不登校は問題行動? 市と連携した日本初のフリースクール校長の白井智子に訊く

不登校は問題行動? 市と連携した日本初のフリースクール校長の白井智子に訊く

2017年5月11日公開

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「うちの子どもが学校へ行けなくなった……!」。子どもを持つご家庭で、不登校は他人事とはいえない問題ではないでしょうか。しかし、どうして子どもは学校に行けなくなってしまうのでしょう? いじめや人間関係、発達障害、先生との相性など、その理由はさまざまで、子どもや家庭、学校のせいだと単純に決めつけることはできません。

現在、不登校を理由とした長期欠席の生徒は、全国で約17万人いるとされています(文部科学省 平成27年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」)。その要因の一つとして挙げられる、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠陥 / 多動性障害(ADHD)といった、子どもの「発達障害」についても、当事者になって初めて正しい知識を得るという方が多いようです。

そんななか、「あらゆる子どものいいところを見つけて伸ばす」をミッションとして、2003年に大阪府池田市に設立された、日本初の公設民営型(国や地方公共団体が施設を設置し、運営は民間が行なうこと)のフリースクール「スマイルファクトリー」が、いま大きな注目を集めています。その校長を務める白井智子さんに、不登校や発達障害にどう向かい合えばいいのか、新しい学校のかたちとはなにか、ご意見をうかがいました。

取材・文:竹内厚 撮影:佐藤佑樹
プロフィール

白井智子(しらい ともこ)
スマイルファクトリー校長。東京大学法学部卒業後、松下政経塾に入塾して学校設立を決意。20代で沖縄に開校したフリースクールの立ち上げに参加、校長を2年半務める。2003年、大阪府池田市より委託を受けて、市立山の家にスマイルファクトリーを開設。施設の老朽化にともなって、2015年秋から閉校になった同市の旧・伏尾台小学校へ移転。
http://www.npotoybox.jp/toybox/projects/smile-factory/
得意なことと不得意なことの差が激しい「デコボコ」は、必ずしも悪いことではない。
―子どもが学校に行けなくなる理由について、白井さんはどのように考えていますか?

白井:私がスマイルファクトリーを立ち上げた2003年とは、かなり様相が変化してきましたね。その頃は「どうして学校に行けなくなったのかわからない」というのが、不登校理由として一番多かったんです。

ですから、私たちの活動に対して「そんな怠けてる子やわがままな子を、税金を使って助ける理由があるのか」と言われることもありました。学校や親御さんも、理由がわからないなかでお互いを責め合うことが多かったと思います。

―学校に行けないのではなく、さぼっているという認識。いまでもそう思われている方がいるかもしれません。

白井:不登校にもさまざまな原因がありますが、特に長期化するものについては自閉症やアスペルガー症候群、注意欠陥 / 多動性障害(ADHD)といった発達障害が理由になっていることが多いんです。10数年前に比べ、いまは「発達障害」という言葉も浸透してきましたので、ちょっとおかしいなと思ったら検査を受けられる方も増えています。ただ、発達障害についての誤解はまだ根強くありますね。

―発達障害という言葉の広がりとは別に、その内実まではきちんと伝わっていないと。

白井:「発達障害の子どもはおかしい」と誤解されているところもあるのではないかと思います。だから私たちは、あまり発達障害という言葉は使わずに、「デコボコがある」と言っています。つまり、得意なことと不得意なことの差がとても激しいということ。そして、それは必ずしも悪いことではないんですね。

―まさにデコボコ。エジソンやアインシュタインも子どもの頃は発達障害だったと言われていますね。

白井:そうです。こだわりが強いとか、落ち着いて座っていられないとか、いろんなタイプの発達障害がありますけど、人には何かしらの傾向があるので、その強弱の違いなんですね。むしろ、どの傾向にも当てはまらない人のほうがおかしいくらいですよ(笑)。その個性が生きていくうえで支障があるレベルになってくると、発達障害という診断になります。
義務教育のなかで楽しくできる人もいる。でも、そこからはみ出したときに、見捨ててはいけない。
―誰しもその傾向は持っているもので、程度の違いなんですね。

白井:2012年度の文部科学省の調査では、小中学生の6.5%が発達障害の可能性があるとされています。40人学級でしたら、クラスに2~3人はいることになりますけど、勉強ができる子って本当は発達障害でも見逃されがちなんです。だから、実際はもう少し高い割合だと考えています。

―発達障害で高学歴だって当たり前にあること。

白井:もちろんです。スマイルファクトリーに対するよくある誤解として、「こういうフリースクールに通って、この子の将来はどうなるんでしょう?」って訊かれることがあります。だけど、「いや、まったく普通の子と違いありませんから」って答えるしかなくて。

一度、ほかの人と同じレールからは外れるかもしれないですけど、いい大学へ進学したり、就職して私より稼いでる子もたくさんいます(笑)。そうそう、この間は昔の生徒が学校に寄付をしてくれたんですよ。

スマイルファクトリーでのスクーリング。昼休みには小中高生が学年を超えて交流を深める

生徒たちが自ら作る「スマイル新聞」には卒業生からのコメントも
―それはうれしい話ですね。

白井:ほんとに。スマイルファクトリーに学習支援のボランティアとして来てくれる子たちのなかには、引きこもりの経験があるけど、良い大学を卒業した子だってたくさんいるんですね。相談者のなかには、ノーベル賞に準じるような研究をしていたけど、コミュニケーションにはずっと苦労していたとか、そうした人が少なくありません。

もちろん、義務教育のなかで楽しく勉強できる子もいます。でも、そこからはみ出たときに、見捨ててはいけない。能力にデコボコがあるからこそ、ほかの子にはない才能が見つかる場合もあるんです。不登校によって、子どもが自信をなくしてせっかくの才能が見つかる機会を損失するのを止めていくためには、「誰もが不登校という状況になり得るんだ」という観点をみんなに持ってもらえたらいいのかなと思います。

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