まちおこしのプロ・木下斉に訊く【前編】地方を活かしたこれからの働き方

まちおこしのプロ・木下斉に訊く【前編】地方を活かしたこれからの働き方

2018年3月8日公開

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総務省統計局のデータによると、日本の人口の10人に1人は東京に、4人に1人は東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)に居住しています。これが、以前からいわれている「東京一極集中化」のゆえん。しかし、裏を返せば、人口の75%、9,500万人もの人々が東京圏以外で生活をしていることになります。個人の働き方を考えるとき、地方で暮らす人々を無視するわけにはいきません。

それは、全国10か所の支社と約100か所のセゾンカウンターをもつクレディセゾンにとっても課題のひとつ。地方での働き方は、東京での働き方となにが違うのか、また、地方でキャリアを積んでいくためには、どういったマインドセットが必要なのか。まちでさまざまなビジネスを立ち上げてきた木下斉氏に、これから必要になる地方での働き方、そして、そのために企業が考えるべきことをうかがいました。前編は、地方都市の課題から考える地方での働き方、キャリアアップについてのお話です。

取材・文:笹林司 撮影:玉村敬太
プロフィール

木下 斉(きのした ひとし)
一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事。まちビジネス事業家、地域経済評論家。高校時代より早稲田商店街の活性化事業に参画し、2000年に全国商店街の共同出資会社である株式会社商店街ネットワークを設立、初代社長に就任。その後、熊本城東マネジメント株式会社代表取締役。2010年、一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立。
「地方」といっても事情はさまざま。地域経済評論家が語るリアルな実情
—『SAISON CHIENOWA』を運営するクレディセゾンは創業以来、「女性が働きやすい会社」であることを目指しています。今回は地方での働き方を考えるにあたって、「キャリア」「ワークライフバランス」という2つのテーマでお話をうかがえればと思います。

木下:よろしくお願いします。たしかに、地方都市と東京圏で働く環境は大きく異なりますが、その「地方」のなかでも、さらに実情は異なります。

私は高校時代に早稲田商店街の活性化に携わった経験から、まちづくり事業に関わるようになり、日本全国の都市を見る機会に恵まれました。その経験を通じて学んだのは、地域は均質的に評価できるものではないということです。

日本の行政が主導してきた過去のまちづくり政策において、すべての地域で同じような施策をとってきたことで、各地域、まちの個性が失われてしまいました。

今後の地域経済を考えるうえでも「地方」というものを画一的に捉えてしまうと、こうした失敗を繰り返してしまいます。地域の都市生活圏の中核地域と、その周辺にある地域とでは取るべき戦略が異なるので、まずは「地方」というものを分解して考える必要がありますね。

木下斉さん(一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事)
キャリアを大事にするなら「稼げる都市」を選べ
—「地方」と一括りにしてしまっては、問題の本質を見失うということですね。

木下:はい。個人のキャリアを考えるうえでも、自分が歩みたいキャリアによって地域を選んでいく必要があります。たとえば、雇用される仕事が多い地域と、自ら仕事をつくらなければならない地域といった具合に各地の雇用状況は大きく異なります。『年収は「住むところ」で決まる─雇用とイノベーションの都市経済学』(エンリコ・モレッティ著)という都市経済学の書籍がありますが、選択できるキャリアも住むところによって左右されるので、両者はリンクさせて考える必要があります。

—そもそも、地方の経済が衰退している理由は何なのでしょうか?

木下:地域経済の衰退は行政サービスの縮小と、民業の衰退の2つが組み合わさりながら起こっています。その要因の1つは「人口減少」です。特に行政サービスは人口減少によって、住民税などの税収が減るだけでなく地方交付税も削減されてしまいます。その結果、学校の廃校や、上下水道設備など生活インフラの維持管理ができなくなるといった行政サービスの破綻が考えられます。なので、行政は人口減少が起こっても、地域を支えられる仕組みを考えていかないといけません。

一方で民業は少し様子が異なります。経済衰退の理由を人口減少のせいにする人も多いですが、実際には事業としての競争力が低く、地域外に出ていけないことが原因です。地元の顧客がいなくなったからといって、ほかの地域から買い手がつくほどの魅力がない。だからジリ貧になるという構造です。逆に、人口が減少しても競争力が高ければ問題ありません。

たとえば高知県・四万十町の中小企業「四万十ドラマ」は適切なブランディングのもと、地元の名産品である栗をスイーツに加工して、付加価値の高い商品を生み出している企業の好事例といえるでしょう。商売を全国で展開することで地域の収益は上がり、栗林の農業も伸び、高い加工作業賃を確保できる。結果として関係者の所得も向上していきます。つまり人口が減るから田舎の経済成長は不可能ということではなく、広域商圏において、より生産性を高める取り組みをしていく必要があるだけなのです。

四万十ドラマが製造を行っているスイーツ「栗山」は農林水産省が主催する『フード・アクション・ニッポン・アワード2017』にも入賞
—他地域に展開することで人口減少による収益源をカバーしていけると。

木下:人口減少は深刻なペースで進んでいくものの、日本の人口がゼロになるわけではありません。日本全体の人口が1億人を切ると予想される2050年でも、現在のドイツ以上の人口規模はあり、国内需要もある程度は見込めています。こうした状況を無視して、過剰に悲観視すべきではないのです。

2060年までの将来人口推計 (出典:内閣府高齢社会白書)
木下:都市に人口が集まっているのは、都市部の企業のほうが生産性が高く、より良い条件の雇用を生み出しているからです。良い条件の仕事に人が集まり、人が集まるから生活に必要なサービス業が繁栄するといったサイクルが起きています。公共サービスも同様に、人口集積があるほど経済効率は良くなるので、インフラも整い、教育機会も多様になり、さらに人口は増加していきます。

しかし、こういった都市経済的な考え方が欠けている地方行政や企業は、国から補助金や交付金を受けることばかりを考えて、結果的に衰退してしまっています。さらに、不動産など一定の資産を保有している人が投資をしないことで、地域経済が発展せず、仕事が生まれないから人も集まらないという悪循環が生まれているのです。

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