理想のパパより、笑顔のパパになれ。「イクメンブルー」の処方箋

理想のパパより、笑顔のパパになれ。「イクメンブルー」の処方箋

安藤哲也『「パパは大変」が「面白い!」に変わる本』/ 2017年9月21日公開

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文:山之内 徹(CHIENOWA)
「俺、やってるつもりなのになぁ……」。仕事と家庭の両立に悩むすべてのパパたちへ
みなさんは「イクメンブルー」という言葉をご存知でしょうか。現代の日本のパパたちは家事や育児への参加を当たり前のものとして求められるようになった一方、日本企業には相変わらず長時間労働の文化が残っています。そんななか、仕事と家庭の両立に悩み、メンタル不調に陥るパパたちがいることがわかってきたのです。

この本の著者の安藤哲也さんは、「子どもが生まれて父親になったら、仕事も育児も両立して楽しんでいきたい」という思いから、2006年にNPO法人ファザーリング・ジャパンを設立しました。「良い父親ではなく、笑っている父親になろう」をメッセージに、講演会や父親学級、男性の育休促進など、さまざまなプロジェクトを通じてパパの子育てを支援しています。本書では、育児をするパパたちを取り巻く現代の問題として「イクメンブルー」を取り上げ、その解決法に迫っています。

昨今の「イクメン」ブームもあり、育児に積極的に関わる男性が「ステキ」「カッコイイ」という新たな価値観が生まれ、世の中の意識が大きく変化してきていることを、私も一人の父親として感じています。そんな環境のなか、完璧な「イクメン」であることを周囲に求められ、「俺、やってるつもりなのになぁ……」なんて、ちょっと疲れているパパに、本書はぜひ読んでほしい一冊です。
理想のパパになりたいけどなれない。現代病「イクメンブルー」の原因とは?
本書によると、「イクメンブルー」の大きな要因の一つは「産後の夫婦関係の変化」。「子どもが生まれてから妻の態度が変わった」と感じたことがあるパパは少なくないと思います。実際に女性は出産後、夫への愛情が急降下し、子どもへの愛情が急上昇するといわれており、出産を契機に夫婦仲が冷え込む状況は「産後クライシス」と呼ばれています。パパは忙しい仕事の合間を縫って、慣れない育児を必死にがんばっているつもりなのに、妻はなぜか自分に冷たい……そんな状況が続けば、「イクメンブルー」に陥ってしまうのも無理はありません。

娘が1歳になるとき、妻の職場復帰と入れ替わりに、1か月間の育休を取得しました。その期間、多くの時間を娘と共有することで、より娘のことがかわいいと感じることができました。しかし、慣れない家事に追われるなかで訳もわからず長時間泣かれると、「うるさーい!!」と言いたくなるときもあります(耳栓をしたことも……)。育休中、子育ての大変さを身にしみて感じつつ、継続的に家族みんなが笑顔で暮らせるにはどうしたらいいかをしっかり考え、学びはたくさんあったはずなのに、妻とも些細なことでお互いにイライラしてしまい、言い合いになることもあります。

世のパパたちは育児を求められ、職場では時間を顧みず成果を求められる。そのうえさらに育児・生活の良きパートナーとして妻との新たな夫婦関係を築いていくことは、非常に大変なことだと思います。
いかにイクメンブルーを脱するか。目指すべきは「ポスト・イクメン」
こういった状況を変え、「パパでいることを楽しむ」ために、著者は「イクメン」から「ポスト・イクメン」に進化することを提案しています。「ポスト・イクメン」とは、いったいどういうことでしょうか? 本書では、家庭、職場、地域(サードプレイス)の3つの場面から「ポスト・イクメン」と呼ばれるパパ像を説明しています。

1つ目の家庭については、主にママとの関係性や協力体制の築き方について述べられているのですが、各項目のタイトルがなんともユニーク。

「産前産後が対ママの『自己資本比率』を上げる時期」
「『家庭内ぶら下がり社員』になっていませんか」


など、まるでビジネス書を読んでいるような感覚で理解を進めていけるのが特長です。育児参加をすることがビジネスの能力アップにどうつながるのか、ママとの新たな関係性をどう作るか、などが論理的に理解できる内容になっています。

2つ目の職場については、長時間労働の問題提起に始まり、男性が育休を取得するメリットや取得したパパの体験記が記されています。たとえば、会社で育休を取得しようとしたところ、社内で前例がなかったために人事と部門長のあいだで申請をたらい回しにされてしまう、といういわゆる「パタハラ」エピソード。このとき、どのような気持ちや覚悟で取得への準備を進めたのか、というお話はじつにリアルでした。

どの会社もパタハラがある、ということではないですが、「会社で前例がない」「取りたいけど取れない」というパパは多いはず。そんななか、この体験記からは苦労や喜びがまるで自分のことのように伝わってきて、一歩踏み出す勇気がもらえるのはもちろん、育休を取得するために具体的にどんな準備をすればいいのかもイメージすることができると思います。

最後に、地域(サードプレイス)について。ここでは、PTAなどの保護者会活動に積極的に参加することで、仕事では得られない知識や経験を得られること、夫婦のなかにとどまらず地域で育児をサポートし合える体制を実現できることを、実例を交えて紹介しています。「MBAよりPTAを!」など、ここでもキャッチーなタイトルが光ります。
「ポスト・イクメン」とは、自分にとっての本当の幸せを見極められる人
本書の結びは、著者の安藤さんと武蔵野大学社会学部教授の田中俊之さんによる「ポスト・イクメンの幸福論」についての対談です。

このなかでとくに私の印象に残った部分は、「パパの希望なき国に子どもの希望はない」というお話。パパが楽しく笑顔で充実した生活を送っていなかったら、子どもも大人になることや働くことをつまらないことと捉えてしまうかもしれない。これは本当に悲しいことだと思います。パパは子どものいちばん近くにいる大人代表の一人として、まずは自分が楽しく生きることをもっと大切にするべきだと感じました。

「イクメン」の名の下に理想の姿を作り上げ、それを絶対的な価値観として捉えてしまうウイルスに、たくさんの人が感染してしまっているのではないでしょうか。そのワクチンとなるのは、周りに流されず、本当に自分が送りたい生活から逆算して、いまの働き方を見直すことだと思います。仕事にも生活にもメリハリと余裕を持ち、妻や子ども、そして家族をサポートしてくれる親や地域の人たちのことを優先して行動できるパパこそが、「ポスト・イクメン」なのです。

本書を読んで、自分と世の中を変える「ポスト・イクメン」への成長を目指す仲間が増えてくれることを願っております。もしかして、価値観を一様化した「イクメン」という言葉が死語になってしまう日も来るかも? 「イクメンブルー」の処方箋は、本書なのかもしれません。
プロフィール

山之内 徹(やまのうち とおる)
クレディセゾン労働組合。2017年4月から5月に育休を取得。最近の楽しみは、休みの日に、育休中に覚えた『ブンバ・ボーン!』を娘と一緒に踊ること。

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