一生をかけて「楽しい」を追求していきたい。土とともに生きる陶芸家【100人100色】

一生をかけて「楽しい」を追求していきたい。土とともに生きる陶芸家【100人100色】

陶芸家・既婚

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いろんな女性の働く・暮らすを知ること『100人100色』 Vol.36

それぞれの立場、個々の考え方によって「働く」ことへのスタンスは異なります。正解なんてありません。
「100人100色」では、100人の「働く女性」に登場いただき、等身大の姿を語っていただきます。年齢、環境、キャリア全ての背景が異なる人たちの100とおりの『想いや生き方』の中に、きっとあなた自身にとってのヒントが見えてくるはずです。

今回は岐阜県土岐市在住の陶芸家、藤居奈菜江さんをご紹介します。高校時代に陶芸の面白さに目覚めた藤居さんですが、そのまま陶芸の道に進んだのではなく、あちこちに寄り道をしながら模索の時期があったといいます。今は陶芸家として多忙な日々を送る藤居さんの、これまでの道のりと現在、これからの夢を語っていただきました。
陶芸家として活躍する藤居さん。これまでの仕事の道のりについて教えてください。
高校一年生の時に中退し、入り直したのがセラミック科やデザイン科を有する信楽高校でした。とても自由で居心地のよい学校で、そこで陶芸と出会いました。短大では彫塑を専攻しましたが、ずっと陶芸の仕事に憧れていました。そして卒業後、土も練れない状態で信楽の工房に飛び込み、1年間働かせてもらいました。

工房の先輩が「陶芸はいくつになっても 戻ることができる。20代は いろんな事をした方がいいよ」と言っていて、その言葉に納得しました。そこで、憧れていた美容師さんの下につき、美容院で2年働きました。でも、自分には向いていないということに気づき、その後はしばらくホテルのウエイトレスをしながら自分探しの状態が続きました。

26歳の時に京都にある陶芸の訓練校に入りました。そして半年後に出会ったのが、岐阜県多治見市にあるギャルリ百草を営む陶芸家の安藤雅信氏でした。翌月に学校を辞め、多治見に住みながらアシスタントを5年半続けて32歳で独立。同時に結婚し、全国各地で個展、グループ展、クラフトフェアなどに出品しながら作陶を続け、現在に至ります。

全国各地で作品の展示販売を行っている
これまでで一番忘れられない仕事のエピソードをお聞かせください。
安藤雅信氏のアシスタント時代、独立をめざしてクラフトフェアに出品した時のことです。同世代の女性のお客様がいらっしゃって、私の作品を見て「すごく欲しいけど……お金に余裕がなくて……」と仰いました。そして、非常に長い時間をかけて悩んだ後に、作品を買ってくださったんです。

その時「こんな想いで買ってくださったんだから、責任を持って頑張らないと」と、独立を決意しました。いろんな方が、日々の労働で得たお金を私の作品に使ってくださる。そのことにちゃんと向き合って努力しなければ、と覚悟を決めたできごとでした。
これまでにぶつかった人生の壁はありますか?
夫も私も個人作家です。今、私の方が仕事が忙しく、仕事と家事の両立が難しくなってきました。それまで私も夫もお互いに「妻は家事をして、夫は仕事をする」という感覚があったと思います。でも実際は、夫は家事が好きで得意だし、私は家事が苦手で仕事が大好き。思い描いていた生活と現実にズレが生じてきて、お互いにうまく行かず、何だか悶々としていた時期がありました。だから、いつも一緒にごはんを作り、洗濯も一緒にしていました。
結婚から6年経ちましたが、その間に何度もよく話し合い、お互いを理解できるようになりました。そして「お互いが支え合うために、得意な方を頑張ろう」という結論になりました。
今は私が仕事で忙しく、夫に家事を任せている時間が長いのですが、この先の人生でどうなるかは分かりません。その時々に合わせて、二人で協力すればいいんじゃないかと思えるようになりました。

夫は一番の理解者
お仕事での悩みはありますか?
冬が来たことが悩みです(笑)。
陶芸の仕事は、冬がもっとも過酷なんです。水を使うことが多いので、水が冷たいのが辛いですね。手は荒れるし、土も非常に冷たくて、粘土が凍ってしまうこともあります。作ったものが凍るとダメになりますし……作ったものを乾燥させるのにも時間がかかり、手間が増えます。
また、寒いと肩が凝ったり、腰が痛くなったりするんですよね。冬になると仕事が憂鬱になってしまいます。でも、春に展開していく器は冬から準備しないと間に合わないので、両足と腰と背中にいつもカイロを貼って頑張っています(笑)。
これからチャレンジしてみたいことはありますか?
大きな作品を作りたいですね。大きな作品は、技術も必要ですし、根気も勇気も体力も時間も必要です。今は日常のことで精一杯なので、なかなかチャレンジする余裕がありません。
それから、土以外の表現方法にも取り組んでみたいです。陶芸だけにこだわって生きていくのではなく、表現として色んな素材を使ってモノづくりをしてみたいという思いがあります。
仕事している藤居さんを色にたとえると?
夫から見ると、仕事をしている私はメラメラ燃えている赤なんだそうです。確かに仕事に対してちょっと欲が深く、メラメラもしていますが……仕事をすることは心が癒されることでもあるので、赤と淡いピンクでしょうか。
藤居さんのプライベートについてお聞きします。現在のお住まいはどんなところですか。
岐阜県土岐市に住んでいます。とても理想的な借家で、縁側がある平屋の広い一軒家。自宅に広い工房と窯も付いています。庭も広くて、友達をたくさん呼んでパーティをすることも多いですね。

夏に庭で開いた友達の結婚パーティ。参加した子どもたちのために、流しそうめんを用意した
生活の中でのこだわりやお気に入りのモノはありますか?
夫と買い集めている、いろんな作家さんの食器や絵、作品です。あと、お互い籠や布が好きで籠や布をついつい買ってしまいます。
いろんな地方の味噌を買うのも好きですね。味噌が好きなので……友達と集まって味噌やキムチを作ることもあります。

お気に入りの食器棚に、夫と買い集めた器を並べている。
息抜きやストレス発散の方法を教えてください。
近くの温泉に行き、好きなしめ鯖や餃子を食べてぐっすり寝たら、だいたいのことはOKです(笑)。
あと、部屋の模様替えや掃除ですね。キレイになると頭の中のモヤモヤがスッキリします。部屋の模様替えは頻繁にしています(笑)。自宅と仕事場所が近いので、模様替えをすると、新しい気持ちで仕事も家事も楽しめるんですよ。
幸せだと思う時間や瞬間はどんなときですか?
陶芸の仕事をしている時。この時間を過ごせる事がたまらなくありがたくて、幸せな気持ちになります。あと、家族みんなで食事をしながら会話をしている瞬間も、最高に幸せを感じますね。
藤居さんの人生で大切にしていることは何ですか?
「楽しい!」と感じながら生きているかということ。それから、夫の家族や私の家族と過ごす時間。なかなか仕事に追われてできていないんですが……

あと、歳を重ねるにつれて「もっと話せばよかったなぁ」と思うお別れも経験するようになりました。それからはできるだけ、逢いたい人に会いに行くことを大切にしています。
あなたが「こうありたい」と思う姿について教えてください。
ずっと望んでいた生き方が、今はすべて叶ってしまいました。このまま歳をとって、一生楽しいことをして生きていきたいですね。そのために、今できることには手を抜かずに、精一杯楽しんで頑張っています。
ぽってりとした質感に優しさの感じられる作品には、藤居さんのおおらかな生き方がそのまま表れているようです。「働くことは生きがい。」と語る藤居さん。現在は陶芸家として活躍中ですが「土以外の表現方法にも取り組んでみたい」とのこと。素材にこだわらない表現がどんな風に形になっていくのか、これからが楽しみです。

いろんな女性の働く・暮らすを知ること 『100人100色』は、SAISON CHIENOWAとケノコトとの共同記事です。

「日常の食のコト」で暮らしを楽しくするライフスタイルマガジン
ケノコト
http://kenokoto.jp/
藤居さんのお仕事関連のサイトこちら
FUJII FAMILY (藤居家)  
http://www.fujii-family.com/nanae

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