常識破りの都市開発? 福岡市の成長から学ぶ「弱みを活かす」発想力

常識破りの都市開発? 福岡市の成長から学ぶ「弱みを活かす」発想力

2018年5月18日

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文:芳賀 優樹(CHIENOWA)


まるで企業経営! 福岡市の目まぐるしい成長記録はビジネスのヒントになる
いまでは全国5大都市のひとつとなった福岡市であるが、意外にもその歴史は浅い。明治維新以降は熊本市が、高度経済成長期は北九州市が、九州における中心都市であったことはご存知であろうか。福岡市が中心となったのは、じつはここ40年ほどの話なのである。

福岡市の地方都市としての成長は目まぐるしい。本書『福岡市が地方最強の都市になった理由』に書かれている福岡市の変遷は、まるで零細企業が大企業へ成長するまでのストーリーを見ているようだ。いまではすっかり人気都市となった福岡市のまちづくりは、民間が主体となり常識を疑い続けた結果だ。時代背景や地域性によるさまざまな課題と向き合い「常識破り」の選択で逆境を乗り越えたのだ。

本書は、福岡市の「戦略と覚悟」を都市経営の視点でフォーカスした一冊である。欠点をプラスに転化させる逆転の発想法、課題だらけの状態から突破口を見出し、実行する姿勢など、ビジネスを成功へ導くプロセスやヒントを得られる内容も詰まっているので、都市政策に興味がなくても、九州に縁のあるビジネスマンにはぜひ読んでほしい。


財政難が成長のきっかけに? 民間主体のイノベーション


小学生の頃、社会の授業では「行政が都市開発を行うものだ」と学び、私自身何も疑うことなく電車に乗り、道路を歩き、生活していた。私の暮らす福岡市も同じだと思っていたが、実際には大きく異なっていることに気づかされた。

本書によると、明治時代以降、中央集権体制化を進めるなかで多くの地方都市が国策としてつくられたが、当時の福岡藩は役人による紙幣の偽造が問題となり、新政府の恩恵をほとんど受けられなかった。財政難の都市だったのだ。しかしこの財政難が、行政に代わって民間が先駆的に動くきっかけとなる。電力会社も路面電車も、民間が主体となりインフラを整備。福岡市の「民間に任せる」という画期的かつ、常識破りな選択が、地場産業を圧倒的成長へと導いた。「災い転じて福と為す」とは、まさにこのことである。


「一級河川がない」という致命的欠点を、逆手にとった福岡市の戦略とは


高度経済成長期、当時の地方自治体の最大の課題は工場の誘致だった。成功すれば、経済規模の拡大や雇用、税収の増加という多大なメリットがあり、どの地方都市もまっさきに飛びつく、まさにトレンドの政策だ。福岡市に先駆けて政令指定都市となった北九州市は、官営八幡製鐵所をはじめとする大規模な施設を有し、工業都市として発展を遂げた。

都市開発のトレンドである工業都市に憧れる福岡市だったが、決定的に越えられない壁があった。それは、一級河川がないことである。
そのため福岡市は工業用水の確保が難しく、工場の誘致に失敗。工業化を早々に諦め、商業、卸業などのサービス産業の発展を目指す方向へ潔く転換した。この素早い撤退かつ、常識破りな方針展開こそが福岡市の未来を左右したと言える。サービス産業へ特化した結果、現在では創業系、スタートアップの統計で全国1位(参考:Fukuoka Growth(July / 2016))の開業率となり、「挑戦に寛容なまちづくり」が実現した。

同時にまた、福岡市は工業用水だけでなく、慢性的な生活用水不足問題を抱えていた。急激な人口増加に対するインフラ整備が整わず、耐えうる都市機能を備えていなかったからこそ、ほかの都市の成功事例を真似ず、時代の流れに逆行するようにコンパクトシティーを目指したのだ。

こうした水不足解消のために都市開発を制限した結果、持続的な都市成長の可能性を高めた。「常識破り」の開発抑制によりコンパクト化を実現し、同時に職住近接でストレスフリーな都市環境を福岡市にもたらしたことが地方最強の要因のひとつとなった。

本書にはこのようなエピソードが次々と展開され、驚きと発見の連続だったが、そのなかでも私は、福岡市における雇用の9割がサービス産業であることを知って衝撃を受けた。住みたいまち、働きたいまちとしての価値を高め、若者人口の増加にも影響し、福岡市の人口増加率全国1位を実現した要因である。


「コンパクトな開発」で大きな成果。常識破りの成長戦略から学んだこと


交通の面でもコンパクトシティー政策は推し進められた。空の玄関口・福岡空港。新幹線と在来線が乗り入れる博多駅。この2つの交通拠点が、福岡市内の中心部に存在することをご存知であろうか。福岡空港と博多駅は市営地下鉄で5分。最高の交通アクセスだ。1970年代以降、飛行機のジェット化により空港の郊外移転が議論され、移転が「常識」となっていたが、福岡市は現状の市街地空港を選択。コンパクトシティーとして価値の向上を目指し交通利便性を追求した合理的なまちづくりへとつながったのだ。常識とはまったく逆の発想がときに成功への近道になりうるというのは、本書で得られた大きな学びのひとつだ。

こうした交通拠点開発に加え、ほかの多くの自治体が高度経済成長期に都市開発を進めるなか、あえて開発しないという戦略を取るといった「常識破り」の発想の積み重ねが、いまの福岡市をつくりあげた。その都市開発のあり方から、私は過去の成功事例に縛られず、未来のあらゆる可能性を信じることがいかに重要であるかを学ぶことができた。目の前にある課題に立ち向かうとき、チャレンジするべきポイントを見極め、決められたルールにとらわれず新たな視点で仕事に取り組んでいきたいと思った。

都市開発は50年から100年という時間をかけて成果が表れる分野だ。過去、課題や制約と向き合い、既成概念にとらわれない発想によって、数々の苦難を乗り越えた福岡市。今後も都市圏、九州全体人口減少、経済低迷など多くの課題や制約に直面するだろう。どんな「常識破り」の知恵が生まれ、どう評価されるのか。福岡市の未来が楽しみである。
プロフィール

芳賀 優樹(はが まさき)
クレディセゾン九州支社。生命保険会社・クレジット会社を経て、2014年入社。
妻、5歳と4歳の息子たちと福岡市で暮らしている。

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