人口減少時代に2万5千人増。子育て世帯と歩んだ流山市の大胆なまちづくり

人口減少時代に2万5千人増。子育て世帯と歩んだ流山市の大胆なまちづくり

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市民の自己実現を応援するために、「超実践型創業スクール」を開校
—流山市が目指す「共働きの子育て世帯」をメインターゲットにしたまちづくりは、いまの日本の状況やニーズにも合っていると思います。そのなかでも特に注目の取り組みが、働く女性やママに向けた「女性向け超実践型創業スクール」です。すでに卒業生がカフェを開業したり、イラストレーターやカメラマンとして独立するなど活躍中だそうですね。

井崎:はい。こういった取り組みの必要性を感じたきっかけには、私がアメリカから帰国して流山に住み始めた当時、保育園に子どもを預けることができず、妻が仕事を諦めるという経験がありました。30年前の日本では当たり前のことだったかもしれませんが、「日本ではどうして夫婦で働きながら子育てができないのか……!?」と大きな疑問を感じる出来事でした。

残念ながらいまの若い子育て世帯でも、さまざまな理由から共働きを諦めて退職する女性が多いと聞きます。ところが子育てが落ち着いて復職を考えたとき、現実問題として以前と同じような条件の再就職先を探すのはかなり困難です。

であるなら、自分のスキルを活かしてビジネスを起こすのも有効ではないかと考え、創業のノウハウを学ぶ場所を作ろうと思いました。市民の自己実現を応援することも、行政の仕事のひとつですから。

—自分の暮らす街でビジネスを起こすことができれば、通勤時間などの問題からも解放されて、子育てとの両立もしやすそうですね。

井崎:そうですね。あくまでも私たち行政はサポート役であり、ご本人の力や意欲が大切ですが、流山市で独立開業する方が増えれば、ビジネスのノウハウやネットワークも広がっていき、そこで他のお母さんたちが子育てをしながら働くことも可能になるでしょう。

流山市は市民のみなさんが創意工夫して、さまざまな独自の活動を続けてこられた土壌があるので、そういう土地柄にも合った取り組みではないかと感じています。行政として市民の方をサポートしつつ、「『働きながら子育てができる』環境づくり」と「『子育てしながら働ける』環境づくり」の両方を推進していきたいですね。

流山市風景 流山花火大会

流山市風景 ヂンガラ餅行事
80%の市民が「住み続けたい」と答えた、流山市の底力
—そういった井崎市長の思い切った取り組みが、流山市を魅力的な街へと変貌させ、少子高齢化の時代における人口増という奇跡的な成果につながっていると思います。流山市の現状についてはどう捉えていらっしゃいますか?

井崎:ひと昔前までは、「どこに住んでいますか」と訊かれ、「柏の近く」「松戸の先」などと答える「隠れ流山市民」が多かったのですが(苦笑)、2016年の調査では「住み続けたい市民」の割合も80%まで増え、転入者の66%が「流山市に住みたい」と流山市を指名して住宅を賃貸・購入するなど、流山市への信頼度の高まりを感じています。

—マーケティングだけでなく、街のブランディングも成功しつつあるということですね。

井崎:都心に比べて流山市は自然も多く、地価も手頃ですし、同じ価格でより広い家を手に入れられます。そして子育て・教育環境の充実だけでなく、一年を通して行われるさまざまなイベントでは、子どもや親子で楽しめる企画を常に盛り込み、街全体で「子どもの城」になることを目指しています。

ただ、人口増は実現しましたが、日本全体の少子高齢化の巨大な波を完全にかわすことはできません。市の人口推計によれば、流山市は9年後に人口のピークがきます。それに備えるためにも、人口の減らない街、減りにくい街を念頭に置いたブランディング戦略を着実に展開する段階に入ってきたと認識しています。

流山市風景 保育園の子どもたち
—それらを踏まえて、今後の課題と感じていることはなんでしょうか?

井崎:さらなる子育て環境と教育環境の充実ですね。保育園はもとより、学童保育所や小学校、中学校、公園などを含めて、流山市を選んでくださったみなさんに満足していただける量の整備と質の向上を目指します。先ほど申し上げたように子どもの人口が急増していますので、計画的に対応策を実現していきたいですね。
いま日本の地方自治体は、10数年前の流山市と同じような危機を抱えている
—いま日本の地方自治体は、10数年前の流山市と同じような課題を抱え、危機に直面しているところばかりではないかと思います。

井崎:まったくその通りだと思います。そして問題を打開するために、数多くの自治体が地域活性化のために大型公共施設の建設などに取り組まれてきました。しかし多くは収支が合わなかったり、維持管理費が財政をさらに圧迫して疲弊させている状況でしょう?

私には、それらの取り組みが地域活性化どころか、莫大な予算を使って自らの墓標を建てているようにすら思えます。さらにいえば行政のトップがビジョンを示さずに、市民のニーズに場当たり的に応えるだけの市政をしているうちは改善が難しいですね。都市計画も市政のビジョンも、20年後、30年後を構想して具現化していくことが大切。4年に一度の選挙に勝つためだけの政策ではなく、その地域の可能性を最大限に引き出すことに、市長は真剣に挑戦すべきだと思います。

—なるほど。これからの子育て世代の暮らしや働き方はどう変えていくのがベストだと考えていらっしゃいますか?

井崎:一番問題に感じているのは、大都市圏に暮らしていて、通勤時間が片道1時間以上かかり、長時間労働が強いられる子育て世帯。特に女性への負担が非常に重くなります。先日「日経DUAL」で「共働きで子育てしやすい企業2016」ランキングが発表されましたが、こういった情報を就活中の女子学生だけでなく、男子学生も意識し始めると、企業や社会も変わっていくでしょう。そういう時代を早く創らなければいけません。

さらに2016年には、厚生労働省が保育園予約制の検討を始めましたが、保育園の入園可否が早くわかるようになるだけで、母親の産休明けから入園までの期間に、子どもを預けられる体制は整っていません。そこで産休を延長するなどのサポートを行う企業も出てきてほしいと思います。

—井崎市長が考える、流山市のまちづくりの推進力は何だと考えられますか?

井崎:私の好きな言葉に、上杉鷹山(江戸時代中期の大名、出羽国米沢藩の第9代藩主)の「為せば成る 為さねば成らぬ何事も 成らぬは人の為さぬなりけり」があります。

政治の素人だった私が、これまでの市長や行政が示さなかったビジョンに基づき、経営戦略を展開していくことで、成り行きではたどり着けない地点に近づきつつある。これは、市民のみなさんの知恵と力でまちづくりを進めてきた成果だと考えます。流山市の一番の資源は、意識も意欲も高い市民です。これからも市民の知恵と力を引き出して、「住み続ける価値の高い街」を具体的な形にしていきたいと考えています。

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