男性不妊は珍しいことじゃない。専門医とSeem開発者が語る生殖医療のいま

男性不妊は珍しいことじゃない。専門医とSeem開発者が語る生殖医療のいま

2019年2月1日公開

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「男性不妊」の患者は、想像以上に傷ついている
——男性が検査に行きたがらないのは「結果を聞くのが怖い」という理由もあるのではないかと思います。
岡田:それはあると思います。実際に「男性不妊」という事実を目の前に突きつけられると、患者さんは「生殖能力がない」と判定されたかのように思い、心理的に追い詰められて、想像をはるかに超える苦悩を抱きます。

以前、うちの病院へ不妊治療を受けにくる患者さんにうつ状態を評価するチェックリストを記入してもらったことがあるのですが、95%もの人にうつ症状が見られ、症状が深刻な人も少なくありませんでした。
——表面上は元気そうでも、心のなかは打ちのめされている。そんな人も多いのかもしれません。
岡田:あまり慰めにはならないかもしれませんが、一つ知っておいてほしいのは、男性不妊と診断されても、決してあなたが特殊なわけではないということ。

現代の日本ではありふれたことで、生殖能力が低い男性は、少なく見積もっても50万人は存在します。10代後半から30代のなかで比べれば、糖尿病の患者よりはるかに多いわけです。また、男性不妊と診断された場合でも、ほんの少しの医療のサポートで子どもを授かる人も多くいます。だから、絶望しないでください。

——そうした男性の心理を、パートナーの女性も認識しておく必要がありそうですね。もちろんお互いに心しておくべきことですが、ただでさえ傷ついているのに、妊活を強く促すことでさらに追い詰めてしまう場合もあるかもしれません。
岡田:女性の方にお願いしたいのは、もし産婦人科で異常が見つからなかったとしても「私は正常。だから夫が悪い」などと考えないでもらいたいということです。妊娠のメカニズムはまだ明らかになっていないことも多く、不妊の本当の原因は、厳密に特定できるものではないのです。

「異常が見つからない」というのは、あくまで「現在の検査技術では異常が見つからない」のであって、決して「正常」とは言いきれない。ですからぜひ、「不妊治療はお互いに少しずつ課題があって、二人で克服していくもの」という態度でいてほしいと思います。
「子どもを授かる」ことがすべてではない。不妊治療は健康な人生にもつながる
——今後、男性不妊への認知が広がり、検査や治療を受ける人が増えたとき、どんな課題が新たに生まれると考えられるでしょうか?
岡田:いい加減な医者やクリニックが増えていく可能性は考えられます。きちんとしたトレーニングを受けていない医師が男性不妊の専門医として診療にあたり、説明不足で患者さんの不安をあおったり、間違った検査方法でいわれのない男性不妊患者を増やしたりしてしまうことがあれば、大きな問題です。

入澤:男性不妊の治療をうたう怪しげな商品やサービスも出てくるかもしれません。もちろん真面目に取り組もうとする方もいるでしょうが、エビデンスもなく、効果があるかどうかもわからない治療に時間を費やすくらいなら、然るべき専門医を訪ねたほうがいい。
——いい加減な医師にあたらないためには、どうすればいいのでしょうか?
岡田:たしかなのは、十分な教育を受けている医師のもとでの診断を受けることです。大学の附属病院に所属している医師がその中心といえるでしょう。これからは、不妊治療は総合力が必要になります。代謝疾患、内分泌疾患、循環器疾患などが不妊原因となっている場合もあるので、これらを診療できる環境であることが望ましい。さらに、新しい検査法や治療法にいち早く対応するためには、研究設備を備えていることも重要です。

それから、自分を診察する医師がこれまで何を専門にしてきたか、所属や経歴をきちんと見ることですね。じつは、医師の世界にも資格マニアみたいな人がいるんです。さまざまな診療技能の認定を受けているけど、実際には診療経験に乏しく、実態を伴わない専門医ですね。そういう医師を避けるため、不妊治療の専門医として長くやってきた人を選ぶとよいと思います。
——では最後に、これから不妊治療を受けてみようと考えている人に、メッセージをお願いします。
入澤:やはり、「妊活ははじめから2人で取り組むもの」という意識を持っていただきたいですね。なかなかうまくいかないこともあると思いますが、パートナーが一緒に落ち込んだり喜び合ったりしてくれるだけで気持ちが楽になったという方もいました。

男性は、「自分は妊活で協力できることが少ない」と思っている方も多いですが、パートナーとともに当事者になって、できるところから向き合ってみることが大切だと思います。そして、妊活のはじめには、男性にはぜひSeemなどのセルフチェックキットで精子の状態を確認してみてほしいですね。

岡田:残念ながら、不妊治療をしても子どもができないケースはあります。でも、子どもを授かることだけがすべてではない。若いうちに不妊治療を受け、精子の質をよくするために生活を改善することは、健康でよりよい人生にきっとつながります。

不妊治療というと、どうしてもネガティブな印象を持たれがちなのですが、ぜひ前向きな気持ちで病院を訪れてほしいと思います。

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