女の子が幸せになるための「戦略」とは? 母から娘への生き方の指南書

女の子が幸せになるための「戦略」とは? 母から娘への生き方の指南書

西原 理恵子『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』/2017年8月10日公開

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文:矢ヶ崎 千里(CHIENOWA)
いまの時代、女の子をどう育てたらいい? 強く幸せに生きていけるように
子育てには、「男の子だから育てるのが大変」「女の子だから育てやすい」という定説はないと思う。子どもにはそれぞれ個性があるし、苦労がない子育てなんてない。でも、これから生まれてくるお腹の子が女の子だとわかったとき、私が最初に思ったのは、「困ったな」だったのだ。

私は女性だから、女性のなかにある弱さや、社会に出てから経験する苦労や理不尽、そしてときにはそれを我慢しなければいけないという現実をわかっているつもりだ。だからこそ、自分の子どもに同じ苦労はさせたくない。

でも、どうやって? どんな価値観を伝えれば、自分の娘は強くしなやかに、そして幸せに生きていけるだろうか? どうすれば娘を正しく導いてあげられるだろうか? 漠然と不安を感じていた私は、女の子の育て方のヒントがもらえたらと思い、本書を手にした。著者の西原理恵子さんは子育て漫画『毎日かあさん』で有名だったし、女の子を育てるうえでの大先輩でもあったからだ。
現代社会を生き抜いていく女性に必要なのは、「王子様を待たない戦略」
本エッセイは、これから社会に出て行く女の子たちに向けたハートフルな指南書でもあり、私のように女の子の育て方に迷う母親への啓発本でもある。キャッチコピーは、「王子様を待たないで。お寿司も指輪も自分で買おう」。

まるで私の心のなかを見透かされたように感じた。もしかしたら、女の子は誰かを頼って生きるほうが幸せなのではないか、と葛藤していたからだ。自立するのは辛くて苦しくて、ときには寂しさにも耐えなくてはいけない。本を読む前の私は、「社会に出たら自立しなさい」と娘にはっきり言えるか自信がなかった。

しかし西原さんは、本書にて繰り返しこう言っている。「女の子こそ、生きていくための戦略を立ててください」。「戦略」と聞くと難しそうに感じるが、要は自立して生きていけるように、手遅れにならない年齢のうちからきちんと準備をしなさいということだ。決して「お金持ちの男性をオトす戦略」「ラクして優雅な生活を送るための戦略」ではない。そんなものに価値はないと、著者は明言している。

「20歳までは、困れば誰か助けてくれるかもしれない。でもそこから先は、自分で道を切り開いていくしかない。若さや美貌は、あっという間に資産価値がゼロになってしまう。仕事のスキルや人としての優しさ、正しい経済観念。ゼロになる前にやっておかなければならないことはたくさんあります。自立するって、簡単なことじゃないからね」(『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』より)

本書では、女性が現代社会で強く生きていくための価値観や考え方について、まるで母親が娘に語りかけるかのような文章で綴られており、力まずに読むことができる。
大切なのは失敗しないことではなく、失敗したときに立ち直る力
西原さんは、失敗することは悪いことじゃない、と言う。大切なのは失敗しない方法じゃなくて、「転んだときの立ち上がり方」だそう。特に私が強くうなずいたのは、著者が自身の経験から「ダメな男とつきあってもそれを学習してね(でもすぐ別れてね)」と念を押すところ。

私は10代後半~20代のころ、とにかく無知で真面目すぎた。主に結婚に対する価値観について、もっと柔軟に視野を広く持って自分の人生を設計できたら良かったのに、と30代になってから後悔したので、娘には「失敗しない男性の選び方」なんてものを伝授したいと本気で考えるくらいだった。しかし西原さんに、そうではないと教えられた。

ダメな男をつかんでしまってもいい。人生はやり直せる。大事なのは、それがわかったときにすぐに別れることができるよう、自分自身が経済的も精神的にもきちんと自立していること。自立できる収入がなければ、結婚の先には「我慢」が待っている。「ダメな男とやっと別れられたと思ったら、気がついたときには30代」。アルコール依存症の元夫との生活を振り返る西原さんの言葉は、重くて説得力がある。一方で収入がないまま離婚でシングルマザーになり、その後貧困に陥ってしまう女性たちも多く見てきたという。

「この人なら間違いない」と感じて結婚を決めたとしても、人はきっかけがあれば変わってしまうし、大手企業に就職できたとしてもつぶれない会社なんてない。だからこそ自分のために、いつでも逃げ道を確保しておいてほしい、自分の人生を人任せにしないでほしい、というのが西原さんのメッセージだ。失敗せずに生きる力よりも、失敗しても立ち直れる力のほうがより強力なんだ、と本書を読んでから私の考え方が変わった。
女性はもっと自分勝手になっていい。仕事も家庭も両方手に入れる生き方
仕事か家庭か、は二択ではなく、どちらもとっていいと西原さんは言う。そうすれば、どんなところに就職すべきか、どんな夫がいいかも見えてくるというのだ。

昔よりはだいぶ女性が社会で活躍しやすくなったが、それでも女性ならではの苦労はまだまだ残っていると感じる。まだ学生だったころ、とある企業の就職面接で「仕事と家庭、どちらを優先したいですか?」と質問された。「どちらも大事です。両方をとりたいです」と意気込んで回答したところ、面接官に苦笑いされたことをいまでも覚えている(10年以上前のことではあるが、あのオジサマはいまごろどうしているのだろう)。

当時と比べると時代は進んだとはいえ、まだまだ「仕事か家庭か」の選択を迫られる社会の風潮は根強く残っている。これからは、どっちかじゃなくてどっちも、が当たり前になってほしいと思う。「戦略」的に自立して生きていくために仕事を持つと同時に、家庭も大事に、がこれからの女性の生き方なのだ。

「真面目」で「優しい」女の子は、「我慢」の人生を送ってしまいがちになる。自分の欲を殺して、周囲の期待にこたえようとする。だから「女の子は性格が悪いほうが幸せになれる」と、西原さんははっきりと言い切る。「いい子」を目指さず、もっと自分勝手に生きていいのだ。
「『社長の奥さん』ではなく『自分が社長』になる」。これからの女性の生き方を娘にも伝えたい
社会に出てさまざまな困難に直面したときこそ、親から何を学んできたか、どういう価値観で育てられてきたかによる影響は相当大きいはずだ。女性は選択肢が多く、だから迷ってしまうことも多い。進学、仕事、結婚、出産、家庭など人生の大事なステージをどう選択して、どう自分で進んでいくのか。もちろん結婚も出産もしない選択肢だってある。いろんな選択肢があり、いろんな価値観があるのがいまの社会。

私は親として娘に何を教えてあげられるだろうと不安になっていたが、この本に出会ったことで肩の力が抜けて楽になれた。少なくとも、「女の子は可愛くしていれば、王子様に見初めてもらえるよ!」なんてアドバイスは絶対にしない。もしかすると娘が社会に出るころになっても「女の子は愛嬌があればそれでいい。一歩下がって従ってくれる子がいい」なんて化石のようなオジサマたちがいて、惑わされるときもあるかもしれない。でも娘には、自分で考えて「こうだ」と思ったことを試してみてほしい。もし失敗しても、それでいい。娘が失敗したときは、一緒に泣いて、立ち上がるまで見守ってあげよう。転んだ痛みは私もわかる。

子育て中のママや、社会に旅立つ準備をしている学生さん、すでに社会に出てがんばっている若い世代の女性たちに、本書をぜひ読んでもらいたい。「女の子だから○○じゃなきゃいけない」とか、「いい人とめぐり合って結婚さえすれば」とか、もやもや悩んでいることがきっと変わる。

私自身は娘にも、巣立つまでに本書を読ませたいと考えている。そのときは私の代弁者として、西原さんが娘に語りかけてくれるはずだ。「ダイヤもお寿司も、自分で買いましょうね」。
プロフィール

矢ヶ崎 千里(やがさき ちさと)
クレディセゾン ポイントビジネス部。もうすぐ女の子を出産予定。

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