早期英語教育はいらない? インターナショナルスクール理事長が本音で語る

早期英語教育はいらない? インターナショナルスクール理事長が本音で語る

2017年7月27日公開

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ネットニュースで流れてくる「早期英語教育」というワードや、ママ友から聞く「子どもに英語を習わせた」という話……そのたびに、わが子の英語教育について不安になる親御さんも多いのではないでしょうか。しかし、外国人子女向けスクールや日本人向け英語学童を開校し、グローバル人材を育成する「東京インターナショナルスクール」理事長の坪谷ニュウエル郁子さんは、「あくまでも英語はツール」「義務教育に通う年齢のうちは日本語を」と言い切ります。

世界各国のATMで現地通貨が引き出せるクレディセゾンのプリペイドカード「NEO MONEY(ネオ・マネー)」が発端となった本企画では、インターナショナルスクールの現状から、家庭内の教育まで、「社会に求められるグローバル人材とは?」をテーマにお話をうかがいます。


取材・文:山本ぽてと 撮影:玉村敬太
プロフィール

坪谷ニュウエル郁子(つぼや ニュウエル いくこ)
株式会社東京インターナショナルスクールグループ理事長。イリノイ州立西イリノイ大学WESL(国際学生科)、早稲田大学人間科学部人間環境科学科を卒業。1997年に、幼稚園から小中学生が通う東京インターナショナルスクールを設立。2013年には日本人の子どもを対象にしたアフタースクール(英語学童)を立ち上げる。「国際バカロレア機構」の日本大使を歴任。著書には『英語のできる子どもを育てる』(講談社)などがある。プライベートでは、2人の娘の母親。
http://tokyois-as.com/
現代の国際語は英語だが、この先はわからない。だから外国語話者がグローバル人材とはかぎらない
―まずお聞きしたいのですが、「アメリカンスクール」と「インターナショナルスクール」は違うのでしょうか?

坪谷:アメリカンスクールはアメリカ出身の子どもを対象に、アメリカと同じカリキュラムで学ぶ学校です。アメリカにある「日本人学校」と同じようなイメージです。ほかにもフランス学校やドイツ学校、朝鮮学校などが日本にはあります。一方、インターナショナルスクールは、世界各国の子どもが集まり、どの国にも属さないカリキュラムで授業を受けることが多いです。

―「子どもにグローバル人材になってほしい」「英語が話せるようになってほしい」と願い、日本人家族でもインターナショナルスクールへの入学を検討する親は多いと思います。

坪谷:日本では、英語を話せると「グローバル人材」だと思っている方が多いのですが、あくまで英語はコミュニケーションツールの一つにすぎません。とはいえ、東京インターナショナルスクールの教授言語は英語です。在籍している子どもたちの数は50から60か国いて、それぞれの母国語で指導することは不可能だからです。

いまは自動翻訳機の開発が急速に進んでいて、ボタン一つで精度の高い通訳ができる時代は目の前です。技術の発達により、言語が必ずしもグローバル人材の必須にならない世の中に突入してきているのです。

長い歴史で見ていくと、その時々に一番権力のある国の言葉が「国際語」になっているにすぎません。英語が強いのも、ここ150年くらいの話です。その前はフランス語やスペイン語の時代があって、これから中国語になっていくかもしれない。100年後にはわかりませんよ。

―子どものうちからいろんな国の仲間とふれ合うことで「多様性」を学ぶ機会になり、それがグローバル人材につながるのではないでしょうか?

坪谷:「昨日はアメリカ人の○○ちゃんと遊んで、今日はインド人の○○君と遊びました」というのを期待して、インターナショナルスクールに入学させる親も多いかもしれません。でも、肌の色が違う外国人とふれ合うことだけが「多様性」ではないですよ。それこそ、「日本は多様性がない」と言われますが、クリスマスとお盆が同時に存在するような多様性を受け入れる土壌がある国だと思います。
プロ並みではないと「特技です」と言えない日本。相手だけじゃなく、自分のことも認める場所をつくりたかった

取材中、校内で避難訓練が行われていました。取材班もヘルメットを被り、生徒と一緒に参加。全員が校庭に集まると、教師は初めに「Thank you very much」と避難訓練に参加した子どもたちにお礼を伝え、数分で解散しました。
―先ほど避難訓練の様子を見させていただきましたが、先生が穏やかで印象的でした。日本の学校だったら「みんなが集まるまでに5分かかりました! 危機感がない!」と叱られていたかもしれません……。

坪谷:まさにいまの話が象徴的で、日本ではよくできていても、なかなか褒めない文化がありますよね。日本の教育は素晴らしいのですが、生徒に自信をつける点は足りていないと感じています。たとえば、青少年教育の調査などを行う「国立青少年教育振興機構」によると、日本の高校生の7割が「自分はダメな人間だと思うことがある」と答えています。この割合は、中国、アメリカ、韓国のなかでダントツに高い。

私は子どものときにわりと勉強ができたのですが、近所の人が褒めると母親が謙遜して、「この子はどうしようもないんです」「家ではなにもしなくて」と、子どもを悪く言うコミュニケーションを取っていました。同じような経験をした人は、子ども心にけっこう傷ついたと思います。そんななかでは、自分に誇りや自信を持つのは難しい。

—謙遜するのが美徳とされる日本人ならではの受け返しですよね。

坪谷:私がアメリカの大学に行って驚いたのは、みんな自分を卑下しないことです。寮の交流会で、隣に座った女の子が「私の特技はピアノです」と言ったことがありました。その子がピアノを弾いているのを見たら『猫ふんじゃった』なんですよね。日本人だったら「プロ並みじゃないと『特技』なんて言えない」って思っているわけです。でも『猫ふんじゃった』だけでも、特技はピアノって胸を張れる社会なのだと驚きました。

反対に日本には、「一人勝ち」を目指そうとする欧米社会にはない、「みんな」という視点があります。この独自の視点は、おそらく地震のような自然災害の多い日本において、個人主義だけでは生き抜けないという思いやりの心からきていると思います。しかし、「みんな」のことは考えても「自分」を大切にする視点は足りてない。

私がインターナショナルスクールをつくろうと思ったのも、娘に自分を大切にする視点を身につけてほしいと思ったからでした。それは、「I am special! You are special!」と、自分も特別だし、相手も特別だと認めあえる場所です。でもその教育方針に合う幼稚園が当時の日本には見つからなかった。わが子のためにも、新たな教育の場をつくりたいと考えたんです。

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