共働き家庭のマネジメント術①結局「妻が家事担当」になるのはなぜ!?

共働き家庭のマネジメント術①結局「妻が家事担当」になるのはなぜ!?

ファザーリング・ジャパン理事 林田香織さんの連載コラムが始まります。共働き夫婦が協力して子育てするためのヒントを探ります。

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いま日本では、女性の社会進出や雇用不安などによって、共働きで子育てをする夫婦が増加。あるメディアは「共働き子育てしやすい企業」を発表するなど、企業側も積極的に短時間勤務や、男性育休を推進しています。とはいえ、仕事に育児、家事と、多忙な生活を送る夫婦には課題も多く、「喧嘩が絶えない」「コミュニケーション不足」だと嘆く声は、男女ともに聞こえてきます。家庭をひとつの「チーム」と考えたとき、夫婦でどうマネジメントしていくのが良いのでしょうか。

そこで、NPO法人ファザーリング・ジャパン(「父親であることを楽しもう」をコンセプトに全国で父親支援をしている団体)理事の林田香織さんに「共働き家庭のマネジメント術(全5回)」について連載していただきます。

初回は日本の家庭に根深く浸透する「妻=主担当、夫=お手伝い」の要因と、現代の共働き夫婦が抱える問題を紐解いていきます。良きパートナーになるには、相互補完によってサポートしあえる夫婦への「バージョンアップ」がカギ!



撮影:川上秋レミイ 撮影協力:くまさん家 https://www.kumasanchi-shimokita.com/
「ワンオペ育児」「イクメンブルー」。いま、夫婦の危機を表す言葉があふれている
育児世代のなかで話題のキーワード、「ワンオペ育児」。これは、24時間営業のファストフード店で従業員一人がすべての業務を行う「ワンオペレーション」が語源で、夫婦のどちらかが家事・育児をほぼ一人で担っている状態のことを表しています。いまの日本の家庭では、家事・育児の大半を女性が担うという、「ママのワンオペ状態」が圧倒的に多いのが現状です。

世の中に「イクメン」という言葉が定着し、家事・育児に積極的な男性が増えたことでママの負担は軽くなったように思えます。でも実際は、女性活躍推進によって、働くママは出産・子育て・キャリアアップなど、いろいろな面から「輝く女性」を求められ、逆に負担が重くなっているようにも感じます。

「夫婦間のモラハラ」「イクメンブルー」「ブラック夫」「帰宅恐怖症」など、夫婦の危機を表す言葉がメディアでは目立っています。前述の「ママのワンオペ状態」も含め、このような事態はなぜ起きるのか。夫が能動的な家事戦力者になるにはどうすればいいのでしょうか? そこで重要になってくるのが「パートナーシップとしての夫婦のあり方」です。

本連載では、夫婦や家族を笑顔にする「次世代型夫婦」へとバージョンアップする方法をポジティブに考えてみるのが目的です。私も、高1、中2、小3の三人の男児を育てる現役子育て世代。片働きから共働きにシフトして10年、夫婦で数々のバトルを繰り返し、幾多の危機を乗り越え、やっとこさいまに至ります。今回は私の体験を織り交ぜながら、「現代の子育て夫婦が抱える課題と現状」を考えてみたいと思います。

諦めずに夫婦バトルを繰り広げた結果、いまでは夫も「ワンオペ育児」ができるまでに!
私は結婚をした翌年に長男を出産し、それと同時に離職しました。その後、夫の転勤に伴い日本とアメリカを数年毎に行ったり来たりし、在米中に次男、三男を出産。帰国後、フリーランスの研修講師として7年ぶりに社会復帰をしました。しかし、離職中に家庭内で構築された「家事の完全役割分業制」を変えるのは至難の技で、仕事と家庭の両立をめぐっては九州男児の夫とバトルを繰り返す日々が続きました。そんな危機をどうにか乗り越え、いまでは育ち盛り三兄弟の膨大な食費と教育費を稼ぐため、夫婦でタッグを組んで仕事に子育てに大奮闘しています。

バトルの成果(?)か、夫は相変わらずの頑固っぷりをキープしつつも、「ワンオペ育児(家事)」の対応が可能になり、頼れる夫にバージョンアップ。いまでは家庭をともに助けあう大事な戦友です。

私の仕事は主に、企業の両立支援セミナーや配偶者同伴セミナーの講師のほか、自治体が主催するプレパパママ講座やパパママスクールでの登壇などです。また、NPO法人ファザーリング・ジャパンの理事として、パパたちの声を聞く機会も多くあります。「働く環境」や「子育ての環境」がどうしたら良くなるかを当事者である夫婦のみなさんと一緒に悩み、考えながら活動を続けています。
共働きなのに妻が家事担当になる原因は、「時間的余裕」が欠如した現代社会にあり
「仕事も家庭も夫婦二人で、が当たり前」。こう考える夫婦が近年、確実に増えているのを実感しています。そして、ともに家事育児をすることを「夫婦協業」と言います。しかし職場環境が整わないなどの理由で、「夫婦協業」への行動が叶わず、お互いの家事・育児を諦めている夫婦もまだまだ多く見受けられます。

「夫婦協業」を妨げているのは、夫婦間の「収入格差」や、性別役割で判断する「分業意識」などがありますが、最大の要因は「夫婦間の時間的余裕度の差」です。

2015年度の男性の育休取得率は2.65%と過去最高を記録しましたが、取得期間は半数以上が5日未満。一方の女性は、取得率81.5%で、取得期間も10か月以上が65.3%。また、短時間勤務制度を利用しているのも圧倒的に女性が多く、一方の男性は30〜40代の6人に1人が週60時間以上の長時間労働をしています。

つまり、家にいる時間、子どもと関わる時間が圧倒的に多い妻が、家事・育児の役割を担うのが自然と位置づけられてしまい、気づいたときには「妻=主担当、夫=お手伝い」の役割分業体制が構築されてしまうのです。一度できあがってしまった体制を再構築するのは難しく、わが家のように夫婦バトルを繰り返しながら、子どもの成長を待つしか方法はないと諦めてしまいがちです。

内閣府の調査では、夫の帰宅時間が22時以降の場合、妻は、夫が帰宅後も「気が張り詰めた状態である」と感じており、それが妻のイライラの原因となっているとされています。夫の帰宅時間が遅いせいで、妻はワンオペ育児にイライラ。夫は長時間労働の末に帰宅した後も妻からのプレッシャーでイライラ。このイライラのぶつかり合いも夫婦の不和の原因。

理想は「共育て」なのに、現実は「孤育て」。時間的な容量オーバーが原因で精神的にも容量オーバー。アップデート失敗で夫婦関係がフリーズしているのが現代の夫婦。悪いのは夫でも妻でもなく、この時間的余裕度の欠如なのです。
働き方改革ブームのいまが「家庭内改革」のとき! サポートしあえる次世代型夫婦を目指す
いまの夫婦の現状が、「ワンオペ育児」などのさまざまな「言葉」となって議論されることは決して悪いことではないと思っています。これまで日本の夫婦が蓋をしていた「モヤモヤ」をやっと吐き出し始めた証拠だからです。いまの子どもたちが大人になる頃には、性別も年齢も関係なく、すべての人が自分の働き方や生き方を選べるような日本社会にしていきたい。それを実現できるかどうかは変革期にいる私たちにかかっている気がします。

立場が違うのですから、夫も妻もいろいろ思うところはあります。相手を責めて、分業制のまま変わらないでいるほうがある意味、楽かもしれません。でも、「パパもママもワンオペ対応可能で、相互補完的にサポートしあえる次世代型夫婦」へのバージョンアップは考え方や行動次第で可能なのです。

では、どのようにバージョンアップしたら良いのか。職場環境が改善され、すべての人が定時退社で夫婦の「時間的余裕度の格差」が埋まってしまえばそれで済むのですが、なかなかそうはいきませんよね。社会では「働き方改革」が推進されていますが、私たちもいまの時代に合わせて「家庭内改革」を推進していく必要があります。次回は、いますぐ実践できる具体案をお話したいと思います。
プロフィール

林田香織(はやしだ かおり)
NPO法人ファザーリング・ジャパン理事。NPO法人コヂカラ・ニッポン理事。ロジカル・ペアレンティングLLP代表。お茶の水女子大学大学院修士(家族社会学)。日米の教育機関において、長年にわたり日本語教育(高校・大学・ビジネスマン向け)に従事。8年の在米期間を経て、2008年帰国。自治体、企業において、両立支援セミナー、配偶者同伴セミナー、夫婦向けコミュニケーションセミナー、管理職向けイクボスセミナーなどの講師を多数務める。プライベートでは九州男児の妻、3人の男の子のママ。
http://fathering.jp/

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