「学校と闘う親たち」へ。スクールカウンセラーが伝える問題解決のヒケツ

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学校とのトラブル、たくさんの家庭からの相談から見えてきた法則は?

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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10736004419

こんにちは、國學院大學教授の池田行伸です。

私はこれまで、高等学校のスクールカウンセラーとして、定期的に学校の教育相談室に勤務し、カウンセリングにあたってきました。また、小児科外来の心理担当としても、医師が診る範囲外であると判断があった場合、患者さん・親御さんの相談にあたるという職務も経験してきました。

心理担当に回ってくるのは、不登校など学校と家庭と子どもとの関係が入り組んでいるケースなどで、場合によっては学校に直接出向いて糸口を探ることもあります。担当中、受診していた子どもが学校に行けるようになり、それと同時に健康を取り戻すという嬉しい出来事もありました。

解決したケースを振り返ると、筋道をたてて根拠に基づいてタイミングを図りながら間を取り持ち、コミュニケーションが成立した場合がほとんどです。これまで経験したエピソードをお伝えするとともに、問題に直面した場合、どんな解決策が考えられるのか一緒に探っていきましょう。

「私たちは学校にいじめられてきた」 − 高校でのカウンセリングで出会った事件

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週に1日の出校日、教育相談室に着くなり、教育相談担当教員から「今日、生徒と親を呼んでいます。もうすぐ来られると思いますので対応お願いします。」と告げられました。

教育相談担当教員から手短にその生徒の状況を聞き出しますと、その生徒に忘れ物が多く生徒指導の教員から苦情が来ているというのです。その生徒は入学したての1年生の女子で、制服に付けなければならない蝶ネクタイを頻繁に忘れ、生徒指導部に借りに来ていたとのこと。きつく叱って指導し、家を出るときにも確認するよう何度も注意したが改善しない、と怒り気味に訴えてきました。このような話が聞き終わるか終らないかののち、生徒とその両親がやってきました。

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善良そうな会社員風の父親と少しうつむき加減の母親、そしてその女子生徒です。椅子に座らせ、こちらが名乗ってあいさつした次の瞬間、やさしそうな父親が口を開きました。

「この子が小学校に入ってからずっと私たち親子は学校にいじめられてきました。私たちがいったい何をしたというのでしょうか」。

決して悪意を持って攻撃するような言い方ではなく、むしろやさしく問いかけるような語り口でした。娘さんは高校に入り電車通学時にたびたび乗り間違えをし、遅刻したり帰りが遅くなったりすることがあったようです。「お聞きしたことを学校教育での指導に活かさせていただきます」と伝え、まずはその日の相談が終わりました

教育相談担当教員に、この生徒には注意障害があるかもしれないこと、それゆえ忘れ物をきつく叱ると心が傷つき逆効果になることなどの一般的なことがらを話し、注意障害の対応に従って指導するほうが良いと告げました。

その後、生徒はきつく叱られることなく普通に過ごしていると報告を受けました。その生徒に注意障害の可能性があるかもしれないことが生徒指導教員に伝えられ、蝶ネクタイの忘れ物があってもきつく叱らずただ貸し出せばよいことが伝えられたのです。このことが学校で共有され、職務上厳しく生徒指導をしなければならないと思っていた教員の意識が変わったのでした。

ただあの時の父親の「私たち親子はずっと学校にいじめられてきた」という言葉が今も脳裏に焼き付いています。学校にその子の特性を理解してもらえず、子どもの奇妙な行動を指摘され続け、親のしつけの甘さなどを暗に批判され、長年親子で悩み苦しんできたであろうことを思うと、申し訳ない気持ちになりました。

母親と学校の間に募る不信感 − 小児科外来の心理相談にて

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附属病院の小児科外来で心理相談をしているときにも、子どもの盾となって学校と対峙する親に出会いました。

母親に連れられて、男子中学生が私の部屋に訪れました。母親は、現在子どもが中学校に行けなくなり家にいること、そうなった原因は中学教師が自分の子だけ理不尽に叱ったからであり、その後の学校の対応に誠意がないと訴えました。

小児科を不登校で受診したのですが、医師として行うような治療はないので、心理で話を聞いて欲しいと、私のところへ相談が回ってきたのでした。

このような場合、安易に「それは学校にも問題がありますね。」と言うと、親は「やっぱりそうだ、学校が悪い」と、学校批判を強めて火に油を注ぐ結果になりかねません。

小児科医局の研修会では「それは学校が悪い」の一言は問題をさらに複雑にするので、苦しまぎれにそのような言葉を吐かないようにとスタッフに注意してきました。

母親から話を聞いた後、私が学校に行って直接話を聞いてきても良いかと親子に尋ねました。二人ともけげんな顔をしていましたが、「お母さんが学校に伝えたいと思っていることを伝えてきます。担任に会ってどうしたら学校に行きやすくなるか話してきます。」と言うと「お願いします」と言って承知してくれました。

この問題は、小児科外来で定期的に話しても解決するようなものではないと思ったので、そのような提案をしたのです。

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親と学校が険悪な状態に陥っているこのような場合、子どもにとって学校に行くことは一人で敵地に乗り込むことにほかなりません。登校したくなってもできないでしょう。この時私は地方の大学の教育学部の教員でしたので学校に行くことにさほど抵抗がありませんでした。先方の中学校に電話すると話し合いの場を設定してくれ、教頭、担任、学年主任など数人の先生方と話しをすることができました。

学校側のその母親に対する認識はやはり「モンスターペアレント」でした。母親が学校に抗議に来るので母親からの電話には、教職員がいつもピリピリしているとのことでした。

小児科での見立てを説明し、母親も一生懸命なのだが言葉が足りないのかもしれないとも話し、なんとか母親と学校の溝を埋めようとしました。学校も何とかしなくてはいけないと考えていたところだと言いました。

その子の特性として級友と共同歩調をとりにくい面があるかもしれないと言い、このことは母親にも伝えてあるが、そこだけに着目した指導はしないほうがいいのではないかと意見も述べました。教員は、「分かってはいるが、ついつい目が行き、叱りつけていた。今後はあらためて指導方法を練り直したい」と言ってくれました。

また、「母親の子どもを思う気持ちは分かったので何とかして生徒と接触できるようにしたい」とも言ってくれました。

その後母親から、自分が働きに出ているときに、担任が何度か家庭訪問してくれた、誘われて子どもが数回登校したと、小児科外来受診時に報告を受けました。

私との面談の時、母親は思いのたけをぶつけてきましたが、回を重ねるごとに学校に対する攻撃が鳴りを潜めました。同時に子どもの表情にも明るさが出てきました。このような経過を経て生徒は登校するようになりました。ずいぶん後になって子どもが専門学校に進学でき元気に通っていると母親から連絡をいただきました。

非難、批判合戦から科学的教育へ

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親が子どものことで一生懸命になり過ぎるあまり担任とぶつかり、間に入った学年主任や教頭とも険悪になり、家庭対学校の対立の図式が出来上がることがしばしばあります。上記の例以外にもたくさん経験しました。特に発達障害などの疑いのある子どもの場合、容易には対立が解消されない傾向にあるように思います。

学校でいじめられた、教師にひどいことを言われたなどと子どもから聞いた親は、学校はなんてひどいところだと怒りの感情が先に出てしまうでしょう。一方教師は、一人だけ別なことをする子に手を焼いていて授業ができない、他の生徒の被教育権が奪われる、などとといきり立つことでしょう。そんな両者が穏やかに話し合うことは理想ではあっても困難なことだと思います。

平静さを保っているように見えても、心の底ではお互い分かり合えない複雑な感情を抱いている。そんな状態では、学校は家庭がもっとしっかりやるべきだと考えるし、家庭は学校が悪いから自分の子がおかしくなったと考えるわけで、お互いの不信感がつのるばかりです。

さらに母親は、「子どもがおかしくなったのはお前の育て方が悪かったからだ」と夫や義理の両親からなじられている場合もあります。

子どもの回りにはこのような批判や非難が渦巻いているのです。

このような状況をどのように解決すれば良いのでしょうか。今のところの解決法は、親が発達支援センターや小児科等の専門医を訪れて子どもの状態を客観的に観察してもらい、それらの情報をスクールカウンセラー等を経由して学校に伝えてもらい、その子の特性に応じた指導をするようお願いすることだと思います。

学校は、必要に応じて専門家の派遣を教育委員会等の管轄組織にお願いし、そこからアドバイスを受けることもできます。ただし現在のところ第三者的存在が十分機能しているとは言えません。

上記のような枠組みの中で何度も挑戦しながら経験を積み、新たな教育体制を作り出さない限り家庭と学校の非難合戦は無くならないと思います。自分の子どもが学校で正しく教育を受けていないと感じる親は、学校に対する不満や怒りをぶつけるだけでなく、客観的データ、科学的根拠に基づいた教育を行うよう学校に申し出るべきだと思います。

その時には、ぜひスクールカウンセラーを有効活用してください。

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