「男性の育休取得はなぜ増えない? vol.4」上司の心を動かす、パパの育休作戦

「男性の育休取得はなぜ増えない? vol.4」上司の心を動かす、パパの育休作戦

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ファザーリング・ジャパン理事の、つかごしまなぶです。ファザーリング・ジャパンは、「育児」も「仕事」も「人生」も笑って楽しむ父親を増やすことをモットーに2006年に設立しました。SAISION CHIENOWAでは4回にわたる連載で、男性の育休について考えていきます。
育休応援タイプの上司か否かで、パパ育休取得の作戦は変わる
最終回は、パパの育休取得において最大の壁になり得る「会社全体の取り組み」「上司のマネジメント」についてお話します。クレディセゾン社員アンケートで、「もし会社が育休取得を推進し、取得できる風土があれば取りたいですか?」という質問をしたところ、80%が「思う」と回答。会社の推進がなくても、奥さまが出産する場合は「育休を取りたい」と回答した男性は61.5%。この約20%の差は、「育休は取りたいけど職場の理解が……」と考えている社員の数であり、今後の「会社全体の取り組み」の糸口でもあります。

Q.もし会社が育休取得を推進し、取得できる風土があれば取りたいと思いますか?
A.「取りたいと思う」男性80%

Q.今後奥さまが出産する場合、育休を取りたいですか?
A.「取りたいと思う」男性61.5%
男性の育休取得100%を2年連続で達成している日本生命や、厚労省『イクメン企業アワード』初代グランプリで男性の育休取得率40%をキープしている花王は、まさにその成果を出している企業と言えます。そしてここには「上司のマネジメント」成果も含まれるのです。なぜなら、上司が育休促進の働きかけをしているかが、会社全体の成果を大きく左右するから。それでは「上司のマネジメント」について、より深堀りして、育休を取りたい男性がどう動いたらよいかを考えていきましょう。
男性も「妊夫期間」を戦略的に過ごすべし
まずは、自分の上司がどんなタイプなのかを知るために、ランチや飲み会のときに妻の妊娠や、出産予定日を伝えてみましょう。このときの反応はおおよそ2つです。

「家族が増えて大黒柱だな。これから仕事をガンガン与えてやるから、しっかり稼げ」という激ボスの上司。

「立ち会い出産の予定は? 出産予定日近くは仕事を調整しよう。育休はどうする?」というイクボスの上司。


妊夫(プレパパ)時代に上司のタイプがわかっていると、育休希望をカミングアウトするまで、戦略的にコトを進められます。イクボスの場合はスムーズに育休が取れますが、問題は「しっかり稼げ」という激ボスタイプです。連続休業することに抵抗を示しがちな上司の要因と対策は大きく2つ。1つは感情的な部分。もう1つは、マネジメント上の問題です。
頭の固い上司には、日頃の子ども好きアピールで世代間ギャップを埋めておこう
1つ目の「感情的な部分」について考えてみましょう。激ボスタイプの上司は「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業の時代に生まれ育ち、自身もそういう家庭を築いてきている方が多いです。そんな上司には、部下との世代間ギャップが想像以上であることを日頃から散りばめて認識してもらうことが大切。たとえば、普段から愛妻家であることや、生まれた子どもの写真を携帯の待ち受け画面にするなど、親バカぶりを強調しておく。私の場合は、ほとんどの妊婦健診につきそい、そのときのエピソードや子どもを心待ちにしていることを職場で話していました。

こうすることで上司や職場の仲間に、世代間ギャップの認識や個人の考え方を浸透させれば、育休を言い出してもサプライズにはなりにくいでしょう。うまくいけば自分の考え方に共感してくれる味方が現れることも。権利を前面に出した交渉はハレーションが起きやすいのでくれぐれも注意が必要です。

続いて2つ目の「マネジメント上の問題」。育休で職場を離れる間、上司や部下に迷惑をかけることは間違いありません。そこで、育休に快く同意してもらえるよう、上司たちの不安を軽減していく必要があります。育児休業の場合は、突然やってくる親の介護やメンタルトラブルによる休業と違って、準備期間が十分に取れますので、まずは、自分の仕事の引き継ぎが可能な状態にしていきます。

チームで行う仕事や人員に余裕がある職場では、育休前後は2人体制で仕事ができるようにすると安心です。一方、引き継ぎが大変なのは、上司と自分しかいないという小さな仕事です。自分がわかっていればいいと、業務内容を文書化していないことも多いですよね。その場合、いざというときに迅速な引き継ぎができません。通常の引き継ぎも同様ですが、特に育休前は仕事を整理する力が問われます。

じつは男性部下に育休を取らせた経験のない上司でも、人が抜ける経験は何度もしています。部下の異動、病気や忌引きでの連続休暇、長期の出張や研修など、育休で数週間抜ける程度であれば充分対応できるスキルや経験を持っているのです。セミナーで上司の方々にそれを指摘すると安心した顔をされるのが印象的です。
自分の育休を支えるのは部下や同僚。理解してもらうための努力は必要です
また、自分が社内でもっと上級の仕事に関わっていくためには、今の仕事を後輩に渡していく必要があります。しかし、なかなか引き継ぐタイミングが見つからないとか、育てる時間がないなど、育休に関係なく会社として人材育成がうまくいっていないケースも多いのではないでしょうか。そういう意味でも、育休は格好の場です。育休期間を後輩の成長の場として利用することもできるんです。

そこで私は、1年後には業務を後輩に引き継ごうと決め、二男の誕生後、1か月の育休期間は後輩の実力を上司に見てもらう試用期間として利用しようと考えました。上司は不慣れな後輩に仕事を任せることに難色を示しがちですが、「もし何かあっても育休復帰後に私が必ずフォローします」と上司に話しておけば、試しに使ってみるかという程度で激しく反対はされないでしょう。実際、後輩は私の育休期間中に見事に仕事をこなし、上司に評価されたので、翌年度から仕事を引き継ぐことができました。

仕事の見える化・共有化により、「自分の仕事がなくなるのではないか?」という不安もあるでしょうが、単なる思い込みの可能性もあります。仮にそれで育休期間に誰かに仕事を取られたとしたら、自分に必要な仕事ではなかったということでしょう。休むまでのマネジメントがしっかりできる人は、復帰後も活躍できる能力がある人です。それを上司にアピールし、復帰後にしっかりと実行するほかありません。さらに、育休中に負担を強いられる同僚や後輩をしっかり評価する仕組みも必要です。上司や人事部などと話し合って、不公平感を軽減させることも忘れずに。
「働き方」「職場風土」変革を起こせない企業に未来はない
こうして、基幹職を担っている男性が育休を取得し始めると、会社は人事制度や業務のあり方についてメスを入れざるを得なくなります。それは企業経営として利益を出すために必要な行為だからです。男性の育休が取得しやすくなれば、女性が育児と仕事を両立しやすい環境も広がり、昨今でいう「女性活躍推進」にも寄与します。

子育て支援に対応している企業は、数年後に訪れる大介護時代の荒波にも先手を打つことになり、生き残っていくことでしょう。逆に子育て支援ですら難色を示して問題を先送りにしている企業の先行きは不安です。時間や場所にとらわれない働き方が重要視される現代では、企業側も人材獲得合戦に負けぬよう、働き方変革を起こす必要があります。そしてそれこそが、企業価値を底上げする要因となるはずです。

そのなかで、私たち一人ひとりにできることは何でしょうか? それは周りに子どもが生まれる仲間がいたら「育休取るの?」と聞くのではなく、育休を取ること前提で「育休はいつ取るの?」と聞くことです。出会う仲間から次々とそう聞かれたら、本人も「育休取ってもいいのかな?」と思うはず。そう、職場風土はみなさん一人ひとりの言動にかかってくるのです。

家族や親戚が亡くなったときに忌引きで休めるのが当たり前のように、新しい命が生まれるときに休みが取れて家族全員で迎えられるのが当たり前になる社会を、みなさんと一緒に実現していきませんか?
プロフィール

つかごし まなぶ(塚越 学)
1975年生まれ。東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス推進部 シニアコンサルタント/公認会計士。大手監査法人に勤める傍ら、2008年に長男誕生を契機にファザーリング・ジャパン会員として、父親の育児・夫婦のパートナーシップなどのセミナー講師やイベント企画などを自治体、労組、企業などに対して行う。男性の育休促進事業「さんきゅーパパプロジェクト」リーダー。大手監査法人マネージャーを経て2011年より現職。2012年より同法人の理事に就任。育児休業を長男時に1か月、次男時に1か月、三男時に8か月間取得している。
http://fathering.jp/

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