流山市×福岡市 働き方変革のキーパーソンが語る「ママたちの可能性」

流山市×福岡市 働き方変革のキーパーソンが語る「ママたちの可能性」

2017年5月29日公開

Bu facebook
Bu twitter
いま、結婚後も働く女性が増えていますが、家事・育児との板挟みで思いどおりに働けなかったり、育児が落ち着いてから働こうにも再就職先が見つからなかったりと、仕事の問題について悩む人が少なくありません。そうした問題を解決する一つの策として、起業やフリーランスの道を選ぶ人もいます。キャリアやスキルに自信のない人にとっては、非現実的に思える話かもしれませんが、実際のところはどうなのでしょうか?

『SAISON CHIENOWA』では、数々のユニークな施策で子育てファミリー世帯を中心に人口が上昇している千葉県流山市の魅力に迫る連載として、第1回は井崎市長インタビュー 、第2回は流山市で暮らす三人のワーママによる座談会をお届けしました。連載最後となる今回は、ママたちをサポートする取り組みとして流山市で開講している「女性向け創業スクール」の講師を務めるほか、さまざまな方面で精力的に活動している起業家ママ・尾崎えり子さんと、福岡市でママたちを企業やサービスの成長を担えるグロースハッカーへと育成し、在宅ワークの支援も行っている「ママグロースハッカーズ」のプロデューサー・高橋政俊さんに、それぞれの立場から見たワーキングマザーの現状と可能性、今後の課題についてお話をうかがいました。

取材・文:阿部美香 撮影:田中一人
プロフィール

尾崎えり子(おざき えりこ)
流山市子ども子育て審議委員。株式会社新閃力代表取締役。NPO法人コヂカラ・ニッポン副代表。2児の母。新卒で経営コンサルティング会社に入社後、結婚を機に転職。子会社の設立に参画し、執行役員として商品開発に携わる。第一子育休後、代表取締役に就任。第二子育休を経て退職。2014年7月に(株)新閃力を立ち上げる。働きたいママの選択肢を増やすため、流山を中心に民間学童のプロデュースや行政と一緒に女性向け創業スクール開催。去年から都内に通勤せずとも地元で働けるシェアサテライトオフィスTristをオープン。場所だけでなく、地域のママたちにキャリア教育プログラム実施することで企業誘致に成功し、多くのメディアから注目を集める。
https://trist-japan.com/


高橋政俊(たかはし まさとし)
「ママグロースハッカーズ」プロデューサー。クリエイター養成スクール「デジタルハリウッドSTUDIO福岡」ゼネラルマネージャー(校長)。株式会社九州インターメディア研究所 教育事業部長。福岡市や地元企業との産学官連携による独自の学校経営や教育スタイルを展開しているほか、教育機関や企業へのコンサルティング、アドバイザーも務める。またタレントとして、RKB毎日放送「今日感テレビ」コメンテーターの実績も持つ。
http://www.mgh.plus/
子育て中のママが自分よりも稼いでいるという危機感で、福岡のクリエイティブ業界の働き方改革につなげたい
―お二人とも地域密着でワーキングマザー支援に尽力され、2、3年ほど経ちますが、どんな手応えを感じていますか?

尾崎:まずは、働くママたちのコミュニティーづくりができたことが大きいですね。流山市は共働き世代を積極的に誘致していることもあり、もともと東京で仕事をしていた方が多く移り住んでいます。1時間弱もあれば都内に出ることができる便利な場所なのですが、子どもができて保育園の送り迎えなども含めると、都内への通勤に1時間半くらいかかるようになります。そうすると、往復で3時間かかる通勤を子育てと両立するのが厳しくなり、高い仕事スキルを持ちながら仕事を辞めてしまう方も多いです。

そんな彼女たちがテレワークで働くための教育プログラムを受けることで、都内の企業に所属していながら、地元のシェアオフィス「Trist」を活用し、通勤時間を大幅に削減できている。流山市の女性の働く意欲を向上することにもつながっているのではと思っています。

―通勤を理由に仕事を諦めてしまうママを減らしているんですね。

尾崎:それだけではなく、働くママの活躍は地域全体の活性化にも役立っていますね。立ち上げた当初は「Trist」のスタッフも利用者も女性だけだったので、男手がない。そこで、お仕事をリタイアされたシニア世代の男性が防犯の見回りに来てくださったり、仕事の知恵を貸してくださったり、自主的に協力してくれています。とてもありがたいですね。

左から、高橋政俊さん、尾崎えり子さん
高橋:地域の活性化につながっているのは、「ママグロースハッカーズ」も同じですね。私たちは福岡に拠点を構えていますが、東京の企業からの仕事で成り立っているんです。

「ママグロースハッカーズ」は、ママ目線で企業やサービスの成長をしかけるグロースハッカー(主にITの分野において、製品・サービスを分析し、成長させるための改善施策を行う人)集団です。彼女たちが在宅で子育てと仕事を両立しながら、東京の企業やサービスに対して成果につながる質の高いデザイン改善案を提供するというコンセプトが注目を集め、徐々に仕事も増えています。いまでは当初目標としていた「在宅で子育てと仕事を両立しながら月収30万円を稼ぐ」ママも出てきているんですよ。

―それはすごいことですね。

高橋:それが福岡のクリエイティブ業界で働く人たちにとって、良い刺激になっていまして。クリエイティブ職の女性に限らず、結婚・出産をきっかけに仕事を続けるのが困難になって辞めるケースがこれまで多くみられました。そんな女性たちに、出産後も育児と仕事を両立できる働き方を提示したかった。働く時間や場所に制約のあるママたちでも、自分たちのスキルやアイディアを武器に、地方で、しかも自宅にいながら東京のクリエイターや制作会社とも勝負できる。ママならではの着眼点や発想を武器に高付加価値な仕事としてグロースハックに取り組む彼女たちの姿を見せることで、そんなメッセージが伝わればと。

さらに、働く時間や場所に制限のある子育て中のママたちが自分よりも稼いでいるという危機感が地元クリエイターに行き渡ることで、「自分たちも頑張ろう」という意欲が高まり、福岡のクリエイティブ業界全体の働き方に対する意識変化や生産性向上のきっかけになればと思っています。
第二子出産後に仕事を探したけれど、まともに相手にしてもらえず、会社を立ち上げた
―とはいえ、ワーキングマザー支援が軌道に乗るまで、ご苦労も多かったと思います。とくに尾崎さんは、ご自身も働くママとして起業されたわけですが、子育てしながら起業することに不安はありませんでしたか?

尾崎:私は第一子の妊娠中に縁も所縁もない流山に引っ越してきて、産休・育休を経て当時勤めていた都内の会社に復帰したのですが、育児と仕事の両立は想像以上に大変で。仕事にも生活にも支障をきたしていました。そして第二子が産まれたタイミングで、もう都内で働くのは無理だと思い、地元・流山で仕事を探すことにしたんです。

ところが、パートでもいいのでどこかに雇ってもらおうと思うと、それまでバリバリ働いてきたキャリアが逆に足かせになって断られたり、うまくいかなかったんです。フリーランスでコンサルティング業務を始めようとしても、「しょせんは主婦の趣味」だと思われて報酬を買いたたかれたりして、まともに相手にしてもらえない。だったら、自分で会社をつくって企業人として仕事を探すほうがいいと考えて、2014年に「株式会社新閃力」(しんせんりょく)を立ち上げました。

尾崎えり子さん
―いま、働くママの支援にまつわる事業をやられているのも、そんなご自身の経験がもとになっているのでしょうか。

尾崎:そうですね。会社を始めたころはちょうど、流山市のファミリー人口がどんどん増えていった時期で。前職で子どもやママ向け製品の開発などをやっていた経験もあったので、民間学童保育のプロデュースなどを通じて、まわりのワーキングマザーのみなさんの要望に応えるかたちで働く女性の支援事業も増えていき、「Trist」開設にもつながりました。

流山には私と同じように、子育てのために地元で働こうにも自分のキャリアを活かせる場所がなく、自信を失っている方がたくさんいらっしゃいます。そんな方々が教育プログラムを受けて、もう一度自信を取り戻し、いままでのキャリアを活かして働く場所として「Trist」を活用してもらいたかった。また、地元の方が集まるオフィスを作ることで、地域のコミュニティーとしても機能するのではないかと思ったんです。

―「ママグロースハッカーズ」メンバーのママたちは在宅でお仕事されているそうですが、尾崎さんと同様、働くママの支援が目的で始められたのですね。

高橋:はい。私が校長を務めるデジタルハリウッドSTUDIO福岡と、リクルートジョブズ、Kaizen Platformの3社協働で、子育てと仕事を両立したいママをグロースハッカーへと育成する「Growth Hack for Woman プロジェクト」を始めたんです。「クリエイティブ都市」を政策コンセプトとする福岡市が「創業特区」に選定されたことから、福岡市の応援もあって、行政との連携のもと行っています。

このプロジェクトの一環として「ママ向けWebグロースハッカー養成講座」を開講し、ここで技能を身につけた有志のママを集めてチーム化したのが「ママグロースハッカーズ」です。参加メンバーはみんな在宅で働いています。

関連する記事

この記事のキーワード

RANKING
YESTERDAY

WHAT'S CHIENOWA?

staff_pickup