共働き家庭のマネジメント術⑤会話は業務連絡だけ?すれ違い夫婦が円満になるヒント

共働き家庭のマネジメント術⑤会話は業務連絡だけ?すれ違い夫婦が円満になるヒント

2017年8月3日公開

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いま日本では、女性の社会進出や雇用不安などによって、共働きで子育てをする夫婦が増加中。しかし、仕事に育児、家事と、多忙な生活を送る夫婦には課題も多く、「喧嘩が絶えない」「コミュニケーション不足」だと嘆く声が、男女ともに聞こえてきます。家庭を一つの「チーム」と考えたとき、夫婦でどうマネジメントしていくのがいいのでしょうか。そこで、NPO法人ファザーリング・ジャパン(「父親であることを楽しもう」をコンセプトに全国で父親支援をしている団体)理事の林田香織さんに「共働き家庭のマネジメント術(全5回)」について連載していただきます。

「最近、夫(妻)と喧嘩ばかりしているな」という人は必読。最終回はパートナーとの絆を深めるテクニックをご紹介します。時間がないゆえに、心のすれ違いが起きがちな共働き家庭が幸せになるためのヒントとは?

撮影:川上秋レミイ 撮影協力:くまさん家https://www.kumasanchi-shimokita.com/
気がついたら、夫婦の会話が「業務連絡」だけになっていませんか?
恋人時代や新婚当時、夫婦の会話の大半を占めていた雑談や他愛もないおしゃべりは、子どもが産まれ、共働きになった途端、ほとんどなくなり、気づくと夫婦の会話といえば「伝達事項」ばかり。たまに夫婦で会話をしようと思っても、どちらか一方が疲れて寝落ちしてしまう……。

共働き夫婦なら、身に覚えのある話ではないでしょうか? 忙しいと、つい夫婦の会話はスケジュール調整、一日の報告、家事育児の依頼などの「業務連絡」ばかりになりがちです。そのまま放置していると、相手を思いやる気持ちや、助け合いの心といった情緒的サポートは低下するばかり。

3人の子どもがいる私たち夫婦も例外ではなく、まさに「業務連絡」ばかりの日常を送っていました。次第にアイコンタクトやスキンシップもなくなり、夫婦関係がどんどん冷めていってしまい、冷戦状態が続いた時期もありました。いま思い出しても当時の辛い気持ちが蘇ります。

林田香織さん
「1時間以上の会話」「一緒に趣味を楽しむ」がパートナーの満足度を上げる
リクルートマーケティングパートナーズのブライダル総研が行った「夫婦関係調査2015」によると、夫婦関係満足度の高い夫は、不満足の夫に比べ「1時間以上の夫婦での会話」の回数が多く、一方、満足度の高い妻は、不満足の妻に比べ「夫婦で仕事のあとや休日に一緒に趣味を楽しむ」回数が多いそうです。やはり夫婦円満の秘訣は、日常の「コミュニケーション」が大事ということ。

とはいえ、前述の通り、子育て期の夫婦は意識しないと二人だけの会話時間を確保できないため、ちょっとした工夫が必要です。以前、セミナーに参加くださったご夫婦は毎朝、子どもの送り迎えを会話のチャンスにしているそう。二人で保育園にお子さんを送り、園から駅までの移動であれこれ雑談をしている時間がとても楽しいとお話ししてくださいました。また、月に数回、会社帰りに駅で待ち合わせをして保育園にお迎えに行くご夫婦もいました。待ち合わせすることで、なんとなく新鮮な気持ちになるそうです。

関西でセミナーを行ったときには「夫婦でお笑い番組を観て一緒に笑うことで雑談がしやすい雰囲気になる」とおっしゃっていた旦那さんがいました。「一緒に笑うこと」が夫婦の会話のきっかけになるそうです。

わが家では、普段食べないようなちょっと高級なアイスクリームが会話のキーアイテム。「最近ちゃんと話せてないなあ」と思ったときに、そっと冷凍庫にアイスを入れておくことがお互いへのメッセージでした。夜中に子どもに隠れて美味しいアイスを食べることでなんとなく心がほぐれ、感情的にならずに話すことができました。最近は子どもたちも大きくなり聞かれたくない会話も増えたので、仕事帰りに待ち合わせをして駅のカフェで少し話して帰ったりもしています。

面倒かもしれませんが、そのちょっとした努力が夫婦の潤滑油になります。普段のコミュニケーションがスムーズになることで、お互いに相談やお願いがしやすくなったり、ちょっと無理なことを頼まれても受け入れやすい雰囲気ができたりします。「会話は投資」だと思って試してみてください。
突然の不満爆発は、相手が反射的に「拒否」する態度になってしまうのでNG
会話をスムーズにするためには、ちょっとしたコツがいります。妻たちからよく、「夫が話を聞いてくれない」「『言ったよね?』『聞いてない』の繰り返し」という愚痴が出ます。

その場合、夫が携帯をチェックしていたり、テレビを見ていたり、何かをしているときに妻が突然話しかけていることがほとんどです。自分が話したいタイミングが相手にとって話を聞けるタイミングかどうかはわかりません。相談ごとなど、きちんと聞いてほしいときは、「ちょっと聞いてほしいことがあるんだけど、いまいい?」など、大切な話だということを明確に伝えることで、耳を傾けてもらえます。

夫たちによると、「結論や着地点がなくいつ終わるかわからない話を聞く」というのは、想像以上に辛いことのようです。会話をできるだけ早く終わらせたいがために、すぐに「結局こういうことでしょ?」と結論や正論を言いたくなります。

これは、男女間で「相手に求めるサポート」が違うことが根本にあります。女性は一般的に情緒的サポート、つまり、共感や理解を求めます。一方、男性は具体的な解決策の提示を求める傾向にあります。たとえば、妻が「頭が痛い」と言うので、「薬を飲んで早く寝たら?」と言ったら妻が怒ったという話があります。

この場合、妻が夫から聞きたかったのは「子育てや仕事で疲れているよね。いつもありがとう。あとはやっておくから休んでいいよ」という言葉。とくに女性は前半の共感部分が大切なのです。ただ、夫からすると解決策の提示が良いだろうという考えなので、なぜ、妻が怒ったのかがわかりません。

このようなコミュニケーションのズレを防ぐために、ただ聞いてほしいときは「聞いてくれるだけでいいから、話していい?」、夫の意見がほしい場合は「どう思うか教えてくれる?」とどのように聞いてほしいかを一言添えてみるといいかもしれません。それだけですれ違いが半減するはずです。

普段からお互いの考えや気持ちをシェアする時間を持ち、「溜めないこと」も大切です。私も以前は塵のような不満が心のなかに少しずつ溜まっていき、ある日突然、爆発するということがよくありました。夫から「何で突然なんだよ! 予兆とかないの!?」と言われました。 突然の相談や要求は、驚きと不安から反射的に「拒否」や「反発」となって返ってきます。モヤモヤがある場合は、爆発する前に少しずつ共有しましょう。
多忙な業務に家計を支える責任感。夫も精神的サポートを求めている
そして忘れてはいけないのが、夫の気持ち。日々の忙しい業務や、家計を支える責任感など、夫もさまざまなストレスを抱えていて、妻と同じく精神的なサポートを求めていることがあります。お互いが求めているのに、ただ、「やってくれない」「わかってくれない」では、パートナーに対する漠然とした不安感や不公平感が募るばかりです。

妻側から「喧嘩すると夫が何も言わなくなる」という声をよく聞きます。夫が無口になるのは妻からの非難によって自分自身が傷つくことを避けるため。つまり、自分を守るための防御反応です。「どうして〇〇してくれないの!?」と一方的に責めるのではなく、「〇〇してもらえず悲しかった」と自分がどう感じたかを伝えましょう。
「私のほうが」「俺のほうが」と苦労の自慢大会ではなく、思いやりを持って
手に負えない子どもとのバトル、保育園から帰って子どもを寝かせるまでの戦争のような時間、疲れた体と心を無理やり動かして片づける食器や洗濯物。何のために働いているんだろうと葛藤しながら、また朝が来て、時間と仕事に追われる日々……。

そんな毎日では、お互いを思いやる余裕もなくなり、「私のほうが大変」「俺だって大変なんだ!」と苦労の自慢大会を繰り返してしまう。そんなふうにして、お互いにわかり合えないと感じてしまう時間は辛くて、苦しいですよね。一番近い存在であるパートナーだからこそ、思いやりが必要。でも、優しくすることは言うほど簡単ではありません。

苦労の自慢大会終結に必要なのは「余裕」です。その余裕を生み出すために、今回の連載では「チームでの子育て」を提案してきました。夫婦がいっぱいいっぱいなときは、ほかのリソースに頼り、時間的、精神的な余裕を確保しましょう。そのうえでパートナーにアプローチすると、お互いに優しい気持ちで接する余裕が生まれます。
生き方や子育てが多様化する時代にこそ、自分なりの両立を見つけることが必要
最後に。子育て世代の私たちは、自分たちの親とは環境も考え方も違うなかで子育てをしています。これまでのやり方を否定するわけではありませんが、私たちは私たちの時代にあった子育てのかたちをつくっていいと思います。

その一方で、個人の生き方も子育て環境も多様な社会だからこそ、自分の価値基準を決めるのがとても難しいとも言えます。情報やサービスが溢れるなかで、子どもたちが、そして自分たち夫婦が笑顔でいられるために大切なことは何か。それをよく考え、その軸をぶらさずに、子育てと仕事の両立を主体的に整えていくことが、現代の共働き夫婦のマネジメント術のカギになると思います。
プロフィール

林田香織(はやしだ かおり)
NPO法人ファザーリング・ジャパン理事。NPO法人コヂカラ・ニッポン理事。ロジカル・ペアレンティングLLP代表。お茶の水女子大学大学院修士(家族社会学)。日米の教育機関において、長年にわたり日本語教育(高校・大学・ビジネスマン向け)に従事。8年の在米期間を経て、2008年帰国。自治体、企業において、両立支援セミナー、配偶者同伴セミナー、夫婦向けコミュニケーションセミナー、管理職向けイクボスセミナーなどの講師を多数務める。プライベートでは九州男児の妻、3人の男の子のママ。
http://fathering.jp/

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