「触れ合う子育て」を伝えたい。蛯原英里が語る、親子の心を繋ぐもの

「触れ合う子育て」を伝えたい。蛯原英里が語る、親子の心を繋ぐもの

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日本チャイルドボディケア協会の代表として活躍中の蛯原英里さんは、赤ちゃんへのマッサージを通して、「脳や身体の発達」を促進するだけでなく、「家族の絆」を築くことの大切さも伝えています。蛯原さんが日本各地で開催しているベビーマッサージのレッスンには、子どもとの接し方がわからないママや、夜泣きなどの子育てに悩んでいるママたちも多く参加されているのだとか。

さらに、核家族化が進み、自分たちだけで子育てをする夫婦は、氾濫する情報によって、自分たちに合った育児法が見つからず戸惑ってしまうケースも。そうしたパパやママに対して、「まずは触れてあげましょう」と話す蛯原さん。「触れること」は赤ちゃんに対してどんな効果をもたらすのでしょうか。また、「触れること」によってママやパパに表れる変化とは? 蛯原さんが考えるベビーマッサージの効果と手法、そしてご自身の娘さんやレッスンを通して感じた経験談をふまえて、その魅力を語っていただきました。

取材・文:片貝久美子 撮影:生田祐介(f-me)
プロフィール

蛯原英里(えびはら えり)
1979年、宮崎県生まれ。日本チャイルドボディケア協会 代表。看護師として新生児集中治療室に6年間勤務した後、ベビーマッサージ、ベビーヨガのインストラクターの資格を取得。都内を中心に、ママやパパに「触れ合い」の大切さやベビーマッサージの手法を伝えるレッスンやイベントを行う。2014年に第一子の女児を出産。子どもとの触れ合いをきっかけに家族の幸せを築いてほしいと、2015年に日本チャイルドボディケア協会を立ち上げる。
http://www.jcbcare.jp/
赤ちゃんと触れてアイコンタクトをとると、子どもだけじゃなくてママにも「幸せホルモン」が出るんですよ。
―蛯原さんが赤ちゃんとの「触れ合い」の大切さに気づいたのはいつ頃になるのですか?

蛯原:私はもともと看護師で、病院のNICU(新生児集中治療室)で働いていたんです。NICUとは、予定日より早く生まれた数百グラムの未熟児や病気を持って生まれた赤ちゃんがいる治療室なのですが、入院によってご両親と離ればなれになってしまうんですね。なので、ほかの赤ちゃんに比べると愛着形成が築きにくかったり、ご両親も目の前の現実をなかなか受け止められなかったりすることが多くて。そこで私たち看護師ができることと言ったら、保育器の中にいる赤ちゃんと触れてもらう機会をママとパパに作ることだったんです。あと、赤ちゃんがもうちょっと大きくなって、状態が落ち着いた場合は「カンガルーケア」というものを促すんですよ。

―「カンガルーケア」とは、どんなケアなのでしょうか?

蛯原:よく、出産直後にママが赤ちゃんを抱っこしますよね? あの行為をカンガルーケアと言い、私がいたNICUでは、面会に来たママだけでなく、パパにもやってもらっていました。いつもは感染防止用のガウンを着てもらうんですけど、そのときは敢えて胸を出してもらって、肌と肌でしっかり触れてもらう。そうすると、それまで少しネガティブだったママとパパの気持ちが明るく変化していくんですよね。赤ちゃんのほうも、カンガルーケアを続けることで状態が落ち着いてきたり哺乳力が良くなったりして。そんな風に目の前で家族の絆が深まっていく様子を見てすごく感動しましたし、触れることの大切さに気づいたんです。

―その経験が今の活動へと繋がったのですね。

蛯原:そうですね。私自身双子で、1800gで生まれて、最初は保育器に入っていたそうです。さらに看護師になってからの配属先もNICUということもあって、「触れること」の素晴らしさをすべてのママやパパに知ってほしいという気持ちが芽生えて。そこから改めて勉強し、資格も取って活動しているところです。私が行う「ベビーマッサージ」とは、基本的にはコミュニケーションの一つなので、こうしなきゃいけないという決まりはないんです。身体に優しく触れてあげるというのもベビーマッサージの一つだと思っています。

―堅苦しく考えずに、赤ちゃんに優しく触れるところから始めていきたいですね。ベビーマッサージを施す側には、どんな影響を与えるのでしょうか?

蛯原:赤ちゃんは私たちにいろいろなことを教えてくれるんですよ。例えば、赤ちゃんが気持ち良いと感じるところを触ってあげると笑顔になったり、ママの手が冷たかったときはしかめっ面になったり。いろいろな表情やしぐさを、まずはしっかり見てあげることが大切です。触れているからといってテレビやスマホを見ながらやっていては意味がありません。ちゃんと子どもの目を見てあげることで、ママの観察力もつき、「この子は何を訴えているのかな?」「どうして欲しいのかな?」というのが、どんどんわかるようになっていくんですよね。そうすると、気づくことがすごく多くなるので育児に自信が持てるようにもなります。

―初めてのお子さんだったりすると、育児に自信が持てないというママも多いと聞くので、その変化は大きいですね。

蛯原:そうなんです。実際、レッスンに来てくれるママたちの中には、日中家で子どもと二人でいるときに、どう接していいかわからないという方もいらっしゃいます。実は優しく触れ合うと、人は「オキシトシン」というホルモンが分泌されるんですよ。別名「幸せホルモン」「絆ホルモン」とも言われていて、赤ちゃんのことがより愛おしくなったり、両者の情緒が落ち着いてきたり、肌や髪のツヤが良くなるなど、いろいろな効果があると言われています。しかも、オキシトシンは触れる以外にアイコンタクトを取っているときにも出ます。例えば、猫とか犬を見てキュンキュンしたりしますよね? そういう気持ちから分泌されるホルモンは、赤ちゃんからお年寄りまで、男性も女性も生きている人みんなに出るものなんですよ。
子どもにとって皮膚は「第2の脳」。言葉を発することができない乳児には、マッサージで親子の絆を育んでほしい。
―親子の関係だけじゃなく、人が生きていくうえで「触れる」ことはとても大切なんですね。赤ちゃんにとってはどんな効果があるのですか?

蛯原:ママやパパに触れられて、赤ちゃんが気持ち良さそうにしているときに「気持ちいいねぇ」などと話しかけてあげることで、赤ちゃんに「そうそう、私(僕)も同じ気持ちだよ」という共感が生まれると思っています。そういう体験と気持ちの共有をたくさんすることが、子育てには大切だと言われていて、それはのちのち赤ちゃんの自尊心や自己肯定感にも繋がっていくはずです。その幼少期に育んだ自己肯定感が、保育園や小学校、大人になったら社会生活で、悩みや挫折などの壁にぶち当たったときに、乗り越える力になってくれる。気持ちの共感って、言葉だけではなくて触れることでも伝わるものなので、ベビーマッサージってとても奥が深いんです。

―小さい頃の触れ合いが、大人の自分を支えてくれるんですね。まだ言葉がしゃべれない赤ちゃんだと、本当に伝わっているのかな? と思いがちですけど、きちんと伝わるものだとわかりました。

蛯原:ベビーマッサージって神経伝達を活発にするので、指や足先の感覚の発達にいいみたいですね。うちの娘は1歳くらいのとき、手でピースサインができていたし、1歳8か月の今だとつま先で歩くこともできます。それから、ベビーマッサージをするときに、足を触りながら「ここはあんよだよ〜」とか、教えているつもりもなく話しかけているせいか、「頭はどこ?」って聞くと頭を触ったり、「お尻はどこ?」って聞くとお尻を触ったり。ほとんどの部位を自然と覚えているので、こっちがビックリしちゃいます(笑)。

―それはすごいですね! そういった赤ちゃん側の変化はレッスンに参加されたママたちからもよく言われたりするものですか?

蛯原:そうですね。まず、ベビーマッサージの直接的な効果としては、リンパや血液の流れが良くなるくらい身体がポカポカして、免疫力が高まるんです。それから、皮膚は「第2の脳」と言われているほど脳と直結しているので、脳の発達が促されたり。あと、ママたちがけっこう悩んでいる、夜泣きや便秘の軽減にも繋がったという声をよく聞きます。私から見ていても、ベビーマッサージをやっているママの赤ちゃんは表情が豊かだったり、言語の発達が早かったり、器用になっていくというのはありますね。

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