいるのでしょうか……?

白河:主夫といっても、生活のメインが家事や子育てになっている専業主夫のほかに、家庭にいながらフリーランスで働き、奥さんと家事分担をする主夫もいます。そして主夫になれる男性の特徴で代表的なのが、「頑張っている女性を素直に応援できる」かどうか。家事や育児、なかでも料理などは女性でも最初からできる人は少ないのであまり気にすることではなく、何よりも大事なのは「男はこうあるべき」という無駄なプライドを捨てられるかということです。

―女性が「主夫」と向き合うには「男は、女は」という概念や、プライドを捨てられるかが重要だと。夫婦どちらかがプライドを固持しているうちは難しいですよね。

白河:そうですね。夫婦としてどんな戦略を持って世の中をサバイバルしていくか、一度話し合うのはすごく大切で、冒頭で述べた主夫家庭が円満な秘訣はそこにあると思います。世の中の夫婦像とは逆行しているので、家事の大変さを知った夫と、大黒柱として働く苦労を知った奥さんはお互いの立場がよくわかるため、それぞれに感謝と尊敬の念がしっかりと生まれ、感謝を伝えることを大事にしています。どちらも経験して気づけたことが、家族円満につながっているようですね。
育児したい気持ちを男性自らが会社に訴えることで、世の中がひっくり返ると思うんです。
―本のなかに出てきた主夫の鑑と言うべきベテラン男性も、最初はそのプライドが捨てられず大変だったと書かれていますね。

白河:その男性は取材時に48歳で、主夫歴が18年。18年前といえば、男性はバリバリ働いてこそ一人前と言われている時代で、「主夫」という言葉さえ知らない状況でした。でも、彼は病気がきっかけで働けなくなり、これ以上奥さんと一緒にいたら迷惑がかかると離婚話をしたときに、年下の奥さんが「私が稼ぐ!」と言い放ち、大黒柱になることを選んだのです。その後、奥さんはどんどん実力をつけ、自分のサラリーマン時代の年収をぐんぐん超えていくのを見て、これは自分が復職するために頑張るのではなく、奥さんをサポートする側になろうと決心。とはいえ、そこにはたくさんの葛藤があり、買い物も午前中にスーツで行き、「働いている途中」を演じていたと言っていて……。でも、あるときに吹っ切れて髪の毛を金髪にし、心の底から主夫になったんです。彼はこのことを「降りる」と表現していて、私はすごく腑に落ちたんです。

―「降りる」って、男性にはすごく勇気がいることですよね。

白河:そうなんですよね。もちろん主夫を選んだあとでも「妻より稼がないこと」への葛藤がある人もいますから、全員が吹っ切れているわけではありません。夫婦お互いが納得した上で、関係性もメンテナンスしていかないと上手くいかないでしょう。これはどんな夫婦にも言えることですよね。女性の立場からお話すると、マスコミや公務員、経営者などの「休めない・ゆるめない・降りられない」という人が主夫を必要としていることが多いです。性格でいうと、仕事が大好きで太っ腹、そして楽天家な女性が多かったですね。

―女性活躍の時代になり、自分で稼げて子育ても家事もこなす、たくましいワーキングマザーが増えています。なかには「夫なんて必要ない」と言う人もいるそうです……。

白河:パートナーシップが組めなければ、「不要」となっても不思議はないですよね。「夫がいなくても平気」と離婚を突きつけられる前に、役割や無駄なプライドを捨て、男性も家庭に向き合ってほしい。そして会社に対しても、育児をしたい気持ちをしっかり訴えてほしい。社会や企業が男性の育児参加を当たり前にすれば、世の中がオセロのようにどんどん黒から白にひっくり返っていくんです。そのいい例が北欧で、40年前からイクメンキャンペーンをやっていて、現在はほとんどの男性が育児に参加しています。以前、フィンランド大使館の男性に「女性から、『私が育児と家事に専念するから、あなたは思う存分に働いて』と言ったらどうしますか?」と聞いたら、「それはおかしい。僕から育児の楽しさを奪わないでくれ」と返してくれました。フィンランドでも40年かかっているわけですから、日本も諦めずにいつかこんな考えになる時代を目指していきたいですよね。

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