6歳までの教育が重要。「まちの保育園・こども園」の創造力を育む教育法

6歳までの教育が重要。「まちの保育園・こども園」の創造力を育む教育法

2018年2月28日公開

Bu facebook
Bu twitter
子どもの考えを肯定し、受け止めることで「主体性」が育っていく
—具体的にどのような取り組み方をしているのですか?

松本:まずは朝の会で、その日にやりたいことを自分たちで決めてもらいます。そして小グループに分かれ、それぞれの興味のある活動に取り組んでいきます。

たとえば、こんなことがありました。5歳の女の子たちのグループが、自分たちで美術館をつくることを思いついたのです。『美術館ってどんなところ』(フロランス デュカトー 著 / 西村書店 )という本が保育園に置いてあったことがきっかけでした。

子どもたちは、美術館がどんなところかみんなで知識や経験をシェアしながら、自分たちの美術館づくりを進めます。題材は、子どもたちの対話から、「葉っぱ」「石」「他、貝など自然物」をコレクションした美術館になっていきます。

収集が終わったら、展示の方法も話し合います。その対話のなかから、美術館の「看板」が必要ということが決まり、「ビニール傘」に絵を描き、天井からぶら下げる方式が採用されます。また、以前に園で作品を展示したときに、台紙の上に置いたら作品が目立ち、大事にされているような気持ちになった経験を思い出してか、「じゃあ、葉っぱや石の下に白い紙を敷いてみよう」と子どもたちから意見が出ます。

—子どもたちから「こうしたい」という意見がどんどん出てくるのですね。

松本:それぞれの作品には、作品名を記載したキャプションが用意されていたのですが、子どもたちが文字を書けるのにも理由があります。一時期園内で「手紙」を書くのが流行ったことがありました。そのときの経験から、文字を書ける子どもが多いのです。このような経験が折り重なって、美術館の展示に至りました。

さらにこの美術館には「招待状」と「チケット」が必要だという意見も子どもたちの話し合いから出てきたようで、自分たちでデザインした「招待状」を、いろいろな人につくっては手渡していました。

ある女の子が、ぼくに「招待状」をくれたのですが、その招待状にぼくは驚かされました。その女の子は、青いグラスに水を入れ、そこに葉っぱを浮かべる展示方法を思いついた子でした。その「表現」も素晴らしいのですが、「招待状」にはもっと魅了されました。こんなことが書いてあったのです。

「いしはちいさいいしだとみずにうかんで、おおきいいしだとしずみます。あなたたちはいしのきれいななかをみたことがありますか。はっぱはどんなにおおきくてもみずにうかびます。つちからできたものはしずんで、うえにできているものはうえにできてうかんでいるようにみえるのでうかびます。つちにできているものはしたにいっているのでしずみます」

素敵ですよね。水に石を入れると、小さいものは稀に浮かぶこともあるけれど、基本的には水中に沈む。しかし、葉っぱはどんなに大きくても浮かぶ。このことを彼女は不思議に感じたのでしょう。そこで彼女は自分なりに考え、このような「仮説」を立てたのだと思います。「日ごろ目にする風景では、石は地面に転がっていて、木についている葉っぱは浮かんでいるように見える。そうか、それはもしかしたら、水中でも同じ原理が働くのかも」と。

—面白いですね。古代の学者のような想像力です。

松本:彼女は浮力や重力の概念に気づき始めているかもしれません。そのとき、私たちが「科学的に正しいとされていること」を直ちに彼女に共有してはもったいない。子どもたちの思考、仮説、アイデアを「面白いね」と喜んで受け止め続けると、ますます豊かな思考やアイデア、そしてクリエイティビティーが溢れてくるんです。いずれ子どもたちも「沈んでいる葉っぱ」を見つけるかもしれませんが、そのときはその実体験をふまえて、過去の仮説を更新すればいい。

このエピソードで伝えたいのは、私たちの実践の良し悪しではなく、子どもたちは本来的に素晴らしい力を持っているということです。思考して、仮説を立て、表現して人に伝える。これからの時代に必要な能力ですよね。子どもたちを信じて主体的に学ぶ環境をつくっていくことが、これからの時代に必要な「アクティブラーニング」の本質だと思うのです。

関連する記事

この記事のキーワード

RANKING
YESTERDAY

WHAT'S CHIENOWA?

staff_pickup