知りたいのはリアルな子育て。本音で生きる時代の、ママたちの処方箋(※ただし腹筋崩壊の恐れあり)

知りたいのはリアルな子育て。本音で生きる時代の、ママたちの処方箋(※ただし腹筋崩壊の恐れあり)

東村アキコ『ママはテンパリスト』

Bu facebook
Bu twitter
文:栗橋 望(CHIENOWA)
育児のハウツー情報はゼロ! カリスママンガ家のリアルな子育て
著者の東村アキコさんは、30代女子のリアルな心情をえぐったと話題の『東京タラレバ娘』のほか、『マンガ大賞2015』を受賞した『かくかくしかじか』や、映画化された『海月姫』などの代表作を持つ、人気マンガ家。そんな彼女が一切の創作を排除して、愛息「ごっちゃん」の子育てを描いた育児エッセイマンガが『ママはテンパリスト(全4巻)』です。

ながらく育児エッセイ分野においてもてはやされてきた、「ためになる」教育的内容や、お行儀の良い情報を排除し、大きく風穴を開けたと言えるのが本書だともいえます。

描かれているのは、保育園のお迎えの際に、疲れすぎて脱力して動けない母親の姿や、サイクルロードレースの『ツール・ド・フランス』並みの走力で子どもを輸送する母親たち、毎日部屋を散らかしてこぼして汚しまくる乳児、おっぱいへの尋常じゃない執着心、寝かしつけの難易度の高さ(1時間越えるとかよくある)などのエピソードの数々。産前休暇中に、これから始まる本格的な育児生活の導入イメージをつかむために読んだということもあり、やや大げさに描いているのかと思い込んでいましたが、ぜんっぜんそんなことありませんでした!! むしろ、育児を甘く見ていた過去の自分の横っ面を、タイムマシンにのって張り倒しに行きたいぐらいです。
「育児ナメてました」。苦労も笑いに変える子育てエピソードに、誰もが腹筋崩壊
「すいません育児ナメてました」という副題通り、「授乳・ゲップだし・寝かしつけ・沐浴・搾乳・離乳食作り・おむつ替え」などの、数え上げればきりがない赤ん坊の世話が2年以上続くという極限状態から繰り出される、名ゼリフ、名エピソードに、自分が出産を経てからはさらに深く共感するようになりました。

主人公であるごっちゃんが言葉を話せるようになって行動範囲が広がると、現実と虚構の世界の区別がつかない幼児特有の行動(ギャグにしか見えないけど本人は真剣)を繰り広げはじめ、パワーアップする母と子の戦いマインド、おばけや鬼を駆使した子ども操り術などの試行錯誤に、子の親なら「あるある!」とうなずいたり、わきあがる笑いを抑えられなくなること確実です。

ところで、この本は育児エッセイであり、育児における悩み解決につながるようなハウツー的な情報が一切入っておりません。これは著者が育児中にインターネットを通して、育児情報にはさまざまな解釈や立場の違いがあることを知り、「ネットで叩かれるのが嫌」というとてもシンプルな理由で「育児に関するハウツー的な情報は一切描かない=自分の経験したありのままのことしか描かない」と決めたそうです。その正直なポリシーが全篇で貫かれていることも、この作品に親しみを感じる理由なのかもしれません。
ありのままの母親の姿に「私だけじゃない」と前向きになれる
SNSがこれだけ身近になったいま、編集や加工によってブラッシュアップされた情報にアクセスしやすくなったものの、「いいね」が集まりやすい投稿というのはクリーンな一面を拡大して捉えたものが多いのも事実です。逆にありのままの情けない現実はどんどん追いやられて、目の前の「現実」と、SNSの「いいね」のギャップに苦しめられることも多いはず。だからこそ、このマンガには、子どもとの生活が想定不能でアンコントローラブルであることが包み隠さず描かれ、子どもと悪戦苦闘している母親の姿に自分を重ね合わせて、「私だけじゃないんだ」と前向きになることができるのではないでしょうか。

育児は家庭それぞれ、他人には他人のやり方があって、「それぞれ違ってそれでいい」、そんな当たり前のことに気づかせてくれる名著です。エッセイマンガという形式にとらわれず、ぜひ手に取ってみてください。きっとあなたの助けになります。

『ママはテンパリスト 1』

802
著者:東村アキコ
出版社:集英社
©東村アキコ/集英社
プロフィール

栗橋 望(くりはし のぞみ)
クレディセゾン 営業企画部プロモーション戦略G所属。5歳の長男と夫の3人暮らし。

関連する記事

この記事のキーワード

RANKING
YESTERDAY

WHAT'S CHIENOWA?

CHIENOWA'S ORIGINAL
STAFF PICK UP