早期英語教育はいらない? インターナショナルスクール理事長が本音で語る

早期英語教育はいらない? インターナショナルスクール理事長が本音で語る

2017年7月27日公開

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「言語」は文化や生活と切り離せないもの。だから小さいうちは日本の習慣をしっかり身につけてほしい
―娘さんがきっかけで、東京インターナショナルスクールはできたのですね。

坪谷:娘のために始めた学校には、海外出身の子どもを中心に集まるようになりました。彼らの親の多くは駐在員などをしており、仕事の都合で3、4年ごとに家族で各国を転々とします。そこで、どの国でも継続して勉強できるようにと、148か国で採用されている「国際バカロレア(IB)」の導入を本校でも決めました。

—「国際バカロレア(IB)」とは?

坪谷:幅広い探求力を育む学習カリキュラムが世界中どこでも履修できる国際的な教育プログラムです。世界共通の大学入試資格を得られ、グローバルな視点や多様性も身につくため、世界に4,846の認定校があります。

―日本でも2020年までに、200校で「国際バカロレア(IB)」を導入することを国もめざしていますよね。

坪谷:グローバル社会を視野に入れた親が増えたことで、世界的にもインターナショナルスクールが流行り、インターナショナルスクールに通う子どもの7、8割は、その国の子どもになっていきました。この学校をつくったときも、日本人の子がたくさん入りたいと言ってくださいました。

しかし日本は、子どもが日本国籍のみの場合、義務教育年齢のあいだは学習指導要領に従った一条校に通学させる義務が保護者にはありますし、教育法は遵守しなければいけません。

したがって、東京インターナショナルスクールで日本人国籍のみのお子さんは全体の5%程度。そのほとんどが両親の海外生活が長かったり、海外の学校から転入してきたりしている子です。そのため、日本の子どもたちには学校後に通える「アフタースクール(学童保育)」を用意しています。

―なぜ、「アフタースクール」という形態をとっているのでしょう。

坪谷:昼間は日本の小学校に通って母語の習得や基礎学力を身につけてほしいからです。義務教育の年齢、少なくとも小学校のうちは世界一難しいと言われている日本語を主軸にして、きちんと学んだほうがいいと私は考えています。

「日本の学校教育は遅れている」と言う人もいますが、素晴らしい点もたくさんあると思います。たとえば経済協力開発機構の調査によると、日本人の成人(16歳から65歳対象)による「読解力」「数的思考力」の平均点は世界24か国のなかで1位でした。ほとんどの人が新聞や雑誌を読めて、どこで買い物してもおつりは正確に計算してもらえる。日本では基礎学力を高める学習プログラムと環境が用意されているんです。

日本の文化や習慣を義務教育の過程で指導してくれる点も素晴らしいです。たとえば、小学校では掃除の時間があって、みんなで掃除をしますよね。しかし欧米は階級社会です。掃除は「掃除人の仕事」「移民の仕事」だと思われている。もしインターナショナルスクールでトイレ掃除を子どもにさせたら、すぐに「虐待だ」ってクレームの電話がかかってくると思います。家にお金があってもなくても、成績がよくても悪くても、平等に同じことに取り組むのは、世界中をみても日本にしかない教育だと思います。

―とはいえ、インターナショナルスクールに子どもを入れるとバイリンガルに育つのでは、と期待している親も多いと思います。

坪谷:完璧なバイリンガルは存在しないと思います。「坪谷さんはバイリンガルですね」と、よく言われますが、私は自分のことを日本語話者であり、その上に第2外国語として英語がのっていると思っています。なぜなら、言語は文化や歴史と切っても切り離せないからです。

たとえば「味噌汁」と言ったとき、日本人にとっては、季節の野菜などの具が入ったものも味噌汁ですよね。でも日本語を外国語として勉強した人からすると「味噌汁」は「豆腐とわかめ」が入ったものなんですね。私が外国人にナス入りのものを出すと、「これも味噌汁?」と驚きます。つまり、彼らは外国語の知識として「味噌汁」の文化を理解しているということ。

一つの料理を知識として覚えたのか、生活のなかの文化として学んできたのかで全然違ってくるのです。それくらい、言葉は文化や歴史と切り離せません。
英語習得には2,500時間を要する。その時間を与えるためにどうしたらいいかを考える
―では、英語を習得するためにはどのような方法があるのでしょうか。

坪谷:やはり言語の習得には時間をかけるしかありません。その時間は「学ぼうとする言語」と「母国語」がどれだけ言語的に離れているのかで違いがあります。

アメリカの国務省は、英語話者が海外に赴任する際、日常会話程度の外国語を習得するためにどれくらいの時間が必要なのかを集計しました。その結果、比較的近い言語であるフランス語やスペイン語が480時間なのに対し、日本語は2,500時間かかったというのです。

学術的に論文を日本語で書けるようになるには、5,000から6,500時間が必要になると言われています。つまり、日本人も外国語である英語を日常会話程度のレベルになるには2,500時間くらいを要するということ。しかし、日本の中学と高校の英語授業を合わせても800時間弱しか学びませんから、残りの1,700時間をどう埋めるのかです。

もし子どもに英語を話させたいなら、まず「何歳まで」に「どのレベル」にするのかを決めてください。たとえば、現在3歳のお子さんがいるとします。高校卒業の18歳までに日常会話で困らないレベルにするのであれば、「2500時間÷15年」と計算した場合、1年間で166時間英語を学ぶ機会をつくればいいということ。

その時間を与えるためにはどうしたらいいのか。どれくらいの予算をかけられるのか。うちのアフタースクールで小さい頃から身につけさせることもできますし、もし予算をかけられないのであれば、どうやったら安く済むのかを考える。そこでは親のリサーチ力が試されると思います。

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