癒しの絵本作家・葉祥明。「生きることの喜び」を考える4作品をピックアップ

癒しの絵本作家・葉祥明。「生きることの喜び」を考える4作品をピックアップ

2018年11月5日公開

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1972年に絵本作家としてデビューし、以降「ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞」「日本絵本賞読者賞」などを受賞。北鎌倉や、故郷の熊本県に自身の美術館が設立されるなど、多くの読者に愛されている絵本作家・葉祥明(よう しょうめい)さん。「戦争」「身近な存在の死」「多様性」などの難しいテーマを題材に、穏やかな文体と、優しく癒してくれるようなタッチのイラストを通して、「生きることの喜びや幸せ」を伝え続けています。

今回は、そんな葉祥明さんが手がけた4作品をセゾン社員が親子でレビューしました。それぞれ、葉祥明さんからのメッセージをどのように受け取ったのでしょうか?
「なぜ、地雷はすぐに撤去できないの?」。うさぎのサニーが教える、世界の現実
文:桑原 由紀恵(クレディセゾン 関西支社)
8歳の男の子のママ
「地雷って何?」「どこにあって、どんな被害があるの?」「なぜすぐ撤去できないの?」。みなさんは、子どもからそんな質問をされたら、どう答えますか? この絵本は、そんな問いに対して、うさぎのサニーが「地雷とは、となりの国から攻めて来られないようにするための爆弾なの」「地雷は土のなかにあって、道路や橋にも埋められているの」など、わかりやすい言葉で地雷について教えてくれる絵本です。

私は子どものころ、広島で育ちました。当時、私の通っていた小学校では、戦争について学ぶ平和学習が毎年ありました。第二次世界大戦中は、広島や長崎の原子爆弾投下だけでなく、日本各地で空襲など悲しいできごとがあったことを学びました。そして73年前に終戦を迎え、私たちはいま、日常のなかで地雷などの爆弾を意識することなく、平和に過ごしています。私は、小学生の息子とともに、戦争と平和について話せる良い機会だと思い、この絵本を選びました。

この絵本を読んで、息子は、世界には地雷という爆弾があることを初めて知ったようでした。さらに、戦争が終わっていても、探知が難しく撤去できていない地雷があり、いまだ恐怖に怯えながら生活している人や、残された地雷に気づかず、被害にあってしまった人がいることに驚いていました。また、こういった悲しい現実を解決するには、たくさんの資金が必要だということも知り、「なにか助けられることはないのかな?」と息子と一緒に考えていました。

この絵本を購入すると、その売上金が10平方メートルの土地に埋まった地雷を撤去するための資金に活用されるそうです。私たちが絵本を読むことで、世界を救うお手伝いができていることに対して、息子は「不思議やけど、良いことしてるってことなんやな」 とうれしそうにつぶやいていました。子どもと一緒に平和とは何かを考えられて、世界を救うお手伝いもできる。多くの方に、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
人と違っていても良い。オレンジ色のペンギンが教えてくれる「個性を受け入れることの大切さ」

『オレンジいろのペンギン』

1,512
文・絵:葉祥明
出版社:佼成出版社
文:堀田 法子(クレディセゾン 東京支社)
6歳の男の子のママ
この絵本の主人公は、ジェイムズという、鮮やかなオレンジ色をした南極に住むペンギンです。

白と黒と灰色のペンギンたちのなかで、なぜジェイムズだけがオレンジなのか、その理由はわかりません。しかしあるとき、南極にブリザードがやってきました。みんなが凍えるなか、ジェイムズが体から光を発し、みんなを温めます。じつは、ジェイムズのオレンジ色は、お日さまのオレンジ色で……。そんな、ちょっぴり周りのペンギンとは違うジェイムズの話です。

いま世間では、「個性を尊重することが大事」などと言われていますが、実際は、みんなと違うと、つい不安感や疎外感を持ってしまいがちです。でも本書では、誰もそんなネガティブな感情は持っていません。周りのペンギンやジェイムズ自身がジェイムズの個性を受け入れている様子が描かれています。彼らのあたたかなやりとりは、異なる個性を受け入れ、愛することの大切さを私たちに教えてくれます。

この本を読み終えた6歳の息子に感想を聞いてみると、「誰にでも役割があるってことだね」と言っていました。南極にブリザードがやってきたときのジェイムズがとった行動が印象に残ったのでしょう。息子が自ら絵本に込められたメッセージを読み取ってくれたのも、親として読ませて良かったと思いました。

自分の個性を受け入れることは自信につながり、また、他人の個性を受け入れることは調和につながります。その大切さを子どもに伝えたいときに、ぜひ読んでほしい一冊です。
「戦争」ってなんだろう? 普通の暮らしの尊さを学べる作品

『あの夏の日』

1,728
文・絵:葉祥明
出版社:自由国民社
文:若林 孝子(クレディセゾン 東京支社)
9歳の男の子のママ
この絵本には、1945年(昭和20年)8月9日、長崎に原子爆弾が投下された日の様子が、「ナガサキ」という街の視点で描かれています。原子爆弾が投下され、これまでの平和な「ナガサキ」の生活が一変します。その様子から、戦争の恐ろしさが伝わってきますが、葉祥明さんの優しい絵によって、その生々しさは軽減されています。

現代を生きている私たちにとって、戦争は、どこか他人ごとに思えてしまうこともあります。そして、その話を伝えようとすると目を背けてしまう風潮さえあるように私は感じていました。当然ながら、9歳の息子にとっても「戦争」は、ゲームや漫画の世界の出来事でしかありません。ましてや、原爆の恐ろしさなど、想像がつくはずもありません。そこで私は、息子に命の尊さを知ってもらいたく、この絵本を選びました。

まず私は、息子に「これはね、日本で本当に起きた出来事だよ」と言ってから、読み聞かせを始めました。すべてを焼き尽くされる町、「お水をください」と言いながら無残に亡くなっていく人々……。最後まで読み終え、息子に感想を聞くと、辛そうな様子で「怖い話だからもうやめて!」と。息子にとって戦争とは、「理解できない、また理解したくないこと」だったようです。

ただ、この本を読み聞かせたことで、息子に戦争の恐ろしさや、いまの日々の尊さを少しでも知ってもらえたように思います。また、子どもたちが戦争に対して他人ごとにならないよう、このような絵本を通して「戦争」について学ぶ場をつくってあげることも大切だと思いました。
愛する存在が亡くなったら? 身近な「命」の大切さを気づかせてくれる絵本

『虹の橋―Rainbow Bridge』

1,512
訳・絵:葉祥明
出版社:佼成出版社
文:中西 麻衣(クレディセゾン 神奈川支社)
12歳の男の子のママ
家族同然で、いつも一緒にいるのが当たり前だったペットが突然亡くなってしまったらそれほど悲しいことはありません。本書のストーリーは、亡くなったペットの魂が天国に向かう途中、虹の橋のそばにある楽園で、もとの飼い主を待っているというもの。飼い主が亡くなったとき、この場所でペットと再開し、ともに虹の橋を渡って天国に行くそうです。

私自身も幼少期に、家族のように飼っていたネコとの悲しい別れを経験し、命を大切にすることを学びました。ときには兄妹のようにじゃれあったり、一緒にお風呂に入ったり、一緒にベッドに入って眠ったり。「今日はお姉ちゃんが一緒に寝る」「ずるい、今日は私!」と、3歳年下の妹とネコを取り合って喧嘩をしたのも、ついこのあいだのように思い出されます。

そんな家族の一員だったネコは18年生き、最期は苦しむこともなく、眠るようにすーっと亡くなりました。ネコの18歳は、人間の年齢でいえば100歳に近い大往生。しかし、家族の中心であったペットを失った喪失感は、しばらくのあいだ私たち家族から消えませんでした。

この本では、「またペットに会いたい」という強い思いがあれば、「虹の橋」のそばにある楽園で再会できるのだといいます。私は、この絵本を読んで、昔飼っていたネコのように、いま当たり前のように身近にいる大切な人も、いずれ亡くなるときがくる。だから、いま身近にいる人を大切にして、日々過ごすことが大事だと思いました。また、ペットを飼った経験がない息子にも読んでもらったところ、「身近な存在を大事にすることが大切なんだね」 と言っていました。

ペットを愛する方、ペットロスに悩む方はもちろん、多くの方に読んでもらいたい一冊です。きっと、大切な存在が身近にいることの大切さに気づくと思います。
今回紹介した4冊が取り上げたテーマは、どれも難しく、大人でもなかなか答えが出ないものばかりです。しかし、かわいいウサギやペンギンなどの主人公と一緒に考えてみることで、自分なりの答えを見つけるきっかけをつくることができるかもしれません。みなさんも、「戦争」や「多様性」「生きる喜びや幸せ」について、葉祥明さんの絵本を通して親子で考えてみてはいかがでしょう?

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