6歳までの教育が重要。「まちの保育園・こども園」の創造力を育む教育法

6歳までの教育が重要。「まちの保育園・こども園」の創造力を育む教育法

2018年2月28日公開

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代々木公園のなかに、認定こども園があるのを知っていますか? 2017年に開園したばかりの「まちのこども園 代々木公園」では、子どもたちが公園で元気良く走ったり、木の棒を集めたりと、思い思いの時間を過ごしています。そんな子どもたちの様子を、散歩で訪れた地域の人々が、ほほえましく見守る。ここにはそんな光景が広がっています。

都内4か所で展開する「まちの保育園」「まちのこども園」は、子ども主体のまちぐるみの保育を理念としており、園内にアトリエやコミュニティースペースだけでなく、ベーカリーカフェや本屋も併設するなど、地域に開かれた保育園を運営しています。子どもたち自身の学びたいことに寄り添い、子ども主導の学びの場を大切にしているのです。

今回は、待機児童問題の解消に向けて、各地で保育園の新設が進むなか、「まちの保育園」「まちのこども園」の運営を通じて新しい教育づくりに挑戦するナチュラルスマイルジャパン株式会社代表の松本 理寿輝(りずき)さんにお話をうかがいました。子どもの考える力に大きな影響を与える6歳までの子どもとの向き合い方、就学前の子どもたちに必要な学びとは? これからの子育て、保育を考えるうえで重要なエッセンスが詰まったインタビューです。


取材・文:山本 ぽてと 撮影:南 阿沙美
プロフィール

松本 理寿輝(まつもと りずき)
1980年生まれ。1999年一橋大学商学部商学科入学。ブランドマネジメントを専攻する傍ら、レッジョ・エミリア教育に感銘を受け、幼児教育、保育の実践研究を始める。大学卒業後、博報堂、フィル・カンパニー副社長を経て、現在はナチュラルスマイルジャパン株式会社の代表取締役。2011年4月「まちの保育園 小竹向原」を開園。「こどもも地域も生きるコミュニティーづくり」を目指し活動を行う。2017年10月に「まちのこども園 代々木公園」を開園し、2018年2月現在、東京都内で5園の運営を行っている。
子どもたちが多様な人と体験に出会える、まちに開かれた保育園・こども園
—代々木公園の真ん中に認定こども園があるなんて知りませんでした。

松本:園はあくまで子どもたちのための場なのですが、地域の人たちも訪れられる場にしていきたいと思っています。その想いを込めて玄関を土間にしているんですけど……冬は寒いですね(笑)。囲炉裏はあるんですけれども。

—こども園で囲炉裏とは、かなり珍しいですね。

松本:先日、子どもたちが囲炉裏に火を入れるイベント「火入れ式」をやって、子どもたちと「暖かいねぇ」なんて言いながら過ごしました。保護者の方や地域の人たちも集まれる、みんなで暖を取る場所にしていきたいですね。

玄関にある囲炉裏
—「まちの保育園・こども園」のコンセプトである「地域に開かれた」というのは、こうした園のつくりからも感じます。一方で、囲炉裏ではやけどをするかもしれませんし、地域の人とかかわることで犯罪に巻き込まれるリスクがあります。開かれた保育とリスクとの関係をどのように考えていますか?

松本:保育は常にリスクと向かい合いますが、そのリスクには2種類あるんです。ゼロにすべきリスクと、価値との見合いで取るリスクです。

まず、大きな事故やアレルギー事故などは絶対起こしてはいけません。これはゼロにするべきリスクです。一方、たとえば、木登りをしている子どもがいたとしましょう。もちろん、落ちてしまう可能性はゼロではありませんが、子どもの豊かな実体験のために、その子の個性や育ちを見ながら、マネジメントすることも必要です。これが価値との見合いで取るリスクです。

こうしたリスクの違いを認識しながら、子どもの育ち・学びのために活動を進めており、開かれた保育はその後者のタイプのリスクをマネジメントするものであると捉えています。子どもたちがさまざまな人たちとの関わりのなかで育まれるメリットはとても大きいと私たちは信じているのです。

松本 理寿輝さん
—正しくリスクマネジメントを行うことで、子どもたちの体験をより充実したものにしていけるのですね。

松本:保育園やこども園に通う年ごろの子どもに必要なのは、「良い出会い」と「実体験」だと考えています。この時期の子どもたちは人との出会いを通じてさまざまなことを学んでいきます。

0歳から6歳までの子どもは言葉をたくさん知っているわけではありません。自分の体験や近くにいる信頼関係を持った大人をよく見て吸収し、知っていることの組み合わせから学習を進めていくのです。

人の動作や考え方のクセなんかも、良いと感じたものは吸収し、フィットしないものは排除して、子どもたちなりに理解して自分のものにしていく。だから、地域と関わることで子どもたちは多様な人と出会い、学んでいくことができます。

—地域には子どもを育てる力があるのですね。

松本:いまは社会構造も変化して、共働き家庭も増えていますから、子どもは社会のなかで育っていけると良いのではと考えています。

「3歳児神話」という言葉があるように、乳幼児期の過ごし方が重要なのはその通りです。しかし、必ずしも家族だけで育児を行う必要はない。保育園と連携を取りながら子どもを育てていけばいいと思います。

日中に子どもを保育園に預けることで、保護者は子育てから少し離れて、自分の時間を確保することができます。そのようにバランスをとりながら精神的な安定を維持することも、子どもの養育にとって重要です。頼れる部分は頼りながら、安心して保育園を活用してほしいと思っています。

2017年10月に開園した「まちのこども園 代々木公園」。代々木公園内の広場が園庭の役割を果たしている
これからの教育では、「なにを教わるか」よりも「なにを学びたいか」が重要になる
—まちの保育園は「レッジョ・エミリア教育」から影響を受けている部分があると聞きました。これはどのような教育なのですか?

松本:まちの保育園はレッジョ・エミリア教育のアプローチをそのまま導入しているわけではありませんが、一部で共通の理念を持っています。

ひとつは、先ほどお話したように「地域みんなで子どもを育てる」こと。もうひとつは子どもたちの興味関心から学びを深めることです。「なにを教わるか」ではなく「なにを学びたいか」に注目し、教え方ではなく、学び手の主体性を尊重し、支援していくことを重視しています。

土間から着想を得たエントランススペースには園児が制作した作品が飾られている
—いま注目を浴びている「アクティブラーニング(※)」ですね。主体性を重んじる利点はどこにあるのでしょうか。

※文科省が新学習指導要領で推進している学習法。主体的、対話的で深い学習環境を目指した学習法として世界的に注目が高まっている。2018年より全国の幼児教育に取り入れられ、2020年には小学校の授業にも導入される予定

松本:従来の詰め込み型の教育よりも学びが深くなる効果があります。小学生にもなれば授業型の教育から学ぶことが可能ですが、未就学の子どもたちの場合は、実体験を通して学ぶ「経験カリキュラム」が適しているとされています。

たとえば「チョコレートについて調べてください」と課題を出されたとしても、興味を持てなければ学びは深くなりませんよね。ですが「チョコレートが好きな友人に誕生日プレゼントを送るために」と考えたら、調べることに意欲が湧いてくるでしょう。

人間は自分に関係のあることのほうが学ぶ意欲が喚起されるといわれています。なので、アクティブラーニングのように学びたいと思える動機を用意してあげることが重要なのです。

さらに、子どもたちは満遍なくいろんな経験をするよりも、1つのものを深く学ぶことで、別の領域でも深く学ぶ傾向があるという研究結果もあります。私たちは日常的に、子どもの興味関心を読み解きながら、学びを丁寧に組み立てていくことを大切にしています。

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