「不妊退職」を知ってる? 妊活と仕事の両立で知ってほしい、正しい知識

「不妊退職」を知ってる? 妊活と仕事の両立で知ってほしい、正しい知識

2017年8月25日公開

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文:二瓶 瑠菜(CHIENOWA)
不妊治療経験のある夫婦は5.5組に1組。あなたはこの現状を知っていますか?
妊娠の知識を身につけたり、妊娠を望む夫婦が自身の身体を知ったりするための活動を指す「妊活」という言葉。テレビや雑誌などが取り上げるようになり、少しずつ市民権を得てきたのではないでしょうか。しかし妊活中の当事者でなければ、何をしているのか実際のところはわからないのが現状です。

突然ですが、不妊治療について7つのクイズを出したいと思います。A~Dのなかから、当てはまると思うものを選んでみてください。

では、クイズの解答です。

何問正解できましたか? 思ったよりも不妊治療をしている人は多かったのではないでしょうか。不妊治療の経験者は5.5組に1組であり、その負担に悩む人がたくさんいるのが現実なのです。

そして「妊活」や「不妊治療」と聞いて、女性特有の話だと思っている方も少なくないはず。しかし、不妊に悩む場合、約50%は男性側にも原因があるということはあまり知られていません。当事者ではない人への認知が低いだけに、なかなか自分ごと化できないという問題があります。

本記事では、私が主催するようになった「妊活」についての社内イベントが生まれた経緯、「妊活」を取り巻く状況なども含めて、6月30日に開催された講演会「ワークライフバランスを充実させよう!~妊活と仕事の両立編 / どんな転機にも諦めない、諦めさせない~」の様子もお伝えできればと思います。

当日の社内イベントの様子。参加者はクレディセゾンの社員
不妊治療を理由に「不妊退職」をする女性たち
私が所属しているクレディセゾン 神奈川支社では、昨年より地方創生プロジェクトを発足させ、私もその一員として参加しています。各自治体が抱える問題には、人口減少・空き家問題・保育園不足など多々あるなか、私は「女性活躍」が日本活性化のキーポイントではないかと考えました。

女性が働きながら「妊娠・出産・育児」をしていくためのサポートが未整備では、出生率低下に影響するだけでなく、社会全体の消費活動も活発になりません。女性活躍推進に必要なのは、女性から「仕事(収入)」を取り上げなくていい、「仕事と○○」の両立へのサポートだと考えました。

「両立を実現するために、私には何ができるのだろう?」と一人で悶々としていたときに出会ったのが、不妊治療に悩む女性の支援活動を行うNPO法人Fineでした。きっかけはFineが発信するSNSの情報をたまたま見つけたこと。全国の不妊治療当事者を支えたいというFineの想いに共感し、活動への参画を決めました。いま私自身も「妊活」をしながら、Fineの広報やイベント担当をしています。

みなさんのまわりや職場に「ただいま妊活中です」と宣言している方はどのくらいいますか? 私は妊活中であることを上司に報告できませんでした。それは、報告することによって仕事の期待度や、キャリアを失うことを恐れたからです。不妊治療を理由に転職や退職する「不妊退職」に至ってしまった人も少なくないそうです。不妊治療は1回で1万から50万円ほど(自由診療の治療の場合)かかり、多くの人が総額140万円くらいかかるといいます。それだけのお金が必要なのにも関わらず、余儀なく退職してしまうことを知り、とても悲しい、なんとも言えない感情がこみ上げてきました。

治療は人にもよりますが、通院頻度は月に5~14日くらいを必要とし、ホルモン剤の投薬や自己注射などの治療によってホルモンバランスが崩れ、身体への負担だけでなく精神的なストレスも生じることがあります。不妊治療によって退職する本人だけでなく、人材を失う企業側にとっても、大きなダメージになります。当事者のまわりの人たち、上司やパートナーがサポートできることは、いったい何なのでしょうか?
同僚や上司に「妊活」を理解してほしい。社員向けの講演会をやってみた
女性が7割を占める当社ですら、「妊活」へのきちんとしたサポートがありませんでした。不妊治療と仕事を両立するための知識を職場のみなさんに知っておいてほしい。当事者以外の人が正しい知識を身につけることで、より多くの社員がイキイキと働ける会社になるはず。そこで、「妊活」という領域で社内の意識改革をしたいと願うようになりました。

そんな私の想いに共感してくれた上司や同僚の協力もあり、NPO法人Fine理事長の松本亜樹子さんをゲストに招き、社員向けイベントのひとつ「ラーニング・カフェ」として、妊活の講演会が実現しました。松本さんはご自身の不妊体験をいかして『ひとりじゃないよ!不妊治療』(椎崎亮子、森本義晴共著)を出版。それを機に、2004年NPO法人 Fineを立ち上げ、妊活コーチの活動や不妊治療に悩む女性の支援活動をしています。

今回の講演では、上述のようにクイズを含めながら、年齢・性別・婚姻や出産経験の有無などに関係なく約50名の社員が妊活の基礎知識を学びました。参加者からはいろいろな場面で、「知らなかった」という驚きの声が自然と湧き上がってきました。

たとえば、「喫煙・甘いもの・自転車・膝の上でパソコン・素足・飲酒・サウナのなかで、妊活中の男女が『~しすぎる』とよくないことはどれでしょうか?」という問いがあったのですが、その答えは「すべて」です。誰もが日常生活のなかで何となくやっているようなことも、妊活においては意識すべきなのです。
不妊治療大国と呼ばれる日本。意識レベルの低さも社会問題のひとつ
先ほどの妊活問題の答えにもありましたが、日本で1年間に体外受精で生まれた子どもは47,000人で、その数は世界一。つまり、日本は不妊治療大国といっても過言ではありません。講師の松本さんは、そんな日本社会の現状について、「多くの日本人が、妊娠するために必要な男女の身体機能や、不妊治療の現状を正しく理解していないということは、いざその現実に直面したときに、仕事と治療の両立に悩んだり、ともすればどちらかを手放さざるを得なくなったりと、大きな後悔につながりかねない」と言います。

私も実際に「そろそろ子どもがほしいなぁ」と思ったときに、何から始めるべきなのか、何ひとつわかっていませんでした。自分自身が当事者になった場合はもちろん、不妊治療をサポートする場合も、治療の現実に無知であることはじつに恐ろしいことだと感じました。
職場の一人ひとりが「なりたい自分」を実現するために踏み出した一歩が、社内意識を変えた
いまは妊活に限らず、子育て・介護など、誰しもが「仕事と〇〇の両立」をしなければならない時代だと思います。一人ひとりが抱えていることを周囲に相談しやすくするために、日ごろからコミュニケーションを円滑にする必要があり、妊活・育児・介護を正しく理解する場をもっと社内につくらなければならないと思いました。

妊活の当事者として、今回の講演の主催者として、みなさんに伝えたいことがあります。それは、将来、妊活当事者になるかもしれない方には、「妊娠」について正しい知識を得てほしい。そして、自分自身の身体に意識を向けて、自分自身を大切にしてほしいのです。現在、妊活をしている方には、キャリアと妊活を天秤にかけることなく、公私ともに思い描く「なりたい自分」を実現してほしいです。

最後に、講演会に参加した社員に感想を聞いてみると、
「若いうちに不妊について正しい知識を持っておくことが、将来の選択に影響するほど大切なことだと感じました。まだ日本では不妊治療に対する偏見があり、治療していることすら言えない環境があります。話せる環境づくりをし、自分なりにサポートしていきたいと思いました」(30代・1児のママ)

「女性の部下を持つマネージャーとして、今後の部下のキャリア支援のために、ちゃんと知っておきたいと思った。不妊治療と仕事の両立がこんなに大変だとは知らなかったし、それができなくて退職する人がこんなに多いとは……。もし、部下が不妊治療のために職種変更や急な休みの希望があったときには、大いにサポートしたい。また、打ちあけてもらえるような信頼関係を構築できるよう、日ごろのコミュニケーションをより意識したいと感じた」(30代・管理職)
など、大きな反響をいただき、嬉しく思いました。また、ほかの支社の役職者から、「うちの支社でもやってほしい!」との声もあり、全社規模で「妊活」への意識を変えていけたらと思っています。

いろいろな価値観、抱える問題があるいまの時代だからこそ、一人ひとりが描く理想のキャリア形成に向けて、互いを認め合い、安心して過ごせる社会を築く必要があるのではないでしょうか。そのための手助けをこれからも続けていきたいです。
イベント情報

『Fine祭り 2017 全国おしゃべり会 special』
【日時】10月1日(大阪)、22日(東京)、29日(札幌)、11月12日(仙台)、19日(名古屋)、12月3日(福岡)
<第一部>13:00~14:00 <第二部>14:20~16:00
【場所】上記全国6か所
http://j-fine.jp/matsuri/2017/matsuri.html
NPO法人Fine理事長・松本亜樹子さんの著書ご紹介

『不妊治療のやめどき』

1,512
著者:松本亜樹子
出版社:WAVE出版

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