まちおこしのプロ・木下斉に訊く【後編】地方の未来を変える「稼ぐ」教育とは

まちおこしのプロ・木下斉に訊く【後編】地方の未来を変える「稼ぐ」教育とは

2018年3月20日公開

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総務省統計局のデータによると、人口の75%、9,500万人もの人々が東京圏以外で生活をしていることになります。地方で暮らすことを前提とすると、どんな働き方やライフデザインの選択肢があるのでしょうか。

お話をうかがったのは、新著『福岡市が地方最強の都市になった理由』を上梓されたばかりの木下斉さん。前編では個人のキャリア設計についてお聞きしましたが、後編では地方におけるワークライフバランス論、木下さん独自の教育論について掘り下げました。

取材・文:笹林司 撮影:玉村敬太
プロフィール

木下 斉(きのした ひとし)
一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事。まちビジネス事業家、地域経済評論家。高校時代より早稲田商店街の活性化事業に参画し、2000年に全国商店街の共同出資会社である株式会社商店街ネットワークを設立、初代社長に就任。その後、熊本城東マネジメント株式会社代表取締役。2010年、一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立。
ワークライフバランスを優先するなら地方都市へ。ライフステージに合わせて住む場所を選ぶ
—地方で働くことを考えたとき、ワークライフバランスの面ではいかがでしょうか? 最近ではよりよい生活環境を求めて地方移住をする若者も増えてきています。

木下:職業選択の際に、「クオリティ・オブ・ライフ」を重視する人は増えてきていますよね。生活コストが安い、自然環境が近い、通勤のストレスが少ないなど、地方に暮らすメリットは多様にあります。私のまわりにもサーフィンがしたくて宮崎県で就職、移住した人や、東京だけで仕事するスタイルから抜け出し、地方と東京、もしくは地方と海外の二地点を行き来しながら仕事する人もいます。

私のように複数の地域で事業を仲間とつくり、多数の地域を行き来しながら生活をしている人も増えています。ただ、地方生活における課題もあります。それは、公的サービスが人口規模に応じて変わってしまうことです。

—どういったものでしょうか?

木下:たとえば、教育や医療の問題ですね。特に人口が25万人以下になると大きな医療施設がなかったり、10万人以下になると、中堅の学校や進学校が1校しかなく、教育の選択肢が限られてしまったりするケースも出てきます。そうした地域だと子育て期の方は教育施設を、高齢の方の場合は医療機関の充実度を求めて住む場所を変えざるを得なくなりますよね。

なので、生まれ育つ場所や働く場所を「ひとつのまち」で完結させようという考え方はやめて、人生のステージで住む都市を選ぶのがいいと私は思います。たとえば、独身でバリバリ仕事したい人は大都会に行き、子どもの教育が重要な時期なら地方政令指定都市などの、環境もよく規模のある地方都市に住む。

子どもが独立したら都市圏内に位置している小さめの市町村に移り住めばいいし、高齢になったら、また利便性の高い都市部に戻るといったような流動的な人生設計をするのもいいと思います。ここまでせわしなく動かなくとも、「1つの場所で固定的な生活しかない」と思うよりは、気持ちが楽になるのではないでしょうか。

—転勤といった会社の都合ではなく、主体的に「住む場所を選ぶ」方は今後ますます増えていきそうですね。

木下:そうしたライフプランを持つ人にとって、全国各地に拠点を持ち、自分の意志で勤務地を選べる企業は、これから強みを発揮するかもしれませんね。たとえば、5年間札幌で勤めたあと、次は福岡に行ってみるとか。そういった選択ができることを魅力に思う人はいるでしょう。企業側は従来のような「異動=大変」という印象をぬぐい去り、それぞれの都市生活での「ライフスタイルのよさ」を盛り込んだジョブローテーションを強みとして打ち出してもいい気がします。異動したくないという人のためには地域採用という選択肢を残せばいいわけですし。

—そうした制度がある企業ならば、会社というバックボーンを活用しながら、地方での生活を充実させることができそうです。

木下:いきなり慣れない地方に移住して、そこで独立開業して生活していくのは、ハードルが高いですよね。そもそも地元の人でも起業して生活することができていないから、公務員のような安定した職が人気を集め、その結果、経済活動に従事する人が減少して衰退しているわけですから。

なので、地方で生活してみたい若者は、まずは各地に拠点がある企業に勤務しながら生活に慣れてみるのはどうでしょう。これはかなり現実的な選択肢だと思います。地方都市での生活に慣れたうえで、もっと自然環境を求めるのであればそういった立地に引っ越せばいいわけですし。もし人脈を築ければ仕事のチャンスが広がり、移住への足がかりとなるかもしれませんよね。「いきなりハードな選択をしない」というのはキャリア選択では大切だと思います。

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