ブロックチェーンがお金を変える!? 最先端技術が暮らしにもたらすインパクト

ブロックチェーンがお金を変える!? 最先端技術が暮らしにもたらすインパクト

ドン・タプスコット、アレックス・タプスコット『ブロックチェーン・レボリューション』

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文:若林 尚卓(CHIENOWA)
ブロックチェーンの本質を知るために必読の一冊
あなたはブロックチェーンについて説明することができるだろうか? 私はカード会社に勤めていることもあり、仮想通貨ビットコインに注目をしていた。興味を持って調べていくなかで、どうやらビットコインはブロックチェーンという技術が使われているということを知った。そして、その技術はAIやロボットなどと並び社会を変える技術であるということも。では、社会を変える技術とは一体どんなものなのだろう? そう思っていた矢先、会社の先輩が本書を貸してくれ、貪るように読んだのだった。

『ブロックチェーン・レボリューション』は、最新ITテクノロジーとして話題になっている「ブロックチェーン」の根本的な仕組みと、その設計思想、このテクノロジーが持つ可能性や危険性についてあらゆる観点で書かれた、未来の予言書のような本だ。はっきり言って、わかりやすい入門書のような本でも、実用的な解説書でもない。しかし、一部の先進的な企業や国家による取り組みも含めて丁寧に説明されているため、ブロックチェーンの本質を理解したいという方にはオススメの一冊である。
世界を変えるテクノロジー「ブロックチェーン」。その特徴とメリット
そもそも、ブロックチェーンとは何か? 聞き慣れない読者のために、簡単にその特徴を説明したい。

「ブロックチェーン」は、最近注目を集めているインターネット上のテクノロジーで、分散型データベースシステムの一種とされるものだ。本書によるとブロックチェーンの特徴は大きく2つ。データが「分散」されていること、「パブリック」なことである。

中心となるデータベースが存在しない分散されたシステムのため、乗っ取りやサーバーダウンによるリスクが低く、パブリックにデータが共有され、相互監視することができるため、情報の正しさを誰でも検証することができる。これら2つの特徴から、記録されたデータを改ざんすることが非常に困難で、セキュリティー性、信用度の高いデータベースを作り上げることが可能なのだ。

この本を読んで衝撃的だったのは、ブロックチェーンは金融業界だけでなく、政治や企業など社会そのものを革新するものだと書かれていたことだ。インターネットが登場し、私たちの暮らしまで変えてしまったように、ブロックチェーンも世界を変える力をもっている。
ブロックチェーンを活用する「SF国家」エストニア
本書はブロックチェーンがもたらすであろう未来についても述べており、それはSF小説さながらワクワクする世界だ。いままでインターネットに不足していた「信用」の要素を持つブロックチェーン。インターネット上の記事がコピーでないことは誰も証明してくれなかったが、ブロックチェーンの技術を使えば、それはみんなで証明できる。複数人で同じデータを保有し、監視・証明することで、「信用」を生成することができるのだ。

本書を読んで特に印象に残ったひとつが、バルト3国のエストニアという国での導入事例だ。ブロックチェーンは人々の生活にインパクトを与えるということが、感じられる事例となっている。まるでSF小説を読んでいるような世界がそこには広がっていた。

バルト三国のひとつ、エストニアはすでにブロックチェーンの技術で「e エストニア」と総称される電子国家モデルを築きあげた。その核となるのがデジタルIDだ。2012年時点で、デジタルIDカードの普及率は90%。国民はデジタルIDを利用して行政サービスを受けていると本書には示されており、実際、国民の95%以上がオンラインで税金を納めている。不動産登記も電子化され、土地の譲渡にかかる時間が3か月から1週間に短縮されたという。信用が担保されていれば、個人間で権利のやり取りが可能になり、様々な分野で効率化がなされるということだ。

行政の手続きにおいて、「面倒だなぁ」「非効率だなぁ」と感じることがある人は少なくないはず。日本ではマイナンバー制度もいまいち浸透しておらず、また税金の管理についても無関心である。ブロックチェーンはそういったお役所仕事でさえも、正確かつスピーディに変えてしまうことができるのだと感じた。

土地の財産権だけでなく、音楽や芸術などがブロックチェーンの技術によって売買されたり、流通する日も近いのではないか。同様に企業内外でのデータ管理や契約においても、ブロックチェーンを活用できるのではないか。そんな未来が目前までやってきている。
ビットコインが世界通貨になる日
そしてもうひとつ、印象的だった事例がビットコインだ。もともとブロックチェーンは、ビットコインというインターネット上の仮想通貨を生み出す際に用いられていたデータベースシステムの技術であった。その技術の可能性が昨今では注目されているが、日本ではビットコイン自体が脚光を浴びていたので、その存在を知る人も多いかもしれない。

ビットコインは主に国際送金で役に立つ。国際送金を銀行などの仲介業者を通して行うと多くの手数料がかかるが、ビットコインを使い、インターネット上で送金をすればほとんど手数料はかからないからだ。

その恩恵を如実に受けるのは、東南アジアなど物価の安い国から先進国に出て、出稼ぎをしている労働者だろう。もちろん、グローバルに活躍するビジネスマンもだ。日本でも『東京オリンピック』に向けインバウンド市場が膨らむなかで、ビットコイン決済や送金といった手段が一般的に普及するのではないか、と私は感じている。

最近では大手家電量販店がビットコイン決済を導入したというニュースもあり、利用者が増加していると耳にした。銀座浅草などの外国人観光客で賑わう場所でビットコインの黄色いロゴを何度も目にする日も近いだろう。ゆくゆくは世界共通通貨としてビットコインが名を挙げるかもしれない。

本書の内容とは少し離れるが、私が初めて「ブロックチェーン」に触れたのは、ビットコインを為替取引のように運用し始めたときだった。2016年秋ごろ、当時は「怪しい」イメージを持っていたが、ものは試しと「永久不滅ポイント(クレディセゾンのクレジットカードで貯まるポイント)を換金して運用するなら、失敗しても損はしないぞ!」と思い、使ってみた。

当時は、預けたお金が全部なくなってしまってもいいかなという軽い気持ちでいた。実際に運用してみると利益の変動幅の大きさに驚く、というよりも焦るほどだった。3日程度で10,000円以上の値動きがあったときもあり、夜中もビットコインチャートから目が離せず寝不足で仕事をしていたのはヒミツの話だ。
クレジットカードがなくなる社会は「あるべき未来」か?
以上がブロックチェーンに関してわたしが個人的に気になった事例である。金融業界で仕事をしているものとして、業界そのものや「貨幣」の未来を案じずにはいられなかったというのが、本書を読んだ感想のひとつである。

ビットコインが普及すれば、物体としての「貨幣」や、クレジットカードも存在意義を失っていくことになる。クレジットカード、キャッシュカード、定期券、ポイントカード……増えるカードで財布がかさばり、いざ使おうとしてもどこにあるかわからないという方も少なくないだろう。現にiPhoneをかざして決済をするApple Pay(弊社のカードも登録してね)の登場によって、カードレス決済の市場は賑わいを見せている。

クレジットカード会社に勤めているものの、私はいずれカードという媒体は無くなるだろうと予測している。かたちを変えて存在しているのだろうか? それとも介在する物体としてのカードはなくなり、決済サービスだけの世界になっているのだろうか? その危機感と期待感を胸に、一企業人として未来に立ち向かわなければならない。

そのときが来るまでに、ブロックチェーンの仕組みを理解しておくことは大変有益なことだろう。インターネットやスマートフォンの普及のように、ブロックチェーンが社会で当たり前のテクノロジーになる日がいつやってくるのか。この本の著者であるタプスコット氏は、「インターネット」の負の側面に着目し、テクノロジーがもたらすべき「幸福な未来」は未だ実現していないと捉えている。そして、ブロックチェーンの可能性に目を向けたうえで、彼はこう語る。

「今度こそ、あるべき未来を現実にしよう」、と。

その未来は非常に楽しみである。

『ブロックチェーン・レボリューション』

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ドン・タプスコット、アレックス・タプスコット(著)、高橋璃子(訳)
出版社:ダイヤモンド社刊
プロフィール

若林 尚卓(わかばやし なおたか)
株式会社クレディセゾン 北関東支社。独身。趣味は筋トレだが線は非常に細い。

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