子どもの食育③親子で学ぶ世界の食糧事情。家族会議で「できること」を考える

子どもの食育③親子で学ぶ世界の食糧事情。家族会議で「できること」を考える

2017年7月20日公開

Bu facebook
Bu twitter

「野菜を好きになってもらうには?」「農業体験って、食育にいいの?」など、親にとって子どもの食をめぐる課題は多々あります。本連載では、「子どもと食育」をテーマに親が知りたい疑問や悩みを解決していきます。

執筆いただくのは、前回に引き続き、農林中央金庫の小畑秀樹さん。今回は世界規模で「食」の課題について考えてもらいました。日本人である私たちには無縁と思われがちな「飢餓問題」は、案外身近な出来事なのかもしれません。食卓を囲みながら、家族みんなで世界の食環境について学んでみませんか?

写真提供:WFP(国連世界食料計画)、株式会社農協観光
執筆者プロフィール

小畑 秀樹(おばた ひでき)
農林中央金庫 営業企画部 部長。これまで証券投資と農林水産業投融資に携わる。現在は、最新テクノロジーを日本農業に応用するほか、日本食材の海外輸出、食品企業の戦略立案サポートを中心に手がける。また、プライベートではWFP(国連世界食糧計画)の日本の支援団体に所属し、世界の飢餓問題などを子どもたちに伝えるボランティア活動に参画している。家族は妻と娘二人。
「食べ物を残すと、なぜもったいないの?」と子どもに聞かれたら、何と答えますか
「残さず食べなさい! 食べ物がもったいないでしょ」。わが子の偏食につい目くじらを立て、このように怒ってしまうお母さんは多いのではないでしょうか。恵まれた現代の日本では、「食べ物を残すともったいない」という感覚は大人でさえ曖昧で、子どもたちになぜダメなのか、なぜもったいないのかを身をもって理解させるのは難しいのかもしれません。

私が参加している、WFP(World Food Programme / 国連世界食糧計画)は、「飢餓のない世界」を目指して活動する機関です。戦争や自然災害などの被害にあった世界中の人たちに、食糧を届ける活動などをしています。その一環で、日本の小中学生、高校生を対象に、世界の飢餓の状況を伝えるボランティアも行っています。今回はそのボランティア活動で使っている世界地図を紹介したいと思います。
世界の食糧事情を表した「Hunger Map」を使って親子会議
小中学生、高校生に向けてWFPが作成した世界地図「Hunger Map(ハンガーマップ)」が、ウェブサイトからダウンロードできますので、ぜひご覧になってください。お子さんと一緒に食べ物の価値について考える「親子会議」に役立ててもらえればと思います。

「Hunger Map」。WFPが「世界の食糧不安の現状2015」の統計に基づいて作成したもの
この世界地図は、栄養状態の悪い国や地域が濃く色づけられています。お子さんに「これは一体なんの地図だと思う?」と聞いてみましょう。社会科が好きな子であれば、濃い色の国がアフリカに多いと、すぐにわかると思います。そこから食糧難の問題を連想する子もいるかもしれません。

ただ、わからない子ももちろん多くいます。そもそも恵まれた日本で育った子どもたちが「飢餓」に興味を持ちにくいのは当たり前のこと。「飽食」と言われる日本にずっと暮らしていたら、同じ地球上に「食事をしたくてもできない人」がたくさんいるなんて、想像もつきません。

この地図が「世界の飢餓状態を表す地図」だとお子さんに説明したら、次に「いま、世界に一体どれくらいの人が飢えで苦しんでいると思う?」と問いかけてみましょう。……その答えは約8億人。なんと、全人口のうち9人に1人が十分な食糧を得られていないということ。そして8億人という数字は日本の総人口の数倍に達しているということがわかります。

世界で8億人が食べ物に困っている状態はなぜ起きる? 想像力を働かせて考えてみよう
なぜ、このような事態が起こるのか。その原因に関してはさまざまです。自然災害や紛争によって流通網が遮断されて起きる、急性的な飢餓も存在します。ほかに、「国の民度」問題もあります。国民からの異議が届きやすい民主主義の国では、政府がなんらかの対応をとるので飢餓が発生しにくい。しかし、問題発生時の政府の対応の不手際が黙認・放置されてしまう国では、きっかけが自然災害などの天災だとしても、飢餓が発生してしまうことがあります。

また、「農業生産(商品作物)活動」の問題もあります。たとえば、アフリカの農地で作物を育てている人はたくさんがいます。しかし、自分たちが食べるためではなく、他国の企業に安く売るために「商品作物」をつくっていることがほとんどです。農業に従事する人が、収入の低さのため飢餓に陥るという現象が起こっています。これはアフリカに限った話ではありません。

さらに穀物は十分に生産されているにも関わらず、その大部分が人ではなく、牛や豚などの家畜の餌にまわされているという現実があります。なぜならば、先進国を中心に多くの人々が肉料理を好むため、家畜の生産が追いついていないから。つまり世界的に多様化する食生活が「飢餓問題」の深刻化につながっていることもあるのです。

そして、ここからが子どもたちに伝えるうえでもっとも大事なこと。
「ぼくには関係ない?」(So what ?)
「ぼくたちになにができるのか?」(Now what ?)
この2つを、ちゃんと考えてもらうことです。

1つ目の「ぼくには関係ない?」は、まさに先ほどの遠いアフリカの食糧問題が、じつは私たち日本人の食と間接的につながっていること。そして、飢餓はそれに苦しむ人々が自ら進んで引き起こした事態ではないこと。そして、自分が飢餓に直面していないのは、「たまたま」違う境遇に置かれているだけということ。それを感じてもらいたいのです。

ここまで理解することができたら、2つ目の「ぼくたちになにができるのか?」を一緒に考えましょう。飢餓について学んだ子どもたちは、「自分たちになにができるのか?」という問いにどんな答えを返してくれるでしょうか? 「給食を残さず食べる」とか、「WFPなどの団体に寄付をする(あるいは寄付活動を手伝う)」とか、「将来の問題解決のために勉強する」だとか、まずは自分に身近なことを提案してくれるでしょう。それで十分です。

世界の飢餓問題は、食育の大事なテーマの一つ。「なにができるか」、私たち大人が考える
さて、食育の範囲を、「自分でよい食事を選択できる子どもに育てること」に絞っている方にとっては、食育と世界の飢餓事情に何の関係があるのかと思うかもしれません。しかし今回の話はある意味、食育の大事な部分だと思っています。

「農業」は、よりよい食生活を求める人類の欲が生み出した文化であり、飢餓の恐怖から逃れるために発展してきたともいえます。つまり飢餓は、農業と裏表の関係であり、食育を考えるうえで避けられないテーマなのです。すべての人類が優れた知恵と深い知性で解決していかねばならないという感覚を持ってもらいたいのです。


WFPの「Hunger Map」を使って、世界の食糧事情について考えることをご提案した今回。WFPのデータによると、飢餓で亡くなる子どものうち、45%が5歳以下で、その数は1年で310万人。世界を見てみると、わが子と同じくらいの年齢の子どもたちが、そんな飢餓状態の環境で生まれ育っています。日々の食材に目を向けるだけでなく、ときには視野を広げ、「なにができるのか」を親である私たちが考えてみる必要があるのかもしれません。
◇永久不滅ポイントで、グリーン・ツーリズムが割引に◇
農山漁村地域において自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動であるグリーン・ツーリズム。Nツアー農協観光グループがご提供する、「グリーン・ツーリズム」ツアーの代金にご利用いただける割引クーポンです。

【詳しくはこちら】
https://www.saisoncard.co.jp/point/item/3345
(交換期限:2017年9月30日(土)まで)

関連する記事

この記事のキーワード

RANKING
YESTERDAY

WHAT'S CHIENOWA?

staff_pickup