【医師監修】妊娠中に糖尿病になると、どんな問題がある? 治療法は?

【医師監修】妊娠中に糖尿病になると、どんな問題がある? 治療法は?

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妊娠中は、体調が大きく変化することで、体にさまざまなトラブルが起こりやすくなりますが、なかでも、特に気をつけたいものの1つに「妊娠糖尿病」があります。ここでは、妊娠糖尿病がどのようなものか、妊娠糖尿病の原因、治療法などについてご紹介していきます。







この記事の監修ドクター

内科医 会田梓 先生

東京都出身。医学部卒業後、東京都内の病院に勤務。内分泌代謝内科医として、糖尿病・甲状腺・その他の内分泌疾患に関しての診療に従事している。女医+(じょいぷらす)所属。

糖尿病ってどんな病気?糖代謝って何?

私たちが食事から摂取した糖質(炭水化物)は、小腸で分解されて「ブドウ糖」になります。このブドウ糖は、脳や筋肉を正常に動かすための重要なエネルギー源で、血液に吸収されて血全身に運ばれ、すい臓から分泌される「インスリン」というホルモンの働きで、細胞に取り込まれて利用されます。また、使われずに余ったブドウ糖も、やはりインスリンの働きで、非常時のエネルギー源として、肝臓や筋肉、脂肪に蓄えられます。

このように、糖質がエネルギーとして使われるまでの仕組みを「糖代謝」といいます。しかし、糖尿病の人は、インスリンが効きにくくなったり、十分に分泌されなかったりするために、糖代謝がうまくいかなくなり、血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)が慢性的に高くなってしまうのです。

妊娠糖尿病って何?どうしてなるの?

妊娠糖尿病とは
「妊娠糖尿病」とは、妊娠中にはじめて発見、または発症した糖代謝異常のことで、血糖値が基準よりも高くはなっているものの、まだ糖尿病には至らない軽度の段階ものを指します。日本では、妊婦さんの7〜9%が妊娠糖尿病と診断されます。

また、妊娠中に発見された重度の糖代謝異常は「妊娠時に診断された明らかな糖尿病」、もともと糖尿病だった人が妊娠した場合は「糖尿病合併妊娠」と呼ばれ、妊娠糖尿病とは区別されています。

妊娠中に血糖値が上がりやすくなるのはなぜ?
ブドウ糖は、お母さんだけでなく、お腹の赤ちゃんにとっても、成長するために必要なエネルギー源です。このため、妊娠週数が進み、赤ちゃんが大きくなるにしたがって、より多くのブドウ糖を赤ちゃんに供給するために、胎盤からインスリンの働きを抑えるホルモンが分泌されるようになります。その結果、インスリンの働きが悪くなり、お母さんの血糖値が上昇しやすくなるのです。
妊娠糖尿病になりやすいのはどんな人?
妊娠糖尿病は、次のような人に起こりやすいといわれています。

・家族に糖尿病の人がいる。

・妊娠前から肥満である。

・過去に巨大児(出生体重が4,000g以上の赤ちゃん)や先天性奇形児を出産したことがある。

・過去に原因不明の早産、死産の経験がある。

・妊娠高血圧症候群や羊水過多症を患っている。

・尿糖検査で頻繁に陽性が出ていた。

・35歳以上の高齢出産。

妊娠糖尿病になると何が問題なの?
妊娠糖尿病になっても、これといった自覚症状は、ほとんどありません。中には、のどが渇きやすくなったり、尿の量や回数が増えたり、疲れやすくなったりする人もいるようですが、こうした症状は、妊娠中のマイナートラブルとしても起こり得るものなので、自分が妊娠糖尿病になっていると気づける人は、あまりいないようです。

しかし、妊娠糖尿病になると、早産や妊娠高血圧症候群、羊水過多症、尿路感染症を引き起こしやすくなります。それだけでなく、妊娠糖尿病の影響は、お腹の赤ちゃんにも及び、巨大児や先天奇形、子宮内発育遅延、胎児死亡になるリスクを高めたり、生まれてからも、呼吸障害、低血糖症、高ビリルビン血症(新生児黄疸)、低カルシウム血症、多血症を合併しやすくなったりします。

妊娠糖尿病かどうかはどうやって調べるの?

妊娠初期の妊婦健診では、妊娠糖尿病のスクリーニング(ふるい分け)検査として、「随時血糖検査」を行います。血糖値は、食事をした直後に上昇するという特徴がありますが、食前や食後など、時間を問わずに採血して血糖値を測定するのが「随時血糖検査」です。

随時血糖検査で、血糖値が100mg/dl以上の場合は、妊娠糖尿病の疑いがあるので、「75gブドウ糖負荷試験」を行います。これは、10時間以上絶食した状態で、空腹時の血糖値を測ったうえで、ブドウ糖75gを溶かした水を飲み、30分後、1時間後、2時間後にも血糖値を測定する検査です。そして、この検査の結果、次の基準に1つでも当てはまった場合は、妊娠糖尿病と診断し、治療を開始します。

・空腹時血糖値が92mg/dL以上

・1時間後の血糖値が180mg/dL以上  

・2時間後の血糖値が153mg/dL以上 

また、インスリンは妊娠数週が進むに連れて効きにくくなっていくので、妊娠初期に血糖値が適正だった人も、妊娠中期に、再度スクリーニング検査を受ける必要があります。

妊娠糖尿病の治療法とは?

通常の糖尿病の場合は、血糖値を正常にコントロールするために、食事療法と運動療法を中心に、必要に応じてインスリン療法(薬物療法)が併用されます。しかし妊娠糖尿病の場合は、妊娠中で運動があまりできないので、まずは食事療法から始めるのが基本です。
食事療法ではどんなことをするの?
1日の摂取カロリーを制限する
妊娠中は、お腹の赤ちゃんに栄養を送ったり、分娩に必要なエネルギーを蓄えたり、産後の授乳の準備などのために、ある程度は体重を増やす必要があります。このため、正常な妊婦さんの場合は、非妊娠時の1日の摂取カロリーにプラスして、妊娠初期なら50 kcal、妊娠中期は250 kcal、妊娠後期は450 kcalを摂る必要があります。妊娠糖尿病の食事療法では、正常な妊婦さんの1日の摂取カロリーから、だいたい30%くらいカロリー制限をした食事にします。
食事メニューについて
栄養バランスの取れた食生活を心がけたうえで、鉄分、カルシウム、葉酸を積極的に摂り、甘い物や塩分の多いものは控えめにします。
食事を分割してとる
妊娠中は、ホルモンの作用で、ふだんよりも食後に血糖値が上昇しやすくなりますが、空腹のときに一気にたくさんの食事をとると、余計に食後の血糖値が急上昇してしまいます。

また妊娠中は、お腹の赤ちゃんに優先的にブドウ糖が供給されるので、空腹になって血糖値が下がると、お母さんは、自分のエネルギーとして使うブドウ糖が足りなくなりがちです。すると、体はブドウ糖の代わりに、脂肪を分解することでエネルギーを補充しようとしますが、脂肪を分解すると、副産物として「ケトン体」という物質が生産されます。しかし、ケトン体の生産量が増えすぎると、血液中にケトン体が溜まり、昏睡状態を招く恐れがある「糖尿病性ケトアシドーシス」になることがあります。

ですから、妊娠糖尿病の食事療法では、空腹になる時間帯を減らして血糖値の変動を抑えるために、1日の食事を朝、昼、晩の3回ではなく、4〜6回に分けて摂るようにすることがあります。

インスリン治療を行うことも
血糖値が非常に高かったり、食事療法をしても血糖コントロールがうまくいかなったりする場合は、「インスリン療法」を行います。これは、インスリン注射を毎日決められた時間に自分で打ち、外からインスリンを補うという治療法です。

「自分で注射を打つなんて、難しいし、痛そうでイヤ」と思う人もいるかもしれません。しかし、インスリン注射は、簡単に打てるペン型の注射器が主流で、針もとても細く短いので、痛みがあまりありません。また、インスリンは胎盤を通過しないので、赤ちゃんに影響する心配もありません。

妊娠糖尿病で入院することもあるの?
妊娠糖尿病では、血糖値を正常な値にコントロールするために、数日〜1週間ほど入院して治療を行うこともあります。これは、「管理入院」や「教育入院」と呼ばれるもので、妊娠糖尿病用にカロリー計算された食事療法を行うほか、生活習慣の改善の指導を受けたり、インスリン注射を打つ練習をしたりします。
妊娠糖尿病は治るの?

妊娠糖尿病になっても、お産が終われば、血糖値が改善することが多いようですが、将来的には、約半数の人が糖尿病を発症するといわれています(将来糖尿病を発症するリスクは、血糖値が正常の妊婦の7.43倍)。それだけでなく、正常な妊婦さんに比べて、メタボリックシンドロームを発症する割合も高いという報告があります。ですから、妊娠糖尿病と診断された人は、産後も食事や運動に注意するとともに、定期的に健診を受けることが大切です。
まとめ

妊娠糖尿病になると、お母さんだけでなく、お腹の赤ちゃんにも、さまざまな悪影響が及びます。妊娠中の急激な体重増加は、妊娠糖尿病になるリスクを高めるので、食事に気をつけたり、無理のない範囲で体を動かすようにしたりして、きちんと体重管理を行っていきましょう。

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