【医師取材】妊娠中の麻疹(はしか)の危険性、胎児への影響は?

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さまざまな経路で感染する麻疹(はしか)。特に免疫のない妊婦さんの感染は「早産」「死産」の原因となる場合も。今回は、妊娠中の麻疹(はしか)の危険性に加え、胎児への影響をご紹介します。







この記事の監修ドクター

 産婦人科医長 加藤智子 先生

浜松医科大学医学部医学科卒業、社会医療法人財団新和会八千代病院勤務。日本産科婦人科学会(専門医)、日本医師会(認定産業医)、日本抗加齢医学会(専門医)、NPO法人女性と加齢のヘルスケア学会(更年期カウンセラー)、日本産婦人科内視鏡学会、日本女性心身医学会、検診マンモグラフィ読影認定医、日本気象予報士会東海支部(気象予報士)。女医+(じょいぷらす)所属。

妊娠や子育て、不妊治療、婦人科疾患など皆様が不安なことが多い女性の一生をサポートし、皆さまの悩みに少しでもこたえられるような情報を提供できたらと思います。医師そして気象予報士としての視点でも健康についてアドバイスしていきます。

麻疹(はしか)ってどんな病気?

麻疹の症状
麻疹(はしか)は「麻しんウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症」として知られています。麻しんウイルスの感染経路は「空気感染」「飛沫感染」「接触感染」と多彩。いずれの経路からも感染し、ヒトからヒトへ感染が伝播します。感染力については非常に強いと言われています。また、免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症しますが、一度の感染・発症によって、一生免疫が持続すると考えられます。ちなみに潜伏期間は、ウイルスから一般的に10日前後、感染力の持続期間は「発疹があらわれる3〜5日前」から「発疹があらわれてから4日後程度まで」と言われています。

なお、麻疹の発症は「カタル期」「発疹期」の2つの段階に大別できます。以下、麻疹を発症した場合の症状です。

■カタル期…まず発熱や咳、鼻水、結膜炎などといった症状が現れます。また、カタル期後半は頬粘膜に「koplic斑」という白色斑点が出現します。

■発疹期…カタル期を過ぎた後はいったん解熱し、再度発熱します。それに伴って、耳後部や頚部から顔面、体幹部、四肢にかけ発疹が広がるのです。また、高熱で体力を消耗するため、免疫力が下がって、肺炎、中耳炎、脳炎などの合併症を起こしやすく、重症化すると、死に至るケースもありますから注意が必要です。
麻疹の流行
例年、春から初夏にかけては麻疹が流行しやすい時期と言えるでしょう。定期接種の接種率が上昇するにしたがって、特に幼児のはしかの患者数は、年々減少しているのです。例えば、2007年・2008年には10~20代の間で麻疹の大規模な流行がありました。しかし。翌年2009年以降については、10~20代の患者数が大幅に減ってきています。
麻疹は大人のほうが重症化しやすい!
2008年〜2012年の間は、中学校1年生・高校3年生の年齢の子どもたちに、「2回目の麻しんワクチン接種」が実施されました。その結果、2009年以降の、若年層(10〜20代)の患者が大幅に減りました。そのような事情もあり、麻疹患者のメイン層は1歳までの乳児となったのです。実際に2015年には、WHO(西太平洋地域事務局)より「日本は麻疹の排除状態である」と認定されました。しかし、その影で「成人以降の麻疹発症数」も増加傾向を見せています。

実は、大人の麻疹は、子どもより重症化しやすいため、WHOの認定を素直に喜べないのが現状と言えそうです。麻疹になると、一時的な免疫力低下が起こるため、さまざまな合併症の危険があります。具体的には、脳炎・肺炎・心筋炎などの心配があります。中でも妊婦さんは、非妊娠時に比べてただでさえ抵抗力が落ちていますので、特に警戒しなければなりません。
麻疹は予防接種で防げる
麻疹は予防接種(ワクチン接種)で防ぐことが可能な病気です。予防接種では免疫を獲得することが期待できますが、それが麻疹を予防する「唯一の有効な手段」となります。麻疹に対しては特異的な治療はなく、対症療法が中心となるため、発症を防ぐ、あるいは軽症化するための最善方法は「予防接種」となるのです。

なお、麻疹の患者さんに接触した場合、72時間以内に麻しんワクチンの接種をすることも効果的であると考えられます。接触後5〜6日以内であれば、γ-グロブリンの注射で発症を抑えることができる可能性がありますが、安易にとれる手段ではありません。詳しくは、かかりつけの医師とよく相談してください。また、定期接種の対象者だけではなく、医療・教育関係者や海外渡航を計画している成人も、麻しんの罹患歴・予防接種歴が明らかでない場合には、予防接種を検討しましょう。
麻疹と風疹
麻疹と風疹は、どちらも発熱と発疹をともなう感染症なので、確かに似ている部分もあります。そのため、両者を同じようなものだと思っている人もいるかもしれませんが、別のものです。風疹は、「3日ばしか」と呼ばれる感染症。風疹ウイルスに感染してから潜伏期間を経て発熱、それとともに「全身性の小紅斑や紅色丘疹」「リンパ節腫脹」を認めるのが特徴です。ちなみに潜伏期間は14〜21日間とされます。しかし、発症後の症状につきましては、通常3日間程度で消失します。

このように麻疹と風疹は異なる感染症ですが、どちらの病気もワクチンを接種することで、免疫を獲得し、予防することができます。ですから「麻疹・風疹の混合ワクチン」(MRワクチン)の接種の検討もきちんとすべきと言えるでしょう。
大人・子ども別の麻疹予防法

子どもの麻疹の予防接種
先ほどもご紹介しましたが、唯一の有効な予防法は「ワクチン接種」です。これにより、麻疹に対する免疫を獲得することができます。回数は1度だけでなく「2回のワクチン接種」により、麻疹の発症のリスクを最小限に抑えることが期待できますので、子どもにきちんと受けさせるようにしましょう。具体的には、定期接種では「1歳」と「小学校入学前」に2回受けることになっています。2回の予防接種がすすめられていますので、忘れずに受けさせてください。
大人の麻疹の予防接種
麻疹の予防接種は子どものみならず、もちろん、大人でも可能です。地域によっては、成人向けに費用助成しているケースがあるので、自治体などにお問い合わせください。麻疹を予防するためには、ワクチンを接種し、免疫を獲得することが重要です。しかし、妊娠中は、ワクチンを接種することができません。また、麻疹の予防接種では、麻疹と風疹の「混合ワクチン(MRワクチン)」がよく用いられますが、赤ちゃんへの影響を避けるために「接種後2か月間の避妊」が必要となりますのでご注意ください。つまり、妊娠を希望する女性は、早めにワクチンの接種を済ませておくことがとても大切と言えるでしょう。
妊婦の麻疹予防

妊娠中の麻疹感染…胎児への影響は?
麻疹の場合は、妊娠中にかかっても、お腹の赤ちゃんに先天性の奇形が現れることは少ないといわれています。これは、「風疹」などをはじめとした他の先天性感染症とは異なる点です。しかし、妊娠中に麻疹にかかると、「早産」(妊娠22週〜37週未満での出産)や「流産」(22週以前の赤ちゃん死亡)のリスクが高くなる危険性はやはりあります。また、母体の麻しん症状が重症化し、重篤な合併症を引き起こす頻度が高くなる恐れもあります。
ママに免疫がない場合の新生児への影響
麻疹は、生後6か月以降に感染しやすいです。そのため幼稚園くらいまでは注意が必要といえるでしょう。母親がはしかの免疫を持っている場合、お腹の赤ちゃんにもはしかの免疫が受け継がれることから、生後しばらくは、はしかに感染することがありません。このため、生後3カ月くらいまでは、通常はしかに感染することがないのです。しかし、受け継がれた免疫は、生後6カ月くらいから徐々に消えてしまうため、この時期を過ぎると、麻疹にかかりやすくなるというわけです。ただし、免疫のない母親から生まれた赤ちゃんについては、ワクチン接種前に麻疹にかかってしまうケースもあり、症状が重く出てしまうことがあるとも考えられます。
妊娠前の予防接種の重要性
妊娠中に麻疹にかかることは、母体・胎児の双方に重篤な結果を招く危険があります。何度も繰り返しますが、「ワクチン接種による予防」が重要です。ただし妊娠中のワクチン接種はできませんので、妊娠可能年齢前にワクチン接種をおこない、免疫を獲得しておくことが望ましいです。大人でも麻疹をやっていないのであれば、きちんと予防接種はしておくほうが良いでしょう。
すでに妊娠している場合の対処法
すでに妊娠している方の場合は、麻疹の予防接種を受けることができません。そこで、なるべく麻疹にかからないような生活習慣を実践することが重要となります。以下、すでに妊娠している場合の対処法をご紹介します。

・規則正しい生活をこころがけ、体力・免疫力低下を防ぐ

・人混みではマスクをする

・帰宅後はうがい手洗いをしっかりとする

なお、妊娠中に麻疹患者と接触した場合は、接触後6日以内に「ヒト免疫グロブリン」を投与することで、発症の予防あるいは軽症化の効果が期待できます。心当たりのある人は、かかりつけ医にご相談ください。
麻疹の抗体検査
「麻疹の予防接種ってしたかな?」「記憶が無い(覚えていない)」…そんな人は血液検査の1つである「麻しん抗体検査」でチェックすることができます。麻疹の予防接種をしたか記憶がない人はもちろん、免疫力が充分あるか不安な人も受けてみると良いでしょう。実際に、過去に麻疹感染し、抗体を持っている場合は終生免疫ですが、予防接種によって抗体を持っている場合は、抗体価が不十分な場合もあります。検査機関によっては1〜2週間かかるので、余裕を持って検査を受けるほうがいいでしょう。具体的には内科ほか、外科・産婦人科でも通常はおこなえます。

さて、麻疹に対する免疫機能の有無を調べるために「IgG抗体」「NT法」「PA法」というものがありますが、ここでは「IgG抗体」の結果ごとに対応について説明します。

・2.0未満 陰性:ワクチンを接種する必要があると考えられます。

・2.0以上4.0未満 疑陽性:近いうちに数値は自然に低下しワクチン接種が必要であると考えられます。

・陽性で10.0未満 :急激ではないが自然に数値は減少する可能性がありワクチン接種を推奨されます。

・陽性で10.0以上 :麻疹に対する免疫は十分についているといえ、ワクチン接種は必要はありません。
まとめ
妊娠中の麻疹感染は、赤ちゃんの早産・死産へとつながる危険があります。風疹など、他の感染症よりも奇形への影響は少ないと言われていますが、やはり注意が必要です。ただし、妊娠中は麻疹の予防接種を受けることができませんので、妊娠前からきちんと予防接種しておく必要がありますWHOは、日本国内における「麻疹の排除状態」を宣言しており、予防接種が重要です。ママの予防接種はもちろんのこと、生まれた子どもへの2回の予防接種(定期接種)も忘れずに受けさせてください。

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