比較・観察が子どもを成長させる。恐竜くんが伝える、自然科学のおもしろさ

比較・観察が子どもを成長させる。恐竜くんが伝える、自然科学のおもしろさ

2018年1月12日公開

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先日SAISON CHIENOWAで掲載された恐竜くんのインタビュー「『子どもの夢中』を親も楽しむ。恐竜くんが6歳からの夢を叶えられたワケ」。恐竜くんは、「科学の基本は、観察と比較」で、それが子どもにとっても、大人にとっても、新しい発見や好奇心が生まれるきっかけとなり、成長することにつながる、と教えてくれました。では、およそ約6600万年前に滅びたとされる「恐竜」の観察と比較の楽しさは、どこにあるのでしょうか?

「地球の歴史や生命の進化について、『骨』で語りかけてくるのが恐竜の魅力」と語る、サイエンスコミュニケーターの恐竜くんに、子どもに伝えたくなる自然科学の楽しさや、恐竜の魅力について教えていただきました。

取材・文/山本ぽてと 撮影/有坂政晴(STHU)
プロフィール

恐竜くん(きょうりゅうくん)
幼少期に恐竜に魅せられ、高校時代にカナダへ留学。恐竜研究が盛んなアルバータ大学で古生物学を中心にサイエンスを学ぶ(2008年理学部卒業)。その後、活動を日本に移し、「恐竜くん」として活動中。全国でトークショーや体験教室を開催するほか、恐竜展の企画・監修、執筆・解説など幅広く活躍している。楽しさとわかりやすさを第一にした「恐竜トーク」と得意の「イラスト」を駆使し、子どもや大人たちに恐竜や古生物学のおもしろさを伝えている。
http://boropin.blog.shinobi.jp/
化石しか残っていない恐竜を、どのように「観察・比較」する?
近年、サイエンスに興味を持たない子どもが増え、「理科離れ」が進んでいるといわれています。だから、ぼくは子どもたちに新しい発見の楽しさや喜びを伝えたいと思い、活動しています。そこで、今回は恐竜の魅力と、そこから学ぶ自然科学の楽しさについてご紹介。子どもだけでなく、かつて子どもだった大人にも「新発見」なことがありますよ。

恐竜くん
生物の研究は、まず「観察」からスタートします。何を食べているのか? どのくらい寝るのか? どうやって子どもを産むのか? 産んだ子の面倒をどう見るのか? それらを観察し、生態を調べていきます。では、遠い昔に絶滅してしまい、誰も生きた姿を見ることができない生き物の生態を、一体どのように調べればいいのでしょうか?

そこで重要になってくるのが「鳥」なのです。じつは鳥との比較によって、恐竜研究は大きく進歩しました。
恐竜は絶滅していない!? じつは学術的にはすでに定説
これをいうと驚かれるのですが、恐竜は絶滅していません。というのも、鳥は恐竜の生き残りだからです。ネコやイヌ、私たち人間が「哺乳類」であり、カブトムシやバッタが「昆虫」であるように、ハトやニワトリのような鳥たちはすべて「恐竜」なのです。これは、単なる一つの仮説や新説といったものではありません。長年にわたり、世界中の研究者があらゆる角度から検証して確かめた科学的事実、つまり「定説」なのです。

先ほど私は「誰も生きた姿を見たことがありません」と言いましたが、正確に言うと、私たちは毎朝恐竜のさえずりで目を覚ましています。そして、スーパーで恐竜の肉を買っているのです。

ちなみに、混同されやすいのですが、空を飛んでいたとされるプテラノドンなどの翼竜や、海のなかで魚を補食していたという首長竜は、絶滅した爬虫類であり、恐竜ではありません。『ドラえもん のび太の恐竜』という映画でのび太たちが育てていた「ピー助」は首長竜なので、厳密には恐竜ではないのです。それよりもニワトリのほうが恐竜だなんて、意外に思えるかもしれませんね。

翼竜のプテラノドン
恐竜のオスとメスの見分け方も、鳥をヒントに解明された
さて、「恐竜=鳥」だとすると、鳥との比較によってさまざまなことがわかります。これまで、恐竜の骨だけでは、その個体がオスかメスかを見分けることはほとんどできませんでした。そこで発想を変え、まずは鳥のオスとメスを「骨だけで見分ける方法」に注目したのです。

すると、どうやら太ももの骨の内側にカギがあることがわかりました。鳥にある太ももの骨の内側は、骨髄腔(こつずいくう)と呼ばれ、空洞になっています。しかし産卵が近づいたメスはカルシウムを蓄えるために、そこに「骨髄骨」(こつずいこつ)と呼ばれる骨を形成します。産卵前のメスには骨髄骨が多く見られますが、産卵が終わってしばらく経つと骨髄骨がなくなります。いずれにせよ、「骨髄骨が確認できたら、その鳥はメスである」といえることがわかりました。

産卵前は骨髄腔と呼ばれる赤い部分に「骨髄骨」が現れる
これを恐竜に当てはめてみると、同様の現象が確認できることがわかったのです。実際にティラノサウルスの骨髄骨が発見され、その化石はメスのものであることが確実視されています。産卵期のメス限定の見分け方なので、万能とはいえませんが、それでもオスとメスを見分ける方法がまったくなかったころと比べれば、大きな進歩です。

ティラノサウルスの骨格
「恐竜の身体の色はまだわかっていない」と聞いたことがある方も多いのではないでしょうか? 実際に、色素はとても脆い構造なので、数億から数千万年前に生きていた恐竜の化石に残されている可能性は非常に低いのです。ぼくたちが目にするイラストの恐竜の色のほとんどは、描く人の想像で塗られています。

ところが、2010年、アメリカのイェール大学の研究により、「羽毛恐竜アンキオルニス」の全身の色が判明しました。「羽毛恐竜」とは、身体が羽毛で覆われた恐竜です。その羽毛の一部から発見された色素の痕跡を、いま生き残っている鳥たちの羽毛と比較することで、もともとがどんな色だったのか突き止めることができたのです。このようにして、いまのところ約10種の恐竜の色がわかっています。

色が判明した羽毛恐竜アンキオルニス
おもしろいことに、色がわかった恐竜たちの多くは相当派手なんです。大きなしましま模様や、光が当たると玉虫のように色の変わる恐竜がいたこともわかっているんですよ。
恐竜たちは、かなりの面食いだった!?
多くの恐竜には、ふしぎな飾りがついています。おでこに突起があったり、背中に板やトゲがあったり、後頭部に襟飾りがあったり……見た目がやたらゴージャスなんです。

ステゴサウルス
なぜ恐竜は派手なのか? これも鳥の生態と比較するとよくわかります。鳥は、耳や鼻よりも目に頼る動物なんです。たとえば、ニワトリとひよこは親子で姿が違いますし、クジャクもオスとメスで違う色をしていますね。このように、大人と子ども、オスとメスとで見た目が違うのは、鳥が視覚からの情報をとても重視しているからなんです。

同じように恐竜も、視覚に頼る動物だったようです。実際に、恐竜の多くはオスとメスで姿が違い、子どもから大人になるときにも姿が変わっていたことがわかってきました。親子で違う姿をしていたということは、大人と子どもを見分ける必要があったということ。つまり、子が育つのを自然に任せて親は何もしないという動物も多いなか、恐竜は子育てをしていた可能性が高いということです。そう考えると、恐竜がぐっと身近に感じられませんか。

恐竜も子育てしていたかも
カラスも、じつはオスとメスとでは色がまったく違う
さて、勘のいい人は「カラスは、オスとメスの色が一緒じゃないか」と考えるかもしれません。ですが、同じ色に見えるのは、私たちの目が悪いからなんです。人間は赤、青、黄色の三原色で色を捉えていますが、鳥はそれに加え紫外線も色として認識できます。紫外線も含めると、カラスのオスとメスは全然違う色をしているんですよ。

カラスのつがい
人間は目が悪い生き物。これは進化の過程が原因
つまり、恐竜や鳥たちと比べると、哺乳類は非常に目が悪い生き物になるのですが、これは、ある意味では恐竜のせいだといえるかもしれません。恐竜の繁栄していた時代、哺乳類は恐竜の活動する昼を避け、主に夜に活動することで生き延びました。そんな時代が長く続いたので、暗闇のなかで生きるにあたり、色を認識する必要がなくなったのでしょう。

基本的に哺乳類は、鼻と耳に頼っていて、目の悪い動物です。イヌを見ていると、どんな大きさのイヌ同士でも、相手のことを知るためにお尻の匂いを嗅ぎ合ったり、オスとメスが発情し合ったりする。これは鳥や恐竜に比べて、哺乳類が見た目をあまり気にしないからなんですね。

このように、恐竜ってなんだろう? と考えはじめると、鳥のことが気になったり、哺乳類や人間のことが気になったりしてきます。スケールの大きな地球の歴史や生命の進化について、骨を通して語りかけてくれるのが、恐竜の大きな魅力かもしれません。

かつて、何十メートル、何十トンもある巨大な生き物が、自らの意思で自由にこの地球を歩き回っていた。恐竜は、まさに進化の神秘や驚異を体現するような存在といえます。そして、私たち人間もまた、進化の帰結としていまここに存在しているのです。恐竜を通して、ぜひ親子で自然科学に興味を持ってほしいなと思います。

『知識ゼロからの恐竜入門』

1,404
著者:恐竜くん
出版:幻冬舎

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