「男の子のプロ」が教えるママが知りたい育児④ 日本の子どもはなぜ「自分が好き」と言えない?

「男の子のプロ」が教えるママが知りたい育児④ 日本の子どもはなぜ「自分が好き」と言えない?

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いま「男の子育児」関連の本に注目が集まっています。その理由は、男の子の気持ちや行動が理解できずに悩んで葛藤しているママがたくさんいるから。でも「男を生きていない」ママが、男の子を理解できないのは当然のこと! そこで、元保育士で自身も3人の息子を育てたという、NPO法人ファザーリング・ジャパン(「父親であることを楽しもう」をコンセプトに全国で父親支援をしている団体)顧問の小﨑恭弘さんに「男の子の育て方(全4回)」について連載していただきます。

最終回は、現代の子どもに足りていないとされている「自尊心(自己肯定感)」をテーマに執筆いただきました。長く教育の場に携わっている小﨑さんも、大きな課題感を持っているそうで、「子どもは多様な関係性のなかで愛情を受け、自尊心を高める」と述べています。これは男女に関わらず、現代の子育て全体に言えることではないでしょうか。子育ての忙しさから一歩引いて、わが子との向き合い方を振り返る機会になれたらと思います。

撮影:大畑陽子
「やる気がない」「自己を肯定的に捉えられない」。日本の若者の自尊心は世界的に見てダントツに低い。
最近、教育関係者のなかで大きな話題になっているデータがあります。内閣府の国際比較調査によると、いまの若者(満13~29歳)が持つ「自己を肯定的に捉えている」「新しいことに意欲的に取り組む」という意識が、アメリカ、韓国、フランス、ドイツなどの先進国と比べて日本はダントツで低いということ。さらに、「ゆううつだ」「つまらない、やる気が出ないと感じたことがある」という否定的な心理を表す項目では、日本は他国に比べて10%以上高いそうです。(内閣府ウェブサイトより。「いまを生きる若者の意識〜国際比較からみえてくるもの〜」)

日本の若者の「自己肯定感」が著しく低いということは、つまり「自分のことが好き」という気持ちが育まれないまま幼少期を過ごしてきたということです。「自己肯定」は、自分自身に対する自信や意欲、また将来の夢や希望に大きな影響を与える重要な性質です。

「自己肯定感」は「自尊感情」とも言いますが、これらはどのようにして育まれるものなのか、少し考えてみましょう。

幼い頃の男の子たちは、さまざまな生活や遊びの場面において「見てて!」という表現をしませんか? たとえば、積み木を高く積めたとき、階段の段差をとび越えるとき、なわとびが1回でも飛べたとき、鉄棒で初めて前回りができたとき、など。

私たち大人にとっては、別にどうってことないできごとですが、男の子たちにとっては、新しい自分と出会ったような達成感を得るくらい、とてもすごいこと。だからいつも真剣に、周りの大人の視線を一身に集めようとするのです。

「見てて!」というアピールは、「ほめて」のサイン。だから親にとっては自尊心を育てるチャンスでもあり、効果てきめんのタイミングなんです。大人になると自らアピールする機会も、真っ直ぐにほめられることも少なくなりますよね。つまり、自信満々に自分のことが大好きと言えたり、誇るべき自分を素直にアピールできる大人になるかどうかは、幼いときにしっかり自尊心を育んだかにかかっているのです。だから、子どもの「見てて!」には、しっかり答えてあげてほしいと思います。
子どもに期待を持ちすぎていませんか? 自尊心は、行動すべてを認め、愛することで育ちます。
男の子に限った話ではありませんが、「自尊感情」は成長のなかで自然と身につくものではなく、周りの大人や友だちなど、人間関係のなかで培われるもの。とくに子どもは、大好きなママ、パパ、おじいちゃん、おばあちゃんなどに直接ほめられることで、自分に自信を持ち、自分のことを愛するようになるのです。

男の子の場合は、「ママー! 見て! バッタだよ!」と言ってバッタを捕まえてきたり、「僕、山手線の駅名、全部言えるよ~!」と自慢してきたり。そこで、「バッタなんて気持ち悪いから逃がしなさい!」「電車ばっかり覚えてないで、勉強しなさい!」と叱るのはもったいないです。ちゃんと、「虫を捕まえるのが上手だね」とか、「すごい記憶力だね! ちゃんと全部言えるかな?」と答えてあげてください。周りの大人が、子どものすべてを「認めて愛して」あげることが重要なのです。

しかし実際は、存在すべてを受け止め、認めて、ほめるということは、なかなか難しいでしょう。なぜなら、親の描く子どもの理想と現実に違いがあるから。親が好きな子どもは、たとえば、勉強のできる子、片づけのできる子、親の言うことを素直に聞く子、きちんとごはんを食べる子、わがままを言わない子……言いだすときりがないものです。つまりきりがないほど、子どもに対して条件をつけてしまうのが親という生き物。

親が勝手につけた条件が多くて厳しいほど、親から子どもに注がれる愛情や興味関心は少ないものになってしまう。与えられる愛情が少ない子どもは、自分自身を愛することも、自信を持つこともできなくなってしまいます。また、地域と各家庭の関わりが減っている現代では、親以外で子どもをほめてくれる大人の存在はどんどん減少しているでしょう。それがいまの日本の子どもを取り巻く現状なのです。
良い悪いの判断をする前に「よく頑張ったね」と、子どもの存在そのものを受け止めてください。
目の前にいる子どもに「良い・悪い」などの判断を下さずに、すべてまるごと受け止めて「あなたのすべてが大好き!」と伝えていますか? たとえば、子どもが運動会のかけっこで1番になれませんでした。このとき、結果について話すよりも、まず子どもの一生懸命さをほめてあげてください。「頑張っていたね!」「走ってる姿、かっこよかったよ!」など。それが、子どもの存在そのものを受け止めるということ。

思いとしては、子どもが生まれる前日の感覚でしょうか。「この子が無事に生まれてきてくれたら、それだけで幸せ」という感じ。しかし親は、子どもへの心配と期待、二つの思いに大きく揺れ動かされるもの。だから「常に、生まれる前日の感覚でいて」というのは極端かもしれませんが、できうる限り、その思いを忘れずに接してほしいなと思っています。
子どもの良さを見つけてほめてくれる親以外の存在が、子どもの自尊心をより育む。
男の子は、自分を強く見せようとするばかりに、極端な行動をとったり、大きな声で叫びまわったりしがちです。それらの態度や行動がお母さんの思いにそぐわないこともあります。このとき、お母さんにぜひ気をつけてほしいのが、息子のプライドを攻撃しないでほしいということです。

どういうことかというと、「男の子なのに……!」「お兄ちゃんなんでしょ!」などと役割に当てはめて、一方的に責めること。素直でプライドの高い男の子は「自分はすべてがダメ」「自分は何もできない」と、自分自身を否定してしまいます。頭ごなしに叱ったり、感情に任せて責めるのではなく、間違った言動などを受け止めつつ、もう一方で優しく諭してほしいと思います。大切なのは、最初に「受け止める」こと。この順番を間違えないでください。

子どもを育てていくのも大変なのに、「そのうえ、上手く受け止めて自尊感情を育むなんて無理!」と思ってしまいますよね。そうです、子育てはやはり大変なものなんです。だからお母さん一人だけでなく、いろいろな人と一緒になって子育てをしましょう。親以外の大人、たとえば、おじいちゃんやおばあちゃん、先生や近所の人などの手を借りて、子どもがいろんな人と関わり、多様な関係性のなかで育つことを意識してほしいのです。

周囲の大人たちが、親も気づかない子どもの良いところを見つけ、ほめてあげることで、子ども自身が「自分のことが好き!」と思える機会を増やしてあげたいですね。生きる力の源は、自分を愛することであり、自分を信じることです。まずは周りの大人が子どもを愛して、信じることから始めてみましょう。
プロフィール

小﨑恭弘(こざき やすひろ)
1968年兵庫県生まれ。大阪教育大学教育学部 准教授。元保育士。兵庫県西宮市公立保育所初の男性保育士として12年間、保育に携わる。男性保育士では珍しく乳児も担任。父親も男三人兄弟で、自身も三兄弟の長男として育ち、わが子も男の子三人という、男系家族という環境から「男の子のプロ」として、NHK Eテレ『すくすく子育て』ほか、テレビや新聞、雑誌などで活躍。著書に『男の子の本当に響く叱り方ほめ方』『思春期男子の育て方』(以上、すばる舎)、『うちの息子ってヘンですか?』(SBクリエイティブ)などがある。

『男の子の育て方』

1,080
著者:小﨑恭弘
出版社:洋泉社

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