子どもの食育②なぜ、いま「食育」がブーム? 現代人に足りない意識とは

子どもの食育②なぜ、いま「食育」がブーム? 現代人に足りない意識とは

2017年6月26日公開

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自然や農業と触れ合い、四季の移り変わりや人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動「グリーン・ツーリズム」。「農業体験って、子どもの教育にいいの?」「田舎で暮らすってどういうメリットがあるの?」など、子どもたちと食をめぐるさまざまな問題を親子で一緒に考えていく連載です。今回は農林中央金庫の小畑さんに、ご自身の食育体験を交えながら、いまの子どもたちが抱える「食」離れについて執筆いただきました。

写真提供:農協観光
執筆者プロフィール

小畑 秀樹(おばた ひでき)
農林中央金庫 営業企画部 副部長。証券投資と農林水産業投融資に携わる。現在は、最新テクノロジーの日本農業への応用、日本食材の海外輸出支援、食品企業の戦略立案サポートを中心に手掛ける。家族は妻と娘2人。
「食育」とは何か。一杯のてんぷらうどんが教えてくれたこと
世間で「食育」という言葉が流行りだしたのは、「食育基本法」が施行された2005年ごろ。「子どもの食育のために、一緒に料理をつくりましょう!」「食育で栄養バランスの良い食事を摂ることが大事だと、子どもたちに教えましょう」といったことが推奨されるようになりました。子どもと一緒に料理をつくる、というテーマの食育関連本が多出し、世間ではそれが「食育」であると認識されています。

私にとっての「食育」のルーツは、小学校5年生のころに受けた社会科の授業でした。先生に「てんぷらうどんの材料はどこからきているのか調べてきましょう」と宿題を出されたときのこと。うどんの原材料は小麦粉ですから、アメリカやオーストラリア産。てんぷらのエビも多くは海外の養殖ものでした。日本の食べ物である「てんぷらうどん」の大部分が、じつは外国産であることにびっくりしました。

では国産の材料が使われてないのかというと、ネギなどの野菜のトッピングや、つゆの原料である醤油、つまり大豆は国産のもの。調べていたらどんどんおもしろくなり、私は日本の食品消費について調べ始め、1981年(昭和56年)当時の日本は食料自給率が約50%ということにたどり着きました。これは小学校5年生の私にはかなりの衝撃でした。子ども心に、「もし食べ物を運んでくれる船が日本に来られなくなったら、ぼくらは飢え死にしてしまうのではないか」という恐怖を感じたのを覚えています。

クラスメイトも同じようなことを考えたらしく、翌日の授業では、このことでもちきりでした。「日本はお金持ちだから、世界のだれかが食べ物を売ってくれるはず」という子もいれば、「テレビでやっているように、石油が来なくなることのほうが心配。食べ物は日本の土地でなんとかつくれるけど、石油は日本ではとれない」などという子も。この体験のおかげで私は「食料安全保障」に強く意識を割くこととなり、農業と食品産業に携わるいまの仕事に就いています。
なぜ、食育ブームに? 暮らしやすさが生んだ、現代っ子の「食」離れ
いまから36年前からすでに食にまつわることは授業でも行われていました。では、近年「食育」という言葉が生まれた背景には一体何があるのでしょうか。

おそらくは、子どもたちにとって「食」というものが、積極的に教育すべき内容になってしまった。つまり、教育しなければ身につかないものになってしまった、ということ。これは「食」と現代人の距離が遠ざかっていることの表れなのかもしれません。

近年、食に関するインフラが構築され、食材の買い出しとなれば、スーパーやコンビニで手軽にすませられるようになりました。子どもが普段、目にする「食」は、お店のバックヤードできれいに処理されたタラの切り身や、パック詰めのフルーツトマト。そして、季節に関係なくほぼ同じ品目の野菜がそろっています。商店街の魚屋や八百屋が盛んだった時代は、季節にあった旬の食材が加工されることなく店頭に並んでいたものです。

いまや子どもたちは、あえて教えないと、自分が食べているものの加工前の姿がどういう色や形をしているのか、本来、夏野菜なのか冬野菜なのか、などを知る機会がないのです。便利さと引き換えに、食の消費側である私たちと、食の供給側である生産者とのあいだに距離ができてしまっています。これからは、食物を育てるところからしっかりと関わること、これが大事なのではないでしょうか。

食材だけでなく、「調理」をする機会も減っています。いまはどこにでもコンビニがあり、調理済みのおいしい総菜が手ごろな値段で24時間入手できますよね。そんな環境だから、調理の必要性自体がなくなってしまったのです。

いまの若者たちは、学校の家庭科で実習する以外、調理経験がないという人も少なくないと思います。日曜大工をしなくなったお父さんが、ちょっとしたことでも工務店に頼るようになったように、調理に関しても、飲食店や食品会社がするもので、自分でやることではないと考える家庭も増えているかもしれません。まさに「食のアウトソーシング」が主流になる時代が案外近くまで来ているような気がします。

食と子どもたちの距離を近づける「農業体験」を取り入れる
「農」と「食」はバリューチェーンの両端にあります。食品の流れを川の流れでたとえると、最上流にあるのが「農」で、バリューチェーンという川を下りながら、中流部分の「加工・卸」を経由して、消費者にもっとも近い、川下の「小売り」に流れ着きます。これまで「食」の問題として申し上げてきたことは、このたとえでいえば、「川下」に近い部分のお話です。

失われつつある「食」への嗅覚の防衛作用として、いま世の中で「食育が大事だ」と本能的に叫ばれているのはないでしょうか。

食のインフラ整備も食育という言葉も、日本人が選択して歩んできた日本経済の発展の結果です。もちろん、昔が良くていまが悪いということではありません。むしろ、利便性のいい現在のほうが良いはずなのです。ただ、かつて農業を通じて自然と得られていた「食」に関する知識を現代の子どもたちが身につけるには、農業に触れる経験が必要なのではないかと感じています。知識をつけることで食に対する興味も広がり、テレビのニュースや社会の授業も、自分ごととして捉えられるようになるのではないでしょうか。

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