不登校は問題行動? 市と連携した日本初のフリースクール校長の白井智子に訊く

不登校は問題行動? 市と連携した日本初のフリースクール校長の白井智子に訊く

2017年5月11日公開

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「学校に通わない」という選択肢が法律でも認められ、スマイルファクトリーが先進事例になったんです。
―スマイルファクトリーでは、在籍校と連携した不登校生のためのスクーリングのほか、訪問相談や個別指導、学習支援など、子どもたち一人ひとりに合わせたサポートを行っていらっしゃいます。こういった学校のあり方はとてもめずらしいことなんですよね。

白井:スマイルファクトリーを開校して以来、池田市や池田市教育委員会と連携しつつ、「変わったことをやっている異端児」として、教育現場では受け止められてきたんですけども、ここにきて「先進事例」として注目を集めているんです。

―何か大きな契機がありましたか?

白井:私も法律を作る過程で関わらせてもらいましたけど、不登校の子を支援する「教育機会確保法」が2016年12月に成立して、2017年2月に施行されました。

これまで、不登校といえば問題行動であって、あり得ないことだとされてきた。そうではなくて、学校に通わない選択肢もあるということ、子どもの状況に対して学校や教育機関が対応しきれていないということを、国がはっきりと認めたんです。海外に比べると日本は遅れていましたが、やっとここまで来たな、と感じています。

―ものすごく画期的なことですよね。

白井:そうなんです。法律としてはまだ理念法(基本理念を定め、具体的な規制や罰則については特に規定していない法律)の側面が強いので、どう運用していくのかはこれからの課題ですけど、学校を休んでもいいということを公にも言えるようになったのは、大きな一歩です。

これまで教育に関する法律はすべて、学校に毎日通っていることを前提にして組み立てられていました。だから、学校に籍は置いているけど、フリースクールのような別の場所に通っている子に対して、先生たちもどう関わったらいいのかわからなかったんです。

―学校を休む必要のある子がいるということが、ようやく認められたと。

白井:そこでこれからは、学校に通えない子たちに対する多様な教育の場を国や自治体が整備していくことになったわけですけど、今度はどうやって作っていけばいいのかがわからない。これまでの現場では、科学的なエビデンスの蓄積はほとんどありませんから。そこで、13年前から行政と連携してやってきたスマイルファクトリーに、先進事例として国からも教育関係者からも一気にスポットライトが当たってきているような状況です。

―異端児が、気づいたらトップランナーに(笑)。

白井:そうなんです(笑)。ですから、いままさに大変革の真っ最中。私もフリースクール等検討会議や中央教育審議会などに呼ばれて、いろんな議論を重ねているところです。スマイルファクトリーの生徒たちも、「やっとわかってもらえた」と状況の変化を肌で感じているみたいですね。
行政と連携した新しい学校のかたちを、今後はいろんな地域に広げていく必要がありますね。
―不登校というと、「先生や学校が悪い」と、かんたんに原因を求めがちですが、それもまた違うんですよね。

白井:もちろん違います。たとえばスマイルファクトリーで「いじめ」が発生したら、被害者と加害者を完全な個別対応に切り替えます。問題が解決するまでは加害者の子の登下校時間や過ごす場所をほかの子たちと変えて、みんなにも会わせない。だけど、原則的に学校へは来てもらう。被害者を守りながら加害者のケアを丁寧に続け、きちんと話し合うことで、「トラブルって乗り越えられるんだ」という意識を作っていくんです。

このように、スマイルファクトリーではすべての子どもたちにとって安全に過ごせる場所になることを最優先して、徹底した個別対応を行っていますが、いまの学校にはそうした対応をする時間、人員、予算、空間のすべてが足りてないのが現状です。

―やるべきことはわかっていてもそんな余力がない。

白井:だから、学校の先生にうちのやり方をお話すると、ただただ「うらやましい」と言われますね。でも、子どもの状況への理解がもう少しあれば不登校にならなかったかもというケースもたくさんあるので、そこはもっと私たちから学校の先生に伝えていくべきことがあると思っています。

まずは落ちこぼさないこと。そのうえで、どうしても学校へ行けなくなった子が出てきたときに、ちゃんと学びの機会を確保するセーフティネットとなる場所を作っていくことが必要です。

取材当日の1日のスケジュール。午前中は自主勉強、午後は小中学生と高校生でわかれて体育と美術を行なう

午前中の自主勉強の時間には、一人ひとりの学習進度やニーズに合わせて選んだ学習教材を使って勉強。机の配置も自由
―スマイルファクトリーはそういったセーフティネットとして大きな成果を挙げていると思いますが、やはり行政と連携したことが大きいのでしょうか。

白井:行政と連携することで大きいのは、スマイルファクトリーと学校を行ったり来たりできることなんです。小中学生はこのフリースクールでの出席日数を在籍校での出席日数に換算することができますし、池田市内の小中学生は授業料が無償です。

だから、「元気になったので、明日から学校行ってみようかな」って気軽に在籍校にも通えるんですよ。なぜなら、やっぱり行けなくなったとしても、いつでもうちに戻ってこれるから。日中は在籍校へ行って、放課後だけうちへ通ってきて愚痴を言って帰ったりとか、いろんな通い方ができるんですね。

イベントなどが催される大教室。飾りつけは生徒と先生でいっしょに作ったもの
―まさに学校と家庭の間にある施設ですね。

白井:学校の先生がスマイルファクトリーに子どもの様子を見に来ることもあります。家庭や学校では先生と会えないという子でも、ここでなら会っても大丈夫な子が多いんです。子どもたちにとってここは安全地帯だから。

いまはスマイルファクトリーに通うために、池田市に引っ越してきてくれるご家族が多いのですが、こういった行政と連携した新しい学校のかたちを、今後はいろんな地域に広げていく必要があると思っています。

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