「男性の育休取得はなぜ増えない? vol.1」男性の育休取得率と理想のギャップ

「男性の育休取得はなぜ増えない? vol.1」男性の育休取得率と理想のギャップ

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ファザーリング・ジャパン理事の、つかごしまなぶです。ファザーリング・ジャパンは、「育児」も「仕事」も「人生」も笑って楽しむ父親を増やすことをモットーに2006年に設立しました。SAISON CHIENOWAでは4回にわたる連載で、男性の育休について考えていきます。

男性育休の取得率はわずか2%。実はママの意識を変えることが取得への第一歩
ファザーリング・ジャパン(FJ)の活動の一つに、私がリーダーをしている男性の育児休業取得促進事業「さんきゅーパパプロジェクト」があります。日本における男性の育休取得希望者が3割(※厚労省調べ)もいるのに、実際の育休取得率は2%前後で地を這うような数字。この希望と現実のギャップを埋め、育休を希望する父親が当たり前に取れる社会を目指して2010年3月にプロジェクトを立ち上げました。私が復帰するママ社員への両立セミナーや、男性の育休取得促進セミナーで講師をするときに決まって聞くのが「出産前後に、夫婦で『パパ育休』の話し合いをしましたか?」という質問です。すると100名以上のママが参加するセミナーでも手を挙げる人は皆無です。このことから、当事者であるパパママが「パパ育休」を自分事として考えていない傾向にあることがわかります。

男性の育休取得促進には以下の3つの条件が必要だといわれています。
1.個人の意識啓発(取得に前向きな気持ちを持つ)
2.会社全体の取り組み(会社で男性の育休促進施策を行う)
3.上司のマネジメント(育休前後の職場運営を円滑にする)


今回のコラムでは「1.個人の意識啓発」を中心に考えていきましょう。まず、当事者の男性を対象とする前に、その配偶者である女性の意識啓発から取り組む必要があります。女性の意識にある「産休も育休も私だけが取ればいい」、という思い込みからの解放です。そもそも妻から育休の話をもちかけられないと、自分が育休を取るという選択肢すらないパパたちが残念ながら大多数を占めています。実際、このコラムが掲載されるSAISON CHIENOWAの運営元である、クレディセゾン社員の既婚者(男女)にアンケートを採っても、育休について夫婦で「話し合っていない」と答えた人が、残念ながら7割以上でした。まず妻が固定概念に縛られず、夫に「育休」の選択肢を考えさせることが1つの糸口になりそうです。(参照:クレディセゾン社員アンケート)

Q.妻の出産時、自らの育休取得について妻と話し合いをしましたか?
A.「話し合っていない」パパ76.9%
父親としての役割と自覚を持つために「パパ育休」は必要なのです
私が「パパこそ育休を取るべし」と唱える3つの理由を紹介したいと思います。第一は、産む性ではないからこそ、「父親の自覚を養う」ための特別な期間が必要だからです。出産前後で母親へのスイッチが入りやすい女性と異なり、男性は放っておくと父親へのスイッチが入るタイミングを逃します。日本では人が亡くなるときは忌引きで休める文化があるのに、人が生まれるときは家族全員で新しい命を迎える文化がありません。さらに里帰り出産が定着しているので、妻が実家のおじいちゃんおばあちゃんに頼ることも多く、父親が産前産後に必要とされる機会が少ない環境でもあります。子どもとの愛着形成はスキンシップの量に比例するという研究結果もあるので、育児に専念できる貴重な育休期間は「父親の権利」として認められてもいいのではないでしょうか?

第二に、「世話役割」という新しいスキルを身につけるために、「父親として一皮剥ける経験」が必要だからです。親には「稼ぎ手役割」「教育役割」「世話役割」がありますが、育児実践が少ない父親は「稼ぎ手役割」に偏りがちです。しかし、より安定した家庭を築くにはそれぞれが多数の役割を担えたほうがリスクは分散できますので、父親も「世話役割」を習得したいところ。例えば、職場で新人が一人前のビジネスパーソンになるために何をしますか? まず研修で知識を得て、現場でOJTを行い、さらに「一皮剥ける経験」をさせるためにプロジェクトリーダーとして自分一人でやりとげる経験をさせますよね。家庭内の「世話役割」を身につけるときも同じで、夫が子どもを一人で世話する経験が不可欠です。集中的なお世話期間として育児休業を取り、自分がリーダーとして全部めんどうをみる。母親は育休の中で自然とお世話を習得しているのだから、父親も時間をかけて「世話役割」を習得する必要がありますよね。

第三に、「法律上は、父親の育児参画を促進しているから」です。最近の育児介護休業法の改正はほとんど父親の育児参画が目的です。産後8週間内に育休を取ると、子どもが1歳2か月になるまでにもう一度育休を取ることができるのは父親だけです。夫婦で取得すると育休期間が2か月延長になりますし、取得した最初の半年は給与手取り月額の実質8割(上限あり)が育休給付金として雇用保険から支給されます。国は日本の父親に育休を取って欲しいのです。
ネガティブな自己解決より、「育休をとる」と決めてしまいましょう
こうした情報を聞くと男性の育休について興味を持ち始める母親も増えてきます。では、父親自身についてはどうでしょう? アンケートでは育休に興味があると回答していても、実際に行動している父親はやはり世間と同じく2割程度です。(参照:クレディセゾン社員アンケート)

Q.ご主人は育休を取得しましたか?
A.「取得していない」ママ82.8%

Q.今後、奥様が出産する場合、育休を取りたい?
A.「取りたい」パパ61.5%

Q.今後、出産する場合、夫に育休を取って欲しい?
A.「取ってほしい」ママ55.2%
なぜ、育休を取得しないのか。それは、「職場に迷惑がかかる」「評価が下がる」「職場に男性の育休取得者がいない」といったネガティブな言い訳が浮かび、行動以前に自分の心の中で終わってしまうからです。一方、育休を取ったパパたちにそのコツを聞けばとても明快な答えが返ってきます。それは「育休を取ると『決める』こと」です。決めてしまえば、「職場への迷惑を極力減らす方法を考えよう」「評価や賞与の基準を確認して上司と相談しよう」「フロントランナーになれば後輩たちにつながるかも」「私が育児家事スキルを上げれば妻はもっと活躍できるぞ」といったポジティブな対応策で行動に移れると口を揃えて言います。日々仕事の現場でたくさんの難しい案件と対峙しているのですから、自分の心の中に浮かんだハードルは越えられるパパも多いでしょう。思い込みはまだあります。「うちは共働きじゃないから関係ない」というパパからの声。そして「育休なんて取っても夫は役に立たない」というママからの声。そのあたりの真相についてはこれからの連載で、パパ育休ほやほやのファザーリング・ジャパン会員の体験談からみていきたいですね。

次回以降は「専業主婦の家庭で育休取得したパパ」と「共働きで育休取得したパパ」の体験レポートで、家族の意識や行動の変化、育休ライフ前後の楽しさや苦悩を赤裸々に語っていただきます。そしてこの連載では「個人の意識啓発」のみならず「会社全体の取り組み」「上司のマネジメント」にも踏み込んで、パパ育休の理想と現実のギャップ解消の糸口を探っていきたいと思います。
プロフィール

つかごし まなぶ(塚越 学)
1975年生まれ。東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス推進部 シニアコンサルタント/公認会計士。大手監査法人に勤める傍ら、2008年に長男誕生を契機にファザーリング・ジャパン会員として、父親の育児・夫婦のパートナーシップなどのセミナー講師やイベント企画などを自治体、労組、企業などに対して行う。男性の育休促進事業「さんきゅーパパプロジェクト」リーダー。大手監査法人マネージャーを経て2011年より現職。2012年より同法人の理事に就任。育児休業を長男時に1か月、次男時に1か月、三男時に8か月間取得している。
http://fathering.jp/

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