池谷裕二著書に学ぶ。人間関係を豊かにするヒントは脳科学にあり?

池谷裕二著書に学ぶ。人間関係を豊かにするヒントは脳科学にあり?

池谷裕二『単純な脳、複雑な「私」』

Bu facebook
Bu twitter
文:松尾 貴司(CHIENOWA)
根っからの文系人間も惹かれた! 探究心をかきたてられる池谷氏の脳科学本
「心とは何か」

考え始めると果てしない思考の世界に迷い込んでしまう哲学のテーマです。ここでは、「心」を生み出す「脳」を知るための書籍を紹介します。著者は池谷裕二(いけがや ゆうじ)先生、東京大学大学院教授の薬学博士です。私は根っからの文系人間ですが、『SAISON CHIENOWA』の企画でマインドフルネスを体験し、その流れで興味をもったのが脳科学でした。

脳科学の書籍を探しいくつかの本を読みましたが、池谷先生の本がもっとも刺激的でわかりやすく、著書を読み漁りました。最初に手に取ったのは、『進化しすぎた脳』(講談社ブルーバックス)でした。これは、ニューヨーク在住の高校生に脳科学の基本から最新情報までを講義したもので、大脳生理学の基礎だけでなく、最新研究からの知見まで取り入れた内容です。

生物や化学の知識がまったくないので難解な部分もありましたが、講義形式の臨場感により、読み進めるうちにワクワクし、もっと知りたくなる探究心をかきたてられ、脳科学の虜になってしまいました。

今回は池谷先生フリークの私が、人生をもっと豊かにするために「これは読んでおいてほしい!」と思う1冊『単純な脳、複雑な「私」』をレビューします。著者の出身高校での講演と選抜した生徒への集中講義がもとになっています。博識な池谷先生は、科学分野だけでなく、文学、演劇、芸術なども交え、哲学の領域である「心」についても、科学的な立場から示唆を与えてくれました。
若いうちは「ひらめき」が頼りだが、豊かな人生経験をすることで「直感」が働く
さて、ここからは印象的だった本文の引用とともに内容をご紹介します。

・直感は結構正しいんですよね

「直感」は、ロジックを重んじるいまの世の中では軽視されがちな判断基準ですが、著者はこれをサイエンスとして扱っています。似たものとして、「ひらめき」があり、これは理論や論理に基づく判断であるとのことです。

若いうちは人生経験がないため「ひらめき」に頼るしかないが、豊かな人生経験を積むことで「直感」が働くようになるそうです。自分自身を振り返ってみても、仕事や私生活において、なぜだかわからないけど違和感を感じたとき、たいていの場合それは嫌な方向に進んでいきます。これからは直感をもっと大切に捉えていきたいと思います。

・ひらめきは寝て待て

・睡眠は脳や体をクールダウンするための休息時間では決してなくて、もっと積極的に情報の整理や保管を行うための活動的な「行為」である

われわれ現代人は睡眠時間がどんどん削られている状況です。自分に適した睡眠時間をしっかりとることが、クリエイティブで充実した生活につながっていくのではないでしょうか。夜はだらだらとテレビを見たりスマホをいじったりせず、しっかりと睡眠時間を確保していきたいと思います。

・(人を判断するとき)そもそも「正しい」「間違い」なんていう絶対的な基準はないんだ

これはとても重い命題だと感じました。いろいろな差別の問題があり、それを解消しようと社会全体が取り組んでいます。しかし、表面的には差別しない行動を取ったとしても、心のうちでは差別的な感情を拭い去れないのではないかという疑念があります。

育ってきた環境のなかで取り込まれた感情を変えるのはとても難しいことです。だからといって、差別をなくす取り組みが無駄であるとは考えません。なぜなら、われわれの行動で、次世代の子どもたちに「慣れる」時間を与えることができるからです。時間はかかるかもしれませんが、未来は本当に差別のない世の中になっていくのではないでしょうか。

・進化の過程で、動物たちは他者の存在を意識できるようになった

これは著書の本題である「心」についてです。人間が人間である理由は、自己を客観的に観察できるということ。自分の欲求しか表現できない子どものうちは、まだ人間とはいえないのかもしれません。しかし、「人間」である大人が起こしたとは思えないような犯罪のニュースを見ない日はありません。他者を知り、自分を知り、そこからさらに他者の気持ちをうかがい知る「共感」は、「心」を織りなす重要な一要素ではないでしょうか。

・自由意志は、存在するかどうかではなくて、知覚されるものではないか

私は、人間には「意志」がありその結果行動していると思っていました。しかし、脳科学の実験で明らかになったことは、無意識下で判断されたことで体が動きはじめ、脳がそれを自らの意思として追認しているだけであるという衝撃的な答えでした。

少し論点がずれるかもしれませんが、無意識のうちに、独り言を発したり、鼻歌を歌ったり、というのは誰しも経験のあることでしょう。そんなことをしようという意思はまったくないのに、体が先に動いているのです。

瞑想の一種である心理療法「マインドフルネス」は、このような無意識の行動に目を向けて、いまという瞬間に注意を向けるということです。もしかしたら脳の「自由意志」を獲得するためにマインドフルネスはあるのかもしれません。
脳科学の知識は、子育て、仕事、日常生活を豊かにしてくれるはず
上記以外にも、たくさんの驚きや発見があり、いろんなことを考えるきっかけになる書籍です。ほかにもおすすめの池谷先生の本はたくさんあります。

例えば、受験を控えたお子さまがいるパパママにおすすめなのは『受験脳の作り方』(講談社)です。著者の実体験や脳科学に基づく、効率的な記憶法、勉強法が紹介されています。私自身がなんとなくやっていた勉強法に似たところもありました。私の娘は来年大学受験なのでいろいろとアドバイスするのですが、親の言うことはなかなか聞いてくれません。そこで、この本を娘に読ませているところです。

『単純な脳、複雑な「私」』『受験脳の作り方』は、小手先のハウツー本ではありません。しかし、脳科学の知識は、人間関係、子育て、仕事など、日常生活を豊かにしてくれるはずです。

みなさんにもぜひ池谷先生の本を手にとっていただき、「脳の世界」「心の世界」「己の世界」に興味を持ってもらいたいと思います。

『単純な脳、複雑な「私」』

1,200
著者:池谷裕二
出版社:講談社ブルーバックス
プロフィール

松尾 貴司(まつお たかし)
クレディセゾン 営業企画部 プロモーション戦略グループ
17歳と9歳の女の子のパパ

関連する記事

この記事のキーワード

RANKING
YESTERDAY

WHAT'S CHIENOWA?

staff_pickup