【医師監修】人工授精と体外受精の不妊治療、気になる費用や違いは何?

【医師監修】人工授精と体外受精の不妊治療、気になる費用や違いは何?

Bu facebook
Bu twitter
医療技術を用いて妊娠の手助けをする不妊治療。治療を考えているご夫婦の中には、実際にどのような治療が行われるのか、治療にどれぐらいの費用がかかるのか、どれぐらいの効果が期待できるのかなどがよくわからず、治療を開始する決断ができずにいる人もいるのではないでしょうか。そこで今回は人工授精と体外受精についてご紹介します。







この記事の監修ドクター

なかむらレディースクリニック 中村容子先生

日本産科婦人科学会専門医、臨床遺伝専門医、抗加齢医学会専門医、女医+(じょいぷらす)所属。当院は、不妊治療・体外受精専門の婦人科クリニックです。患者様それぞれにあった、こころとからだに優しい生殖医療を提供いたします。
http://towako-nakamura.com/
人工授精の不妊治療と費用について

人工授精とは、精子の数や状態に異常があるケースや、子宮頸管内を精子が行き来しにくいと考えられるケース、性交障害がある、精子を異物として認識してしまう抗精子抗体を持っているケースなどで行われる治療法です。人工授精の治療方法や治療による妊娠の確率、費用についてご紹介します。
人工授精の治療法
人工授精とは一般的に、採取後に洗浄・濃縮した精子を細い管を使って子宮の中に注入することをいいます。状態の良さそうな精子を集めて、子宮の中まで移動させる手助けをするだけで、それ以降の受精・着床は自然妊娠と同じです。

人工授精では精子の注入を排卵の時期に合わせて行う必要があります。そのため、月経が始まった段階から次の排卵に向けての治療をスタートします。月経開始後、超音波検査や血液検査などで排卵日の予測を行います。状況によって、排卵誘発剤を使用する場合があります。

超音波検査で卵胞の成長を確認したり、血液検査でエストロゲン値や黄体形成ホルモン値の上昇を確認したりすることで、排卵日を正確に予測します。そして、特定した排卵日をもとに人工授精に向けて準備を行います。人工授精はなるべく排卵に近いタイミングで行うことが重要なので、排卵直前まで成長した卵胞が確認できるまでは、定期的に通院する必要があります。

男性は、人工授精を行う日に、自宅または医療機関で精液を採取します。採取した精液から、医療機関にて状態のよい精子を集めます。これらの精子を、細いカテーテルを使って子宮頸管を通じ、子宮腔内に注入します。

人工授精の処置にかかる時間は、通常1〜2分程度で、基本的には痛みも感じません。

人工授精を行った後は、いつも通りの生活を行うことができ、日常生活の中で何かを制限する必要はありません。

治療を比較的簡単に行えるほか、基本的には痛みがないことから体のストレスを感じることが少なく、治療後は普段通りに過ごすことができる点は、人工授精の利点であると考えられます。
妊娠の確率は?
人工授精で妊娠する確率は、平均で5~10%程度と言われています。ただし、正確には治療を受けた人の年齢や状態、医療機関によってばらつきが見られます。

1回の人工授精で妊娠する人もいれば、複数回行っても妊娠しない場合もあります。人工授精で妊娠した人の約90%が4~5回目までで妊娠していると言われていますので、人工授精を4~6回行っても妊娠しない場合は、体外受精などの高度な治療を視野にいれる方が妊娠への近道といえるでしょう。年齢の高い方や卵巣予備能の低い方、子宮内膜症をお持ちの方(手術を受けたことがある)などは、さらに早めに体外受精(顕微授精)を考える方が良いでしょう。

卵巣予備能とは、卵巣の中に残っている卵子数の目安のことです。AMH(アンチミュラリアンホルモン)値は、卵巣予備能を反映するとされています。卵子の数は、胎児のときの700万個をピークに、出生時には200万個、思春期頃には約30万個にまで減少します。1度の月経でおよそ1000個の原始卵胞が減少するといわれ、年齢を重ねるごとにその数はますます少なくなっていきます。基本的には年齢がすすむほど卵巣予備能は低下していくのですが、個人差がかなり大きく、稀に比較的若い方でも卵巣予備能が低下している方がいます。特にお子様をご希望されている場合、一度ご自身の卵巣予備能(AMH値)を知っておくと良いでしょう。

人工授精の費用は?
人工授精は保険適用外のため、費用は全て自己負担となります。かかる金額は治療の状況や医療機関によって異なりますが、人工授精1回につき約2〜3万円が目安です。
体外受精の不妊治療と費用について

体外受精は、体内での受精が難しいと考えられる場合に行う治療法です。卵管性不妊(卵管の通過障害、ピックアップ障害が疑われる場合)、受精障害、男性不妊、自然性交や人工授精で妊娠が成立しなかった場合、高齢、子宮内膜症、重症排卵障害、多のう胞性卵巣(PCO)、原因不明不妊などが適応です。次は、体外受精の治療方法や成功率、費用について説明します。
体外受精の治療法
体外受精とは、採取した卵子と精子を受精させ、受精卵になったものを子宮に戻して妊娠を目指す方法です。

それでは、体外受精が行われる流れはどのようになっているのでしょうか。

まず、多くの卵子を十分に成熟させた状態で採卵するために、内服薬や注射を使って卵巣を刺激します。卵胞の成長を超音波や血液検査で確認しながら、採卵する日を決定します。

採卵の2日前には卵を成熟させ、採卵を可能とするための薬を使用します。薬は、その日の21時〜23時頃に使用するのが一般的で、その約36時間後に採卵を行います。採卵日には超音波で卵胞を見ながらそれぞれの卵胞に針を刺し、卵胞液を吸引して採卵します。採卵当日は、精液も準備しておきます。精液は、自宅または医療機関で採取します。

卵子は培養液の中で確認し、精液からは運動性の高い精子のみを取り出し、それぞれを一緒にして受精を図ります。受精卵となったものを、専用の培養液で培養し胚にします。

この後、胚を子宮内に移植します。胚移植には受精後2〜3日後に行う「初期胚移植」と受精後5日間ほど培養してから移植する「胚盤胞移植」の大きく2つがあります。どちらを行うかは、これまでの治療歴や卵巣予備能、本人の希望や都合などを考慮して決定します。

胚盤胞は、体外で5~6日目まで育つことができた胚なので生命力が強いと考えられ、初期胚と比べると移植あたりの妊娠率は胚盤胞移植の方が高いです。ただし、体外での培養期間が長くなることで胚に何らかのダメージが加わり成長が止まってしまう可能性はあります。胚盤胞を目指しても全然到達しないとき、初期胚移植に切り替えて妊娠・出産する例があります。

培養した受精卵を、採卵と同じ周期に胚移植を行うケース(新鮮胚移植)のほかに、成長した胚を凍結保存しておき、適切なタイミングで融解して移植する「凍結融解胚移植」という方法があります。この方法では子宮内膜の状態を整えてから移植することが可能なので、より妊娠の確率が高いとされています。

胚移植後は黄体ホルモンの補充を行います。胚移植から約2週間後に、尿検査や血液検査によって妊娠の有無を判定します。

また、精液の状態が良くない場合や通常の体外受精で受精が困難な場合には、顕微授精を行います。顕微授精とは、顕微鏡下で、細いガラス管を用いて精子を卵子に直接注入して受精を図る方法です。通常の体外受精では、1つの卵子に対して約10万の精子が必要ですが、顕微授精では、1つの卵子に対して1つの精子でも妊娠が可能となり、重度の乏精子症や受精障害でも妊娠が可能となりました。

体外受精では、ホルモン薬の投与や採卵のための卵胞穿刺などを行うため、治療の中で副作用や合併症などがいくつか考えられます。身体の様子に異常を感じた際には、医療機関に相談することが必要です。
妊娠の確率は?
体外受精の妊娠率は、女性の年齢によって異なります。2012年の日本産科婦人科学会のデータでは、35歳以下では、移植あたりの妊娠率は約35〜40%ですが、40歳で約25%、44歳で10%以下となり、年齢を重ねると妊娠率が低下することがわかります。また、培養環境や技術は施設によって異なり、医療機関によって結果に違いがでる可能性があります。

体外受精の費用は?
体外受精・顕微授精は保険適用外の治療法なので、かかる費用は全て実費払いとなります。費用は、卵巣刺激法や採卵、培養、胚移植などの方法で大きな開きが出てくるほか、施設によっても大きく異なります。治療を受ける前に、それぞれの施設の料金表などで確認してみてください。

不妊治療をサポートする制度は?

人工授精と体外受精・顕微授精は保険適用外なので、費用は自己負担となり、特に体外受精や顕微授精では、高額になることがあります。不妊治療はこういった金銭的負担がネックとなり、子供を望んでいても諦めてしまうご夫婦も多いかもしれません。しかし、諦める前に知っておきたいのが金銭的負担を軽減してくれる助成金制度です。次は、不妊治療の助成金制度についてご紹介します。
不妊治療の助成金制度
国には、「特定不妊治療費助成制度」という不妊治療を対象とした助成金制度があります。これは、自治体に指定された医療機関で体外受精または顕微授精による不妊治療を受けた人を対象に、費用の一部を助成する制度です。

同制度では、1回の治療にかかった費用に対して15万円(初回は30万円)までの金額を助成してもらえます。凍結胚移植など採卵を行わない治療については、いずれも7.5万円までの助成となります。

助成の回数は、1回目の助成を受けた時点での女性の年齢が40歳未満である場合は通算6回、40歳以上の場合は通算3回までとなっています。

助成金の申請は、提出に必要な書類を用意して各自治体の受付窓口で手続きを行います。申請の受付には期間が設けられているので、事前に確認しておきましょう。

また、助成金の受給対象や内容は、各自治体で随時変更されることがありますし、条件(所得制限の有無など)は自治体によって異なります。自治体のホームページなどをこまめにチェックしておくことをおすすめします。
43歳以上の方は注意
同制度で気をつけておきたいのが、利用するには年齢制限があるということです。女性の年齢が43歳に達している場合は助成金を受け取ることができません。

そのほかにも、法律上で婚姻している夫婦であることや、地域によっては夫婦合算で年間所得が730万円未満であることも助成金を受けられる条件となっているので、注意が必要です。

まとめ
不妊治療には検査も含めさまざまな内容があるため、精神面や身体面の負担がよぎり、不安を感じて決断を先延ばしにしてしまうことがあるかもしれません。しかし、妊娠の確率は年齢とともに低下していきますし、治療の効果も年齢とともに下がってきます。また、助成金対象外の年齢になると経済的な負担も重なってくるため、不妊治療はやはりできるだけ早い時期に実践した方が良いと考えられます。ぜひ、夫婦で話し合いながら検討してみてください。

関連リンク
大和田美帆さん「子育て、どうですか?」と聞いてもらうことのメリット | マイナビウーマン
【医師監修】陣痛と微弱陣痛の違いって? 主な原因と処置の方法 | マイナビウーマン
【医師監修】発達障害って遺伝するの? 環境要因? 適切な向き合い方とは | マイナビウーマン
元のサイトを見る

関連する記事

この記事のキーワード

RANKING
YESTERDAY

WHAT'S CHIENOWA?

staff_pickup