共働き家庭のマネジメント術②「家庭の最終責任者はママ」という考えを捨てる

共働き家庭のマネジメント術②「家庭の最終責任者はママ」という考えを捨てる

2017年4月14日公開

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いま日本では、女性の社会進出や雇用不安などによって、共働きで子育てをする夫婦が増加。しかし、仕事に育児、家事と、多忙な生活を送る夫婦には課題も多く、「喧嘩が絶えない」「コミュニケーション不足」だと嘆く声は、男女ともに聞こえてきます。家庭をひとつの「チーム」と考えたとき、夫婦でどうマネジメントしていくのが良いのでしょうか。

そこで、NPO法人ファザーリング・ジャパン(「父親であることを楽しもう」をコンセプトに全国で父親支援をしている団体)理事の林田香織さんに「共働き家庭のマネジメント術(全5回)」について連載していただきます。

前回は共働き夫婦が多忙のあまり陥りやすい「時間的余裕度の差」についてお話しました。今回はそんな夫婦がともに家事・育児を行う「ジェネラリスト型夫婦」になる秘策をご紹介します。


撮影:川上秋レミイ
撮影協力:くまさん家( https://www.kumasanchi-shimokita.com/
夫は家庭全体の状況を把握していないから、家事育児の「できること」がわからないだけ
夫に対する妻の要望で一番多いのは、「家事や育児を『手伝って』と言われなくても、気づいてほしい」「自分で考えて動いてほしい」という声です。しかし、夫の帰りはいつも遅いし、週末も疲れているのでまったくアテにできない。「こっちは、家事、子育て、仕事などで毎日いっぱいいっぱいなのに、どうして『パパ育て』までしなくちゃいけないの!?」という妻の気持ち、働きながら子どもを3人育てている私にはとてもよくわかります。

一方、夫たちから聞こえてくるのは「何が大変なのか、気づきたいけど気づけない」「妻の逆鱗に触れずに手伝うにはどうしたらいいのかわからない」「いっそのことリストやマニュアルを作ってほしい」「家事・育児を頑張っても、『(やり方などが)違う!』と言われてしまう」という声。どうやら、頑張りたいけれど、どう頑張っても妻に満足してもらえないのが本音のようです。

「気がつくのが当たり前でしょ!」という妻の意見もわからなくはないのですが、妻より経験値の低い夫にとっては、「当たり前」のことがじつは「当たり前」ではない。これは、妻だから、夫だからという男女差ではなく、夫婦間の経験値の違いが原因です。

いまの日本の家庭では「妻=主担当」「夫=お手伝い」の構図が自然とできあがってしまいがちです。つまり、家事・育児において妻と夫は師弟関係、上司と部下のような関係になっているのです。家のすべてを把握している妻は、自分で考え、マネジメントすることが可能です。しかし、全体が見えないまま、部分的なところだけ不定期に任される夫は何が足りていないのかわからないから、自分から動くことができない。気づきたくても気づけない状況にあるのです。

仕事でも同じような経験はありませんか? 「もっと自分で考えて動こう!」と思っても、プロジェクト全体が見えないからどう動いていいのかわからない。夫も同じ状況なのです。夫が妻と同じようにマネージャーレベルまで昇格するには、夫も家庭全体をマネジメントする経験が必要です。つまり、夫も裁量権を持って家事・育児に試行錯誤することが、「気づける夫」「自分で考えて動ける夫」になる近道なのです。

「ママのやり方」で家事・育児をしてはダメ。自発的な行動が父親力アップの特効薬に!
「夫にも家事・育児を1人でこなせる経験をしてもらう!」というのは、夫にとってもプラスになります。常に「ママのやり方」で家事・育児を行なっていては、いつまでも「やらされ」のまんま。妻の指示のもとではなく、時には失敗したり悩んだりしながらも夫自身のやり方で家事・育児を構築することで、子育ての大変さだけではなく、醍醐味も経験することができます。子どもとパパだけの時間を過ごし、1人で世話を行うことは、「父親の役割意識」の形成にとても大切なこと。その経験が、パパにとっての自信にもつながるのです。

また実際に1人で家事・育児を経験することで、それがどれだけ大変なことかを本当の意味で理解することができます。もし、妻一人で我慢してすべてを抱えているのであれば、夫に「辛い! もう限界!」と明確に伝え、家事・育児を託しましょう。
「妻は家庭の最終責任者」という気持ちがママを辛くする。夫婦で負担を共有することが大切
ママは子育てを「辛い、大変」と悲観的に捉え、一方のパパは「大変なこともあるけれど楽しい」と楽観的に捉える傾向にあります。夫婦セミナーの参加者同士の自己紹介で私が「子育ての楽しいことと、大変なことを教えてください」というと、妻は、まず10個ぐらい大変なことを並べたあとに、「でも、子どもの成長を見ることは楽しいです」と締めくくります。反対に夫は「大変なこともありますが、楽しいことのほうが多いです」という感じで、楽しいことだけをリストアップして終わる傾向にあります。

ところが、1人で家事・育児を経験していたり、普段から妻と同じようにこなしている夫は、妻と同様、大変なことをたくさん並べます。この「負担感の共有」が、妻の辛さを解消する特効薬になるのです。妻の辛さは「常に自分が最後のとりで。常に(家庭の)最終責任者でいなければいけない」というところにあります。夫も一緒に「最終責任者」でいてくれたら、妻たちの辛さも緩和され、家事・育児をポジティブに捉えられるようになります。
夫にも任せたいのなら、役割をプレゼントする「手放し力」を妻が養うこと
「そうは言っても、夫に任せるのは不安で……」「自分でやっちゃったほうが早いし……」という妻も多いのですが、そんなときはまず、家事・育児の内容を棚卸して、夫にプレゼントできるものを探してみてください。ここで大切なのが、一時的に「貸す」のではなく「プレゼント」することです。つまり、「あげたけれど、やっぱり返して」とならないものです。そして一度プレゼントしたら、絶対にママのやり方やママ基準を押しつけないこと! 権限委譲したものをやり直したり、文句を言ったりすると夫から返品されてしまいます。ともに家事・育児を行う「ジェネラリスト型夫婦」にバージョンアップするには、妻が少しずつ役割を手放していく「手放し力」を養うことが必要なのです。
夫ができる家事はたくさんある。秘策は「分担」できるものを探すこと
「うちの夫は仕事で家にいないから無理!」……そんなことはありません。時間がなくても夫の出番を作る秘策をご紹介します。

・「パラレル家事」なら連携感がアップ!
妻が何かの家事をしているときに、夫に別の家事をお願いする「同時並行型の家事シェア」。たとえば朝、妻がごはんを作っている間に、夫は子どもを起こして着替えや準備をする。妻が自分の身支度をしている間に、夫が食器を洗うとか。この利点は、毎日お互いの役割を持ってルーティン化していけば、夫婦の連携力がどんどん強まるところです。

・時間を問わない「新家事労働」を作る
家事や育児をアウトソーシングする際に生まれる新しい家事を「新家事労働」と言います。たとえば、保育園に子どもを預ける際のオムツの名前書き、着替えの準備、連絡帳の記入などがそれに当たります。これらは時間を問わずできますし、まるっと夫に任せてしまうことが可能です。

・1つのタスクを2人でやる「分解家事」
1つの家事を1人でやるのではなく、夫婦で「分解」する家事方法。洗濯物を干すときに、妻はハンガー干しを担当し、夫は洗濯ばさみ干しを担当して一緒にやる。食器は妻が洗うけど、鍋は夫が仕事から帰ってきてから洗う、料理もメインは夫、妻はサラダというのを、日によって交代にするなど、1つの家事を分解して担当するのもあり。これは「一緒にやっている感」が強まるので、負担の共有につながります。
タスクはきっちり半分に分けなくてもいい。大事なのは、お互いがいまの関係に納得しているか
家事・育児の分担に「納得している」という夫婦は、関係満足度が高い傾向にあります。タスク量的に半分でなくても、納得するまで話し合ったり、状況に応じてフォローし合うことで、夫婦の連携力は強まります。

しかし、それでもお互いが忙しくて、2人ですべてを負担するのが無理な場合もありますよね。家事に追われるばかりでなく、家族でゆっくりする時間も欲しいと願う夫婦に向けて、次回はほかのリソースも巻き込んだ「連携型子育て」のマネジメントについてご紹介します。
プロフィール

林田香織(はやしだ かおり)
NPO法人ファザーリング・ジャパン理事。NPO法人コヂカラ・ニッポン理事。ロジカル・ペアレンティングLLP代表。お茶の水女子大学大学院修士(家族社会学)。日米の教育機関において、長年にわたり日本語教育(高校・大学・ビジネスマン向け)に従事。8年の在米期間を経て、2008年帰国。自治体、企業において、両立支援セミナー、配偶者同伴セミナー、夫婦向けコミュニケーションセミナー、管理職向けイクボスセミナーなどの講師を多数務める。プライベートでは九州男児の妻、3人の男の子のママ。
http://fathering.jp/

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