「人を傷つけてまで生きる」という生き方をなくす。犯罪者の再犯防止に取組む心理学者【100人100色】

「人を傷つけてまで生きる」という生き方をなくす。犯罪者の再犯防止に取組む心理学者【100人100色】

心理学者・41歳

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いろんな女性の働く・暮らすを知ること『100人100色』 Vol.23

それぞれの立場、個々の考え方によって「働く」ことへのスタンスは異なります。正解なんてありません。
「100人100色」では、100人の「働く女性」に登場いただき、等身大の姿を語っていただきます。年齢、環境、キャリア全ての背景が異なる人たちの100とおりの『想いや生き方』の中に、きっとあなた自身にとってのヒントが見えてくるはずです。

今回は、大学教員の東本愛香さん(41)をご紹介します。
自分自身を表現する肩書は、「東本愛香(とうもとあいか)」しかないと語る彼女。心理学者として、犯罪加害者の社会復帰につながる取り組みをしている方です。「私たちの取組みは、ストレートに受け入れられることばかりではありません」と語る東本さんに、自身の仕事に対する思いやこれからについて、熱く語っていただきました。
これまでのキャリアを教えてください。

小学校から大学までエスカレータ式の女子校に行いました。大学院には5年間通って博士号を取得しました。
卒業後、母校で勤務していたときに突然、今につながる領域の研究にお声がけいただきました。そして犯罪精神医学に関する研究に関わるようになり、特に性犯罪について研究することになりました。
上司の計らいもあり、学会も含めて2、3年のうちに5ヵ国ほどで学ぶという貴重な機会もいただきました。

国内の学会にて
研究の中では“再犯のリスク”について予測していく方法や再犯防止のための治療教育プログラムについて興味を持ちました。
特に強く関心を持ったのが、そのようなプログラムを提供するための人材育成についてです。これには現在も関わっています。
現在の仕事内容を教えてください。

現在も司法精神保健に関する大学の研究室に所属しています。活動内容は、臨床研究を中心に再犯を防止する取組みとその運用に関するシステムの検討です。性犯罪という枠だけではなく、暴力というとらえ方やコミュニケーション能力の不足という観点からも取り組んでいます。
加害者臨床という領域に身を置き、「人を傷つけてまで生きる」という生き方が少なくあって欲しいと活動をしています。
5年続けると理解され、10年経つと共有できるようになっていくような気がするなぁと感じて心が熱くなるような日々です。多くの方に協力してもらえる環境に感謝しています。
事件の加害者である人たちへ、これから生きることや、まさに更生についてプログラムという形で提供している私たちの取組みはストレートに受け入れられることばかりではありません。
しかし、本人が再犯に至ることなく、生きることへの目標を持って生活できるためのアプローチを続けていきたいと思っています。
それが被害者を生まない手段の一つだとも思っているんです。難しいことではあると認識しつつも、彼ら自身が仕事に就いて、「自分は社会の一員である」と感じることが重要なんだと思っています。
これまでにぶつかった壁はありますか?そしてどう乗り越えましたか?

前に勤務していた大学の研究室が教授の退官などもあり閉室することになったんです。
私にとっては、今の領域で大きな飛躍をさせてくれた所属だったので、ここを辞めてしまったら「私が私でなくなってしまう」とか、「なんでこんなことになっちゃうんだろう」とか、「なんとかしなきゃ」とか、いろいろな考えがぐるぐるとまわりました。
以前の研究領域にもう一度チャレンジすることも考えたり、そこに職を求めようと動いたりも考えました。そんなときに、とある人に「私が私でいられなくなってしまうのではないかと不安だ」と、半泣きで話をしたんです。
するとその人から「大丈夫だから。周りの人のことは気にせずに、今やっている領域にしがみついてみて。」と言われました。


それからはそこまでの数年を活かせる分野を意識して大学の非常勤講師の職などにエントリーしました。そうしているうちに「刑事施設の再犯防止のためのプログラムを提供する人を捜しているので、紹介して欲しい」というお話がきたんです。もちろん「私が行ってもいいですか?」と手をあげました。
新幹線で行かなくてはならない場所でしたが、週2日、5年以上勤務させていただきました。プログラム内容の検討やプログラム提供者の研修を担当させていただき、自分自身の経験が必ず意味あるものになると思えました。
今でもこの施設やいくつかの施設には、スーパーバイザーという形で関わっているんです。
あのとき背中を押していただき、潔くしがみついていこうと思えたこと、「自分を信じて大丈夫なんだ」という良い“思い込み”をさせてもらったこと、あの時選んだことを今も継続してやっている。これがあのときの壁を乗り越えたということなのかなと思います。
これまでで一番忘れられない仕事のエピソードをお聞かせください。

国内でのイベントでの出会いも含めて、海外の先生方との交流で得られる影響が多い気がします。
初めて国際シンポジウムで登壇したときの緊張は忘れられません。でも、「アイカーーー、アイカーー」と仲良くしてくれる先生や、娘のようにかわいがってくれる先生がいたんです。

初めて性犯罪について国際シンポジウムで登壇した緊張の日
最近ではわざわざ日本に来てワークショップをしてくれたり。なんだか、“いっちょうまえ”になったご機嫌な妄想をさせてくれて、次に向かうパワーをもらえているように思います。
先日は暴力リスクの保護要因評価ガイドライン(SAPROF)という、オランダで開発されたアセスメントツールのワークショップを日本でさせていただきました。通訳に関わらせていただいたこともあり、ご縁をぐいぐいたぐりよせ、招聘することができたのは大きな喜びです。
オランダから招聘した先生を交えて食事をしたりお酒を飲みに行ったり、そんな時間が何より宝物で忘れられない思い出になっています。
自分が海外に行くときもそうですが、メールでのやりとりを重ねてやっとその日を迎えたときのワクワクを感じると、一気にそこまでの疲れが吹き飛びますね。

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